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(24.1.13) 2012年 岐路に立つ世界経済 ヘッジファンドと国家の戦い

 


  10日のNHKクローズアップ現代はいつもの30分番組を1時間半に時間枠を拡大して「2012年 岐路に立つ世界経済」の特集を組んでいた。
私は国谷裕子さんのファンでこの番組が特にすきなのだが、女性キャスターの中では飛び切り美人で聡明な方だ。

 今回は東京大学大学院教授伊藤隆俊氏、金融コンサルタント会社代表の倉都康行氏、ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり氏コメンテータだった。
しかし誰がコメントを述べようとも世界情勢の厳しさは変わりがなく、さりとて有効な解決手段の提案は誰にもできないと言うのが実態のようだ。

 今最も問題になっているのはヨーロッパ経済で、そのなかでも24年上期に集中している国債の新規借り換え(償還時期が来ても償還できないので借り換えを行うが可能かどうかが最大の懸念材料になっている。
ここで借り換えができないか、できても利回りが急騰する場合は国家の破産につながる。

注)24年上期に発生する新規借り換え国債の規模は以下のとおり

・2月  イタリア  400億ユーロ(4兆円)
・3月  イタリア  300億ユーロ(3兆円)
     ギリシャ  150億ユーロ(1.5兆円)
・4月  イタリア  300億ユーロ(3兆円)
     スペイン  100億ユーロ(1兆円)
・6月  ポルトガル100億ユーロ(1兆円)


 中でもイタリア国債の新規借り換え総額は1000億ユーロ10兆円)にのぼり、「果たしてイタリアはこの調達に成功するだろうか」と言うのが市場の最大の関心事になっている。
もし市場での調達に失敗すれば、欧州金融安定化基金の出動になるが、現在の余裕枠は2500億ユーロ25兆円)で、上半期のイタリア危機に対応しているとすぐに資金が不足する。
ギリシャやイタリアやスペインに対する対応ができなくなり,下期には安定化基金の残高はゼロに近づくだろう。

 このためドイツとフランスは安定化基金の規模を現行の44兆円から100兆円に拡大することに同意したが、この増額分56兆円を支出してくれる国家がなくなってしまった。

注)当初は中国とブラジルが支援を公表していたが、ギリシャ国債の半額切捨て策を見て怖気づいてしまった。

 ドイツとフランスの間ではIMFから資金を引き出す案や、ECB(欧州中央銀行)にイタリア国債を買わせる案が出ているが、前者はアメリカが反対し(IMFは欧州のためだけにあるのではないという)、後者はドイツが反対している(ECBは物価安定が主目的で国家救済は対象外と言う)ので結論は出ていない。

 おかげでヨーロッパは火の車になっているが、なぜこれほどひどいソブリンリスク国家リスク)が発生しているかと言うと、アメリカと日本が金融緩和策をとり続け資金をほぼ無制限に放出しているからだ
もっともアメリカも日本もそうすることによって国内の企業に資金をいきわたらせ景気回復を図ろうとしているのだが、実際はこの資金はほとんど企業や個人にいきわたらず、もっぱらヘッジファンドの投機資金に流れている。
そしてヘッジファンドはアメリカと日本のこの資金を元手に国家を追い詰めている。

注)なお市場がどのようにして国家を追い詰めるかの方法は「ユーロ危機とヘッジファンドのCDS戦略」を参照。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/231125-nhkcds-1.html

 だからヨーロッパを危機に追いやっているのはFRB日銀だと言ってよく、金融緩和策をとればとるほどEUの危機は深まる構造だ。
仕方なしにEU(ユーロ)は緊縮財政策をとって、ヘッジファンドの攻撃を受けないようにガードを硬くした。
しかしそのことが欧州の景気を冷え込ませ国内的には企業倒産失業者の増大となって跳ね返えり、あれほど景気がよかったドイツでさえ昨年の第4四半期GDPがマイナス成長になってしまった。

 一方アメリカが金融緩和策をとり続ける理由は二つあり、一つは景気回復のため、もう一つはヘッジファンドによる世界経済の支配のためである。

 前者は誰でもわかる理屈で、不動産価格がピーク時の70%相当に低下してしまい消費者の購買力は3割相当落ち込んでいる(アメリカの消費者は不動産価格の上昇分を担保にして消費財を購入してきた)。
そのため消費支出の拡大は当面望めない。
したがって企業融資を増大して企業の生産活動を活発化させ、結果的に失業者の救済を図ろうと言うのがオバマ政権の戦略になっている。

注)金融緩和を続けるとドルが相対的に安くなるので輸出環境が好転するメリットも期待できる。ただ実際はドル以上に信用できる通貨は円やスイスフラン等少数なので、実際はドル安にならない。

 しかしアメリカにはもうひとつの顔があり、これをウォール街の顔共和党の牙城)というのだが、ここには問題のヘッジファンドが徘徊している。
ヘッジファンドはFRBのジャブジャブ資金を使って世界中の弱い国家を標的に攻撃を仕掛け莫大な富を築いている。
ウォール街もアメリカの一部だからヘッジファンドの富の増大はアメリカの富の増大になる(露骨な表現をすればヘッジファンドはアメリカのダミーだ)。

注)アメリカの若者が言う1%が99%の富を独占しているとはこのことを言っている。

 こうしてアメリカはヨーロッパを食い物にすることで生き残りを図っており、ギリシャをしゃぶりつくして次はイタリアを狙っている。
イタリアの次はスペインポルトガル、そして最後はフランスの順だ。
そしてヨーロッパが終われば次は日本と言うのは市場の一致した見方だ。

 何しろ日本ほど財政規律の弱い国はなく、たったひとつのとりえは国内に資金が有り余っているため国内金融機関が国債購入を継続的に実施できると言うことだけだ。
しかしこれも資金があればの話で、23年度の貿易収支が赤字になったことからも日本の海外からの収入は黄色ランプがともりだした。

注)貿易収支が赤字でも過去の投資収益があるので当面経常収支は赤字にならないと思っていたが、今急激に赤字に近づき始めた。
23年11月経常収支 1386億円(対前年同月比▲85.5%)
今までは毎月1兆円規模の経常収支の黒字が続いていた。


 経常収支が赤字になれば預金もなくなるのだから、最終的には日本もヨーロッパと同様に財政規律を強化して市場の餌食にならないように対応するしか方法はない。
このことはEUと日本では経済成長の時代が終わったことを意味する。

注)なおアメリカがいくら金融緩和をしても平気なのは、ドルが世界通貨だからである。世界通貨であれば世界はたとえ不満でもこの通貨を使用せざる得ないので、アメリカはいくらでも通貨を発行できる。
ただし限界を超えてドルが弱くなると世界通貨としての役割はその段階で終わる。


なお世界経済に関する記事は以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45961351/index.html

また欧州経済に関する記事は以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html

 

 

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