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(24.1.8) NHKワールド・ウェーブ・トゥナイト 世界はどう動く アラブの春のゆくえ

 


 ワールド・ウェーブ・トゥナイトの「世界はどう動く」の第3夜は「アラブの春のゆくえ」だった。
(今回のコメンテーターは放送大学教授の高橋氏だったが、浜 矩子氏のように自説を主張する人ではなくただ状況の説明だけをしていた

 日本人にとってアラブとは石油問題以外の何者でもないが、実際は抑えられてきたイスラム文明と支配的だったキリスト教文明の戦いの場である。
何か十字軍の昔に戻ったようだが、18世紀以降は明確にキリスト教文明が世界を支配していたし、私たちが普段口にする民主主義もキリスト教的民主主義だ。

注)イスラムとキリスト教徒の戦いの潮目は1571年のレパントの海戦でこのとき初めてスペイン率いるキリスト教徒側がオスマントルコのイスラム教徒に勝利した。

 
それが今、長い間押さえつけられてきたイスラム原理主義勢力が「アラブの春」によって台頭し、イスラム教の原理を憲法に制定させようと戦いを挑んでいる。
もっとも先鋭的に現れているのはエジプトで、昨年11月から今月にかけて行われた選挙で、イスラム原理主義勢力が大躍進することが確実になった。

 ひとつは穏健派イスラム政党自由公正党、もうひとつが急進派イスラム原理主義政党サラフィストでこの2政党をあわせると過半数の確保は確実だという。
選挙で勝ったのならその政策を推し進めればいいじゃないか」というのが議会民主主義の建前だが、実際は西欧諸国はイスラム原理主義を封じ込めるためにアラブの強権独裁政権を支援してきた。
エジプトのムバラク大統領も、チュニジアのベンアリ大統領もそうした強権主義者で、「イスラム原理主義より強権政治の方がましだ」という判断でアメリカと西欧から支援を受けてきた。

注)中南米の独裁国家をアメリカが支援した理由は共産ゲリラに対応するためで共産ゲリラよりましという判断。

 しかしいったん選挙が行われてそれが公正なものと判断されれば国際社会は文句を言えない。
何しろキリスト教文明社会ではギリシャの昔から選挙こそが民意を決める最高議決機関だからだ。

 エジプトはトルコ型の穏健イスラム国家になるか、イラン型の急進イスラム国家になるかの分岐点にいるが、今回の選挙結果は急進イスラム国家になる可能性が高いことを示している。
そうなるとイランに見るように女性の権利は制限されて頭にはスカーフをかぶることが強要されるし、酒を酒場で出すことは禁じられ、女性が素肌を見せることは禁止だから海水浴も大変だ。
またエジプト国内のキリスト教徒(コプト教徒という)に対するイスラム社会からの弾圧が始まるだろう。

 経済的にはエジプトのGDPの約10%は観光業で成り立っているが、イスラム圏以外の観光客の行動は制限されるので、観光業は死活問題になりかねない。
また金融業も建前は利子を取ることが禁じられているので金融業に対する風当たりも強くなりそうだ。
こうした動きはキリスト教社会から見ると歴史の後退だが、一方イスラム社会から見れば押さえつけられてきたイスラム文明の復活となる。

 この動きを従来はアメリカが力で抑えてきたが、アメリカは中東問題(アラブ問題)に首を突っ込むのはほとんど嫌気をさしている。
イランやアフガニスタンに軍事介入しても膨らむのは軍事費だけで、何のメリットもない。
オサマ・ビンラディン も殺害したし、もういい加減に中東から足を洗おう

 アメリカの軍事ドクトリンが変更され二正面作戦は不可能なので一つの脅威だけに対応することに戦線を縮小した。
二正面とは中東と中国だが、今後は中国のみ軍事的に封じ込めることに変更している。
アジアこそが今後の経済発展の中心なのにそこを中国に支配されればアメリカの未来はない

 現在の十字軍の覇者アメリカがイスラムとの戦いを止めたのだから、今後イスラム社会は原理主義勢力が台頭してよりイスラム化するのは間違いない。
21世紀は超大国の時代が終わり地域主義の時代に移る。
アラブやアフリカは勝手に殺し合いをやってくれ。アメリカはアジアとともに生きる」それがアメリカの本音だ。

注)アメリカがイラン・イラク等に介入したのはそこが石油の生産国だったからだが、今アメリカではシェールガス革命(天然ガス革命)が進展して天然ガスの輸入国から輸出国に変わってしまった。したがって石油問題は焦眉の急でなくなっている。
「シェールガス革命」については以下の記事を参照してください。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/23520-d5f1.html

 
私は21世紀は「新しい中世」だと思っているが、自分と直接の利害関係がないところは一切口出ししない世界とも言える。
結局アラブはアラブとして生きて行き、イラン型のイスラム社会がエジプトやチュニジアに出現するのだろう。

なお「アラブの春」に関する記事は以下に纏めてあります。http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/231124.html

 

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