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(24.1.7)  NHKワールド・ウェーブ・トゥナイト 欧州信用不安の行方  浜 矩子氏の見解

 


  NHKワールド・ウェーブ・トゥナイトで放送している「世界はどう動く」の二回目は、同志社大学大学院教授の浜 矩子氏がコメンテーターだった。
浜 矩子氏は私の大好きな経済学者だが、テレビに出ているときはいつも口をへの字に結び鬼瓦のような顔つきをして辛口のコメントをする。
しかし今回は正月だからだろうか、髪を整えすばらしく高価な洋服を着ていたのでいつもの鬼瓦のイメージはなかった。

 現在の世界経済を揺るがしている最大の課題はヨーロッパの信用不安だが、この問題は一向に解決する兆しが見えない。
通貨ユーロは今年に入って一気にユーロ安傾向を強めついに98円台にまで落ち込んできた。ピーク時には170円台まで行っていたのだから4割も減価している。
ユーロ圏が4割縮小すれば世界経済に及ぼす影響は大きい

 ドイツフランスはこの危機を乗り越えようとヨーロッパ金融安定化基金約44兆円規模から約100兆円規模まで拡大する案を決めたが、この資金の出し手が誰もいなくなってしまった。
ひところ中国ブラジルが資金提供を申し出ていたが、中国もブラジルも足元が怪しくなってきてとてもそれどころではない。
それにEU(ユーロ)の現状から見ても貸した金の回収はほぼ絶望的で、ギリシャの例でもわかるように半額切捨てが行われそうだからどぶに金を捨てるようなものだ。

 結局ユーロの問題はユーロで解決するほかに手はなく、今まではフランスとドイツが互いに協力してこの危機を乗り越えようとしていたものの、当のフランス経済が火を吹き始めた。
フランスの銀行はギリシャ・イタリア・スペインといった国の国債をたっぷり持っているので、国債価格の値下がりに悲鳴を上げている。
また実体経済も不況局面に入って自動車メーカーのプジョー・シトロエン1900人規模の首切りを発表していた。

 失業率は9.8%で高止まりしているが、フランス政府は市場の攻撃から身を守るためには緊縮財政政策を採らざる得ず、ますます失業率は悪化しそうだ。
フランスも救われる側に回ったため、ユーロを救えるのはドイツだけになってしまったが、その選択肢は3つしかない。

① ドイツが安定化基金増額(56兆円)のほとんどを引き受けて、ユーロ圏崩壊を救う。
② ユーロ圏を第一ユーロと第二ユーロに分けて、第二ユーロ圏に自由な金融政策を認める。
③ ユーロ圏を崩壊して昔の各国別通貨制度に戻す。


 浜 矩子氏の提言は、上記のを採用することであり、現状ではギリシャのような弱い経済でドイツが主導するECBヨーロッパ中央銀行)の厳しい通貨政策に付き合うことはほとんど不可能という認識だ。

注)ECBの役割は通貨ユーロの安定で、アメリカのFRBが持っている景気対策の視点はない。なお中央銀行の役割については歴史的論争があり、①通貨の安定のみ、② 通貨の安定と景気対策の二つの流れがあり、ECBは①、FRBは②、そして日銀はその中間といった位置づけにある。

 提言はギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルはこの第二ユーロになって、より柔軟な金融政策をとらせること。
具体的には金融を大幅に緩和し、場合によっては第二ECBに国債の購入まで行なわせてインフレ政策を採ることを認めたらよいという提言である。
メジャーリーグとマイナーリーグの違いよ!!」そう言っていた。

注)浜 矩子氏はそこまで明確に言っていないが、第二ユーロという発想はそういうことである

 今回の番組を見ていたらアイルランドの現状の取材報告があり、意外とアイルランドは緊縮財政が功をそうして、ひところGDPの30%までに膨れ上がっていた財政赤字が10%程度になってきたという。
日本の財政赤字の規模も10%前後だから日本並だ。

 しかも11年度は4年ぶりにGDPは上昇に転じたという。
この理由は国民が政府の財政緊縮策を支持して耐えていることと、一方で安い法人税(ドイツやフランスの半分)と地価低下およびユーロ圏で唯一の英語圏のメリットを生かして海外からの企業誘致に再び成功し始めたからだという(11年度は過去最高の海外投資の規模になった)。

浜さん、アイルランドの例は他のユーロ圏諸国の復活のモデルになるのでしょうか
そうはなりませんね。アイルランドの例は特殊な歴史的性格によるものです。アイルランドはヨーロッパでもきわめてまずしい国でしたから昔から困難にはなれています。
デモもせず国民は耐えるというメンタリティーを共有しているともいえます。
この危機を政府と国民が協力し合って乗り越えようとしている特殊な例ですので他の国の例にはなりません

 
 思わず笑ってしまったが、実際ギリシャやイタリアを見ると「俺たちは悪くない、悪いのは政府の役人や銀行家でこうしたやつらが責任を負うべきだ」と騒いでは投石している。
確かにそうした面はあったとしても、今までの豊かな生活はそのろくでもない役人と銀行家の賜物でもある。
ギリシャでは「借りた金は返すな」が合言葉になっているが、そうしたところに誰も融資はしたくなくなるだろう(だから誰も助けてくれない)。

 ユーロはどうなるだろうか。ドイツが腹をくくって東ドイツの救済合併のときのように他国の負債を引き受けるだろうか。
楽観的な展望は描きがたく一番ありそうなシナリオはぐずぐずと決定的な方策を採ることができず、そのときだけの対処方法を繰り返しながら実質的にユーロが崩壊していくということだろう(だからユーロ安はこの先も進)。

 浜 矩子氏はそこまで言わなかったが、結局EU(ユーロ)はその理念は優れていたとしても経済政策で失敗し昔の静かなヨーロッパに戻っていくというのが私の推定だ。

なおヨーロッパ経済については以下にまとめてあります。http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html

またアイルランドに関する記事は以下を参照してください。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat41860064/index.html

 

 

 

 

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コメント

わたしは③に落ち着くのではないかと予想しています。
ドイツは技術を持っています。最終的にはテクノロジーを持っている国が生き残ると思います。
ただし、ドイツは輸出立国です。恐慌前夜の様相を呈している世界経済のなかでは、ちと苦しいのではないかとも考えますが。

投稿: 縄文人 | 2012年1月 7日 (土) 08時32分

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