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(23.12.5) 欧州金融危機の深刻化とEUの衰退

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 欧州金融危機は時間が経つにつれて深刻さの度合いが増している。
この8日から9日にかけて開催される欧州首脳会議を前に、ドイツフランスの水面下の戦いが繰り広げられている。

 ドイツのメルケル首相は議会で「欧州共同債の導入には反対し、各国の財政状況をチェックする経済政府の創出が必要だ」と力説した。監視は強化するが金は出さないという意味だ。
今問題になっているのは3点で、以下のような内容だ。

① 欧州共同債の導入を行うか?
② ECBの機能を拡充して財政破綻国の国債を購入させるか?
③ 欧州共通の経済政府を樹立するか?


 ドイツは③に賛成して①には明確に反対し、②には消極的だ。
一方フランスは①、②、③のいづれにも賛成しており、番外としてIMFからの支援に期待している。

 このフランスとドイツの違いは国内の金融機関のおかれている状態と符合し、フランスは欧州金融危機の影響、分けてもギリシャやイタリアやスペインの国債の半額踏み倒しの影響を最も受けやすい。
フランスの金融機関はかつての日本の金融機関と同様で含み損や含み益がいたるところに隠れていて本当の姿が分からない。
今まではそれでも国際的な信用を維持できてきたが、ギリシャ国債の半額デフォルトで化けの皮がはがされてきた。

ギリシャだけでなくイタリヤやスペインの国債が半額デフォルトしたらフランスの金融機関は持たないな・・・・」市場がそう判断し始めてからフランス国債の利回りはじりじりと上昇し始めた。
まずい、このまま行くとフランスも道連れで倒産してしまう。その前に何とか危機を抑える手段が必要だ!!!」サルコジ大統領があせりまくった。

注)フランスの主要4金融機関のギリシャ国債の残高は約1兆円、イタリア国債の残高は約4兆円といわれている。

 フランスとドイツの泥仕合にようやく各国の中央銀行が動くことになった。
FRB、ECB、日銀、イングランド銀行、カナダ銀行、スイス国民銀行が互いに通貨のスワップ協定を結んで手元流動性を厚くしたからだ。
一般の人には中央銀行がスワップ協定を結ぶ意味があまり分からない。

注)スワップ協定とは通貨の交換だが、今回の意味はECB(欧州中央銀行)がFRBよりドルを借りてその担保にユーロを差し出すということ。

 実際現在起きている現象はヨーロッパの金融機関がインターバンク市場と言う銀行相互間の市場でドルの調達が非常に困難になっていることだ(この市場は別名短資市場と言われる)。
この市場はとても便利な市場で相互信頼がある間は無担・無保証でその日の資金繰り資金をやり取りしている。
100億ドル貸してくれない
はい、いいよ」なんて実に簡単に資金調達できる市場だ。

 しかし一旦悪い噂が立つと資金の出してがまったくいなくなってしまう。前日まで青海原だった知床の海が今日は流氷で一面覆われてしまう様子に似ている。
そうなると現金を持っていない銀行(通常は融資や投資に振り向けていて手元にはほとんど現金がない)はたちまちのうちに窮してしまい、資金繰り倒産に落ち行ってしまう。

 こうしたことを防ぐのが今回の措置で、ヨーロッパの金融機関は最後の出してであるECBから潤沢なドル資金を供給してもらそのために、ECBはスワップ協定でアメリカのFRBからほぼ無制限にドルを調達できるようにした。
ECBはユーロは持っているが(最後は印刷すればよい)、ドルは無制限には持っていないからだ

注)なぜドル資金が必要かと言うと貿易の決済がほとんどドルで行われているため。金融機関はこのドル決済資金を調達する必要がある。

 私も過去に日本の金融機関がこの流動性危機に遭遇した現場を見ている。ちょうど長銀日債銀が倒産した98年前後のことだが、ある大手金融機関が倒産間際に陥った。この危機を日銀と私が勤めていた金融機関が救済することになり、その金融機関から大量の有価証券(ほとんどが株券)が秘密裏に運び込まれた(日銀と異なって無担で貸し出すわけにはいかなかった)。
その量は金庫室(相当大きい)をはみ出すほど大量で、あまりのその多さに私は呆然としたほどだ。

 今回世界の中央銀行が動いたことで市場は一旦平静になり株価も上昇している。
しかしこれは白河総裁の言う一時の「時間を買う政策」に過ぎない。
本命はEUがこの欧州危機にどのように適格に対処するかだが、こちらはフランスとドイツの確執でどう見ても適切な方策が決定できるとは思われない。

 先に首脳会議で決定したEFSF(欧州金融安定化基金)の拡大案4400億ユーロを1兆ユーロに拡大する案)は資金の出してであった中国ブラジルが逃げてしまって拡大ができない。
IMFに期待してもIMFが現在貸し出し可能な金額は4000億ドル程度で、これはイタリア一国の支援にも足らない金額だ。
だがIMFは基金の拡大をしようにも、それをすると出し手(中国)の発言権が強化されるのでアメリカが消極的だ。

 結局欧州危機は中央銀行の対応があっても、財政面の適格な対応ができないままずるずると深みにはまっていくというのが私の見方で、EUは確実に衰退が始まっているといえそうだ。

なお、欧州金融危機については以下のカテゴリーに纏めてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html



 

 

 

 

 

 

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評論 世界経済 ヨーロッパ経済」カテゴリの記事

コメント

>だがIMFは基金の拡大をしようにも、それをすると出し手(中国)の発言権が強化されるのでアメリカが消極的だ。

これはどうでしょうか。たしかに中国は人民元をいくらでも刷っちゃう国ではありますし、ドルを国債でたくさん持っているらしいですけど、内心EUに資金を提供する気は全くないと思いますけどね。

投稿: 縄文人 | 2011年12月 5日 (月) 06時39分

山崎さんの経済記事を読むようになって2年がたちます。きっかけは株式日記に掲載された内容が面白くて、ここに来たわけですが、いまでは経済記事だけでなく、マラソンや健康、文学まで全部読んでいます。そのお陰かと思いますが、週刊エコノミストがスラスラ読めるようになり定期購読するようになりました。山崎さんが週刊エコノミストの売り上げに貢献していることは間違いありません。毎日新聞社は、おゆみ野の清掃活動ボランティアに寄付くらいはしてもいいですね。 これからも噛み砕いた経済記事の掲載お願いします。

(山崎)コメントありがとうございます。とても嬉しいコメントです。

投稿: 三太郎 | 2011年12月 5日 (月) 14時39分

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