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(23.12.11) モダンイスラムの行方 トルコの復権

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  先日のクローズアップ現代を見ていたら、国谷キャスターがトルコからの実況中継をしていた。中東情勢の動きをレポートしていたシリーズの一環として今回は注目を浴びつつあるトルコのモダンイスラムについての報道だった。

 モダンイスラムとは聞きなれない言葉だ。アラブの春がどのような形で収束するか不明だが、先進諸国はトルコ的な穏健イスラム国家が現れることを期待し、間違ってもイランのような急進イスラム国家にならないことを望んでいる。
アラブはエジプトにしろリビアにしろ、急進イスラム国家になる可能性が高いが、そうなるとアラブにイラン同盟が出来上がり、核開発を推進するのでことが厄介だ。
特にイスラエルとの関係は先鋭化するだろう。

 そこで今急速に注目され始めたのがトルコで、「イスラム色は仕方ないが、せめてトルコのような国になってほしい。国作りはトルコに学べ」といい始めた。
もちろんそれを裏でひそかに糸を引いているのはアメリカだ。
そのキャッチフレーズをモダンイスラムというが、アメリカは言葉を実に上手に使用する。

 トルコはここ20年間に渡ってEU加盟を熱望し、その都度EUから拒否されていた。
クルド人を弾圧していて民主化が十分に進んでいないとの理由だが、本当はキリスト教連合のEUにイスラム国家が参加するのを防ぎたかったからだ。
トルコははたから見ても気の毒なくらい西欧社会のまねをして何とかしてEUに加盟し経済的に先進国になろうとしてきた。

注)トルコにとってクルド人の独立国家成立はどうしても認められない一線で、密かにクルド人組織の殲滅を図っている。イギリスの北アイルランド問題と似ている。

 第一次世界大戦後の革命でトルコは世俗主義という政教分離を国是とし民主主義国家を標榜したが、どうやってもEUが参加を拒むのでとうとうトルコが居直った。
それならいい、もうEU には頼まん。トルコはトルコらしくイスラム国家として生きていく
2003年エルドアン党首が率いるAKP(公正発展党)が過半数を制し、イスラム色のある国家運営に切り替えた。

 しかし世の中とは分からないものだ。あれほどあこがれの的だったEUリーマンショック以降すっかりおかしくなり、最近はギリシャ・イタリア・スペインの債務問題で収拾がつかないほど混乱し、経済はマイナス成長に陥りつつある。
一方エルドアン首相率いるトルコはEUが相手をしてくれなかっため、西欧を諦めもっぱら近隣善隣外交を展開することになった。
エルドアン首相の言葉で「ゼロプロブレム外交」という。

 回りにはシリヤ、イラク、ロシア、マケドニア、ギリシャといったかつては敵対していた諸国ばかりだったが、敵対関係を改め友好関係を深め、特にシリア・レバノンとは完全に関税を撤廃してアラブ版EUを作ってしまった。
こうしたアラブよりの戦略がアラブ諸国の主として石油に支えられた経済発展を取り込むことに成功し、ここ数年は8%程度の驚異的な経済成長を図ることに成功した。
2003年以降GDPは3倍になり、今やG20の押しも押されぬ新興国の一つである。

もはや我が国はEUに加盟をすることを望んでいない。我が国はアラブ諸国と良好な関係を築くことに成功し、十分な経済成長を図っている。このトルコの政体をモダンイスラムと言おうエルドアン首相の鼻息はますます荒い。

 もっともこの善隣外交はここに来てつまずきが目立ってきた。友好を急ぐあまりシリアのアサド大統領とは家族を交えた親密な友情で結ばれ、エジプトのムバラク政権を支持し、リビアのカダフィ大佐の友達になっていたからだ。
ところが今年の春からアラブの春が吹き荒れてきた。

まずいな、このままではエジプトやリビアの国民からそっぽを向かれてしまう
アラブの春が成功するとエルドアン首相は他の諸国に先駆けさっそくエジプトとリビアに出かけていって革命を支持するデモンストレーションを行った。
私が友情の連帯を示してきたのは強権政権に対してではなくエジプトやリビアの国民に対してだ

 最後に残っていたアサド首相との家族を交えた友情も11月12日の国会演説で「アサド大統領は国民の弾圧を止めるべきで、すぐに退陣すべきだ」泣いて馬謖を斬った。
エルドアン首相の変わり身はたいしたものだ。「時を見るのに敏」と言うのはこういう人を言うのだろう。

 かつて西洋をもう一歩のところまで追いつめたオスマントルコの末裔は今再びアラブの盟主として西欧を追いつめる立場に立とうとしている。
それをモダンイスラムの潮流という。

なおアラブの春についての記事は以下にまとめてあります。http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45123956/index.html

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