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(23.11.3) 原発検査は誰が行うか? 原発検査のトリック(毎日新聞のスクープ)

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 電力会社原子力安全・保安院の関係者にとって、毎日新聞の朝刊は鬼門だろう。
なにしろ周期的に原子力関連の問題点のスクープを連発している。
前回は東電のゼロ連結会社のトリックだったが、今回は原発検査のトリックだった。

 11月2日の朝刊には原発検査の法定検査機関、原子力安全基盤機構(原子力安全・保安院に所属の検査が完全に業者におんぶに抱っこされたものだったことを暴いている。
記事によると検査を行うマニュアルは要領書と言うのだそうだが、これは業者の自主検査マニュアルを丸写しにしたものだった。

丸写しだって、内容がしっかりしたものならいいだろう」機構の検査業務部次長はそう言ったそうだが、実は問題がある。
私も長い間検査セクションにいたから分かるのだが、通常業者が自ら作成する自主検査項目は非常に細部にわたって細かいのだが、実務処理の手順が正確に守られているかどうかをチェックするもので、業務そのものが適切に運営されているかどうかまではチェックしない。

注)たとえば金融機関の自主点検マニュアルは印鑑が押されているとか、訂正が正しくされているとか、権限違反がないとかをチェックしている。一方検査部の検査は管理職の資質に問題がないか、業務の配分は適切か、無用な仕事をしていないか、外部からの進入に対し適格な対策がとられているか、等をチェックしていた。
現場と検査セクションの見る目は異なっている。

 原子力安全基盤機構の検査員は全体で200人程度だそうだが、これはアメリカの原子力規制委員会NRCの検査員4000名に比較するとあまりに少ないといわれている(アメリカの原発の数は日本の約2倍)。
日本ではこの少ない人員で検査を行うため、業者作成の自主点検マニュアルを表紙をかえて機構の要領書にしていたのだそうだが、この方法の一番のメリットは業者が行った自主点検結果書だけを見て、すべての検査が終わることにある。

注)それ以外の点検項目がないので、検査員が自主的に検査する必要がない。

自主点検をなかなかよくやってるじゃないか、何か問題なかった、それなら結構、後は一杯行こうか」なんて感じで検査はさっさと終了させ検査員にとって最も充実した夜の時間を過ごすことができる。

注)私が検査員になった頃は相手先(この場合は支店)の接待を受けるのが常態化していた。私自身は酒を飲まず、検査が終わったらJOGをしたかったのだが同僚がいる場合は断ることができなかった。
ある同僚はその接待のあり方で支店の評価を変えていた。
なお、この夢のような状態は金融庁が銀行検査を強化した2000年前後からは接待が禁止されるようになった。


 笑ってしまった。原子力安全基盤機構の検査は一昔前の検査で、相手を全面的に信頼し(通常性善説の検査と言われる)、互いに胸襟を開くために酒宴を張る検査になっている。
機構の上部団体である原子力安全・保安院は今回の福島第一原発の事故でまったく機能していなかったことがばれて神妙になっており、報道では幹部は「機構の検査は手抜きで楽をしているといわれても仕方がない」とコメントしたが、当事者の機構の幹部は「自前で要領書を作ることも不可能ではないが、そんなことをすると日が暮れる」と居直っている。

 なぜ日が暮れてしまうと困るかと言うと、大事な接待の時間がなくなるからである。
日本においては検査は通常形骸化されている。これは一方で検査対象先の工場が真面目に製品作りをしているからで、アメリカのように目を放すと手抜き工事をする国民性ではない。
しかしそれも限度があって、担当者が切れてしまっている場合や、幹部が精神的に追いつめられている場合はいくらでも有るのだから、相手の事業所に100%頼った検査をすべきでない。

 日本の多くの法定検査機関は担当者に専門家が少なく勢い素人検査になることと、役人は接待されて当たり前と考えていることと、互いに胸襟を広げるためには宴席が必要と考えていること等が絡み合って、馴れ合い検査になっている。

 それでも問題が起こらなければいいのだが、原子力関連施設の問題は世界の注目を浴びている日本のアキレス腱なのだから、せめて世界に対して釈明できるレベル(日本的な馴れ合い検査ではなく)の検査対応は必要といえる。

 やはり機構は居直るのではなく、給与に見合った自主的な検査をするぐらいの態度は示してほしいものだ。

なお、東電のゼロ連結会社のトリックは以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/231031-9e88.html

 

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