(23.11.26) 中国の不動産バブルの崩壊 価格がピークアウトした
中国の不動産価格の推移がバブル崩壊時の日本とそっくりになってきた。
中国国家統計局による公式数字では11年10月の70都市の新築商品住宅の価格が前月比▲0.14%になったと報じており、公式数字で不動産価格がピークアウトしたことが裏付けられた格好だ。
この推移を見てJPモルガンやゴールドマン・サックスの中国担当のアナリストが、「不動産価格は今後半年の間に10%~15%程度の下落の余地がある」と分析したが、日本の不動産価格の崩壊を知っているものからすれば、ずいぶんと甘い分析に見える。
日本の不動産価格崩壊時とまったく似ている現象は、大都市郊外の高級住宅で30%~40%の値下げが横行していることで、すでに住宅を購入した住民から支払った購入費の返済を求められている。
日本でも住宅公団や住宅公社がバブル崩壊後に値引き販売を行って、既往の住民から購入費の返還訴訟が出されていたのを思い出す。
注)北京市の環状線周辺(郊外に当たる)のアパートの価格がここ1年で1㎡当たり24万円から17万円に引き下げられて販売されていた。
最も現段階の価格崩壊は高級物件の価格崩壊で、こうした物件はもっぱら投資対象であり中国政府の引締め政策の影響を受けやすい。
一方低価格物件に対する需要は旺盛で、一般の中国人の最大の関心は安く手に入るアパートの入手だ(高級物件は一般の庶民には高値の花になっている)。
注)中国政府は不動産価格の上昇を抑えるために不動産資金の貸し出しを抑制している。日本でも日銀が不動産融資の窓口規制を行ってバブルを崩壊させた。
中国政府も手ごろな価格の住宅供給に熱心で、NHKのワールド・ウェーブを見ていたら市価の5分の1程度の住宅(70㎡で350万円程度)を北京市郊外に10万戸建設しようとして、一部は完成していた。
入居した住民は「こんな幸せなことはない」と喜んでいたが、実は喜んでばかりもいられないとNHKのキャスターが報じていた。
本来こうした住宅は所得が低い人のために建設したのだが、実際は所得証明書を誤魔化して高所得者が投資物件として購入している人が多いのだそうだ、
なにしろ市価の5分の1だから転売すれば投資額の4倍の利益を上げることができる。
せっかくの中国政府の住宅政策が投資物件に早代わりして、抽選にもれた人々の怒りを買っているという。
中国の現状は高級物件は価格が上がりすぎてバブルがはじけている。
それでも庶民レベルでは住宅需要が強く中国政府も低価格住宅の供給に熱心だが、せっかくの善政も黒い頭のネズミに食い荒らされているというのが実態のようだ。
注)日本でもバブル最盛期の頃住宅公団のアパートを抽選であたった人が、すぐにそれを転売して多額の利益を得ていた。
中国の成長がピークアウトしたと思える指標は、上記の不動産価格の推移だけでなくGDPの伸び率の低下や、輸出ウェイトの低下や、消費者物価の高騰等いたるところに見られる。
中国経済の減速が明らかになるにつれて、今まで高騰の一途をたどっていた資源価格(鉄鉱石、銅、原油等)が値下がりし始めているし、食料価格も安定してきた。
中国発世界的インフレの波はどうやらこのあたりが限界で、国内的には不動産価格の低下、国外的には資源価格の低下として中国経済をソフトランディングさせていくようだ。
注1)GDPの推移:11年第一四半期 9.7%、第二四半期 9.5%、第三四半期 9.1%
注2)輸出ウエイト: 2006年~9年平均 34%、現在25%
注3)消費者物価: 11年11月 5.5% うち食料品価格11.9%
なお中国経済の記事は以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43974941/index.html
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