« (23.11.24) アラブの第二革命 イスラム政権か軍事政権か? | トップページ | (23.11.26) 中国の不動産バブルの崩壊 価格がピークアウトした »

(23.11.25) NHKスペシャル ユーロ危機とヘッジファンドのCDS戦略 日本も狙われている

221022_006


   私は好んでNHKのユーロ危機関連の番組を見るが、その理由はヘッジファンドの動きが分かるからだ。ヘッジファンドとは表に出ることのない私的な投資集団で、通常のニュースソースではその実態をつかむことができない。

 今回NHKスペシャルに登場したのはロンドンに本拠地を置く運用資産約1億ドル約76億円)規模のどちらかと言うと中規模のヘッジファンドを取材していた。
ここの社長であるルイ・ギャルゴア氏がギリシャ危機とイタリア危機に乗じてCDSクレジット・デフォルト・スワップ)という一種の保険商品で多額の利益を上げている様を見せてくれた。

 ギャルゴア氏は1年前からギリシャ国債のCDSが値上がりすることを見越してまだ安値だったCDSを購入し、実際にギリシャ危機が起こるとそれを4倍の利益を上げて売り抜けていた。
また続いて発生したイタリア危機では10日間でCDSを購入して売りぬけ約4%の利益(年間では約144%の利益)をあげるという手際のよさを見せ付けていた。

 しばらく前まではヘッジファンドといえば主として空売り(値下がり局面で利益を上げる方法によって多額の利益を得ていたが、昨今の各国が導入した空売り規制により、今はCDSが主力の商品になっているようだ。
CDSと言っても一般の人にはなじみがないが、取引所で売買されているような株式と異なり、金融機関、保険会社、ヘッジファンド等の限られたプレイヤー相互間で相対で取引されている保険商品である。

 元々は企業の社債が信用がない場合、社債の購入者が保険会社に保証を求めたのが始まりで、引き受け手はアメリカの大手保険会社だった。
それが段々と拡大して、現在では国債の保証(保険にまで広がり保証するものとされる者は資金さえあれば市場に参入できるようになっている。

注)たとえば5%利回りの社債を持っている所有者が何らかの理由でその社債の償還に疑問を持つとすると、その段階でたとえば3%程度のCDSを購入する。こうすると社債保有者は実質5%-3% = 2%の利回りしか得られないが、一方社債発行会社が倒産してもCDS発行者(通常は保険会社)から全額弁済を受けられる。

 ヘッジファンドは今国債のCDSにターゲットを絞っているが、それは今が国家倒産の危機の最中だからだ。
倒産しそうな国家のCDSは急上昇するので、最高値で売る抜けば多額の利益を上げることになる。
国家経営が悪化すればするほど儲かるというヘッジファンドにとって最もおいしい商品だ。

注)ヘッジファンドが一般的に胡散臭い存在と見られるのは、相手が弱れば弱るほど儲かる商品取引を得意とするからで、国家倒産が起これば多額のCDS収入が得られるのが典型

 今回の番組を見てびっくりしたのはヘッジファンド同士が共同戦線を張ってイタリア国債のCDSの上昇を図り、これがイタリア国債の利回り上昇に影響が及んでいたことだ。
一般的な常識では利回りが上昇国債価格は低下)すると国債保有者は不安になってCDSを購入し、そのためにCDSが上昇すると思っていたが、実際の仕掛けはまったく反対だった。
そうか、こうしてヘッジファンドは国家を追いつめるのか・・・・
国債価格が7%になり、市場ではイタリア国債の購入者がいなくなり、ベルルスコーニ政権は崩壊している。

市場とは狼の群れだ。弱いと思われた国家が集中的に襲われる。ベルルスコーニ政権はどうやっても財政再建ができないと思われて襲われた。市場から罰が与えられたのだギャルゴア氏の言葉である。

 今世界の市場では日本国債のCDSがじりじりと上昇している。ヨーロッパ危機がアメリカにおよび、最後は日本に及ぶものと見て今のうちに日本国債のCDSを大量に購入しておこうと言うひそかな動きだ。
まだCDSは1%台だから買い頃であり、一方危機が発生したらすぐさまイタリア並みの上昇が予想されて5%程度にはすぐになってしまう。

注)日本国債のCDSの推移は以下参照
http://www.bloomberg.co.jp/apps/cbuilder?T=jp09_&ticker1=CJGB1U5%3AIND

 世界の中で最も財政規律が甘い国が日本だ。その最大の理由は政府・日銀が日本の金融機関を脅し挙げ国債購入を強いることができるからで、おかげで国内金融機関の保有率は約95%と圧倒的に高い。
だからヘッジファンドがいくらCDSで仕掛けてきたって、国債価格の下落はない」と言うのが政府・日銀の判断だ。

 だがそれは本当だろうか?
今はイタリアだが、次はスペインそしてフランスまでもがヘッジファンドの餌食になって、国債の半額切捨てを行うようになると、アメリカと日本の金融機関の経営が持たない。
政府・日銀は倒産しそうな金融機関を助けなければならず、そうした金融機関に国債を押し込むことができないから、国債の借り換えすら危うくなってくる。

注)私の判断ではこのような状況になると、政府は国債を日銀に引受させると思っている。(ユーロ加盟国はそれができない)。
そのために急激なインフレーションが発生し、国債価格はインフレで目減りをして実質的な半額切捨てになる。


 日本国債も完全にヘッジファンドの狙いの中に取り込まれた。各国は市場から狙われないように財政再建に大わらわだ。
アメリカすら向こう10年間で1兆2000億ドル約91兆円)の財政規模の削減を行おうとしている。
こうしたなかで日本だけがまったく無防備に(消費税を10%にアップすると野田総理は言っているが具体的な道筋は未定放漫財政を続けている。

 ヘッジファンドが一斉に日本に襲い掛かってきたときは逃れるすべがない。しかし政府も日銀もまた多くの日本人もこうした危機があるとは思っていないし、相変わらず放漫財政でその日暮らしをしている。
しかしフランスまで倒産すれば次はアメリカと日本だということは市場の一致した見方だ。

なお、ユーロ危機については以下にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43160490/index.html


また日本国債の危機については以下にまとめてあります。
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat38137154/index.html
 

 

 

|

« (23.11.24) アラブの第二革命 イスラム政権か軍事政権か? | トップページ | (23.11.26) 中国の不動産バブルの崩壊 価格がピークアウトした »

評論 世界経済 ヨーロッパ経済」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« (23.11.24) アラブの第二革命 イスラム政権か軍事政権か? | トップページ | (23.11.26) 中国の不動産バブルの崩壊 価格がピークアウトした »