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(23.11.24) アラブの第二革命 イスラム政権か軍事政権か?

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 チュニジア、エジプト、リビアと続いたアラブの春はここに来て様相が変わってきた。
長年にわたる軍事独裁政権を崩壊させたまではいいが、今度はイスラム原理主義勢力と、前政権を見限った軍部との間で権力の争奪戦が始まっている。

 エジプトではここ数日イスラム原理主義の若者と軍部が対立し、ふたたびタハリール広場で惨劇が繰り返された。
軍の治安部隊はゴム弾や催涙弾を使用してデモ隊の鎮圧を図って、すでに30名の死者が出ている。

 ムバラク政権を倒したものの、その後は多数派のイスラム教徒と少数派のコプト教徒エジプトのキリスト教)が対立し、そこに軍事政権が介入して三つ巴の権力闘争の様相だ。
本命はイスラム原理主義者と軍部の権力争いで、前者はイラン並みの宗教国家を目指し、後者はトルコのような軍事民主主義国家を目指している。

 軍事民主主義国家とは聞きなれない言葉だと思うが、第一次世界大戦後のトルコ革命で革命を指導したケマル・パシャが、イスラム反動勢力に政権を奪取されないため、軍隊を西欧式の近代軍隊にして民主主義の砦にした(信じられないかもしれないが軍隊で民主主義教育をしていた)。
実際その後イスラム色が強くなったり、政権に統治能力がなくなると何回もクーデタを起こして、イスラム色を排除してきている。
日本人にはなじみがないがイスラム圏の民主主義の一つの典型ではある。

 革命はその性格上どうしても極端に振れ易い。それは当然で革命勢力は徹底的な理想主義を掲げそれで民衆を引っ張っていくのだが、革命が成就するとその理想主義が足かせになる。
イスラム原理主義による国づくりはイランに例があるが、あまりの教条主義に周りの国家からは疎まれて国際的な孤立に陥りやすい。
そうなると被害者意識が昂じて自国防衛のために核兵器の開発に走るのだが、こうした行為がますます国際的な不審を呼ぶという悪循環に陥る。

 エジプトの実質的な最高権力である軍最高評議会は、エジプトのイスラム原理主義勢力がイランのようにならないための方策を懸命に考えている。
当初は2月の革命から半年後には議会大統領選挙を行い、軍最高評議会の権限を議会と大統領に移すといっていたが、今はその気がないようだ。

 かろうじて議会選挙をこの28日から行うことになっているが、ここでイスラム原理主義政党が躍進するようだと、その後の国政を過つと軍部は考えている。
そのための対策として新憲法に軍部の政治への関与条項拒否権のようなもの)や軍事予算の別枠制を入れようと画策しているが、そのことにイスラム原理勢力、特にその急進派である若者が反発し、第二の革命を標榜させる原因になっている。

 エジプトの実質的な権力は革命前はムバラク大統領、現在は軍最高評議会にあり、政府は軍評議会の傀儡であり、また議会については日本のような権限があるわけでない。
軍最高評議会は大統領選挙を来年の末まで延期し、それまでに憲法を改正して軍部の政治関与を明確にした後、大統領選挙を行うつもりだ(最近デモ隊に対する妥協案として来年6月の大統領選を提案した)。

 やはりアラブの春は一筋縄ではいかない。アラブにおいて大衆政党とはイスラム原理主義政党(近代的な自由主義政党は少数派のことだから、アメリカや西欧にとってこうした大衆政党が権力を握るということは、イラン同盟がアラブにできるのと同じだ。
だがアメリカも西欧も今は自分のことで精一杯でこうした地域に軍事介入をするつもりはまったくない。

 今後ともイスラム原理主義政党軍部との間の摩擦は続くが、兵士はほとんどがイスラム教信者で、原理主義にシンパシーを持っているので、どちらかと言うとイスラム原理主義政党が権力を握る可能性が高い。
やはりアラブはアラブ的に問題を解決するのだろう。アメリカや西欧がアラブに関与しようとした時代は終わろうとしている。

注)リビアにはNATOが関与したが、ここは西欧が石油利権を持っていたため。そうした利権のないシリアには関与をNATOは否定している。エジプトは観光が唯一の産業のような国だからさらに関与の可能性は少ない。



なお、アラブの春に関する記事は以下参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat45123956/index.html

 

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