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(23.11.14) TPPには参加か協議か? なんともさえない野田総理の決断

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  なんともさえない決断になってしまった。TPP環太平洋パートナーシップ)に参加表明するか否かでおお揉めにもめていた案件は11日「交渉参加に向けて関係国と協議に入る」という表明で決着した。

 反対派によると「協議」は参加」を意味しないということで、一方賛成派は「協議」して「参加」することだという。
同床異夢とはこのことで日本の政治には実にこの種のあいまいな表現で全員を納得させる手法をとることが多い。

 韓国のイ・ミョンバク大統領などはアメリカとのFTA交渉ではっきりと前向きな発言をするのと好対照だが、これが「和の国」日本の合意形成方法だといわれれば「まあ、そうだろう」と言う気持ちにはなる。

 今回のTPP交渉野田総理は「貿易立国で繁栄を築いた我が国の発展にはアジア太平洋地域の成長力を取り入れる必要がある」と説明したが、日本と言う20年間にわたって成長が止まった国を何とか救うのはアジア太平洋地域の成長力だとの強い思いがあるからだろう。

 TPP交渉の眼目は関税の例外なき撤廃だから、競争力のある輸出産業にとってはメリットだが、高関税に守られてきた日本農業にとって大変な問題であることは事実だ。
なにしろ米は約800%、小麦は約250%牛肉は38.5%の関税によって守られている。

注)牛肉については関税の引下げが行われた1991年以降、日本の小規模畜産農家は実質的に淘汰されてしまった。

 農業団体は日本の美しい国土と農業を守るためにTPP参加に大反対だが、実際は都市近郊の米作農業は壊滅している。
私の住んでいるおゆみ野の周辺にはまだ農地が残っているが、実際は耕作者が高齢化しており、耕作を放棄した農地が点在している。

注)皮肉なことに大都市近郊の元農家が農協組織を金融と共済の面で支えている

 私の知り合いはそうした農家の一人だが、私はその農家から「山崎さん、あんたそんなに毎日走る体力があるなら農業を手伝ってくれないか」と勧誘を受けた。
私のような農業とは無縁であった退職者さえ農業労働力として求められるほど、農作業に従事する人はいない。

 本来は農協農事法人に農地を貸し与えて規模拡大すればいいのだが、都市近郊の農地は宅地に転用される可能性があるので、本格的な農業者に貸してしまうと宅地として販売する時にそれができなくなる。
したがって私のような素人に貸しておいて当面は様子を見ようと言うことになるわけだ。

 日本の都市近郊の農業はどこもこうした状態で、実際埼玉県に匹敵する耕地が耕作されずに放置されている。
守るべき農業はすでに内部が空洞化しており、農業団体が言うほどの農業は日本に残っていない。

 また医師会が「健康保険制度が崩壊する」といって反対しているのには驚いた。実際は保険診療と保険外診療の混合診療の全面解禁に反対しているのだが、なぜ反対するのか良く分からない。

 すでに歯科医療では金歯は保険対象だが、白い象牙質の歯は保険対象外で、よく歯医者に行くと「どちらにしますか」と聞かれることが多い。
特に収益重視の歯科医がこの保険対象外の歯を勧めることが多いが、これなどは断ればいいだけだから特にどうと言うこともない。

 また美容整形などはすべて保険対象外で、この値段は宣伝費と医者の腕に比例して決められている。「世界に冠たる日本の保険制度」といっても実際はいくらでも自由診療があるのだから、いまさら「健康保険制度が崩壊する」と言うのは大げさすぎる。

注)日本の人的資源で最も優秀な人(勉強のできる人)は医者になっている。この人的資源が競争力がない様では日本の他の部門の人が勝てるはずがない。
実際は自由診療になると世界各地から金持ちの病人が日本の優秀な医療を求めて押し寄せてくる。
日本は世界の医療機関になれる可能性が高い。

 一方金融の分野で特にアメリカから槍玉に上がってきたのは郵政の貯金と保険で、郵政は国の機関として特別に保護されていると言うのがその主張だ。
小泉政権はアメリカの意向を斟酌して、郵政の全面自由化に乗り出し国の関与をできるだけ縮小しようとしたが、民主党政権になって亀井氏の強いリーダーシップの揺り戻しがあって、再び国有企業になってしまった。

 なぜ郵政の民営化に亀井氏が反対し、一方アメリカがこだわるかと言うと、郵政こそが日本の国債の約3割程度を購入する国の財布だからだ。
亀井氏は日本を守ることはこの国債購入システムを守ることだと思っている。
一方アメリカから見れば1%前後の利回りで満足している国債購入者を解き放なてば、ヘッジファンド等への顧客獲得のチャンスに映る。
なにしろヘッジファンドの通常の利回りは10%から20%を目指しているのだから、1%などは利息が存在しないのも同じだ。

 このようにTPPには農業の他に医療預金・保険の問題もあるが、本質的には農業問題だといっていい。
医療の日本の技術は世界最高レベルなのだからかえって、輸出産業に代わる成長産業になる可能性のほうが高い。
また国債購入機関としての郵政が崩壊すれば、日本の金融機関の国債保有率が95%程度から大幅に低下することは確かだが、日本の放漫財政を改める良い機会になる。

 そして何より自由貿易こそは競争力の強い輸出産業がまだ日本にとどまっても良いと判断する要因になることは確かだ。
日本はすでに農業国家ではなく工業国家だ。農業保護のためにTPP参加をとどまることはできない立場にある。
野田総理もそのことは良く理解しているが、今回の「協議に参加」は中途半端ななんともさえない発言で、イ・ミョンバク大統領のような明確なメッセージを発してもらいたいものだとつくづく思ってしまった。

 

 

 

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評論 日本の政治 野田内閣」カテゴリの記事

コメント

TPPに反対する理由はいくつかありますが、理由にならない理由を一つ、二つ。
戦後(多分戦中、戦前も)日本のマスコミは、ことごとく世論をミスリードしてきた事実があります。いままで正しいことを言ったことがないのです。
とにかくマスコミの主張の逆を行けば正しい道に通じると言って過言ではないと思います。それ程に近視眼的であったと思います。
ネットは始まったばかりですが、ネット上の主張は(いろんな主張があるのですが)、ことごとく正しかったというのが私の持っている印象です。
日米修好通商条約から3年後に南北戦争が始まりました。この南北戦争の北軍の軍資金は日米修好通商条約から得た利益でまかなわれたと言われています。とにかく莫大な利益をアメリカが受け取ったと言われています。その不平等性を解消するために小村寿太郎が活躍したことはご存知のとおりです。この小村寿太郎は、満州へのアメリカ資本の導入に反対し、結局のところ日米戦争の原因を創ったかもしれません。しかし、彼をしてそれほどに警戒させるものが、アメリカにはあったのだということです。
TPPでネットが問題にしているのは、「隠された不平等性」なのです。アメリカには、残念ながら双方ともに幸せになろうという発想がありません。だから、これだけ軍事力がありながら、世界の盟主になれないわけですが。自分たちだけの利益をどん欲に追求しようというところがあります。
もう少しアメリカを警戒しても良いのではないかと思います。

投稿: 縄文人 | 2011年11月14日 (月) 14時35分

日本の製造工場は海外移転が進んでいるので、輸出関税を下げるメリットはあまり無いような...
製造業の空洞化は、関税よりも人件費の高さの影響の方が強いのでは、と。

TPPって、結局、アメリカの属国政策でしかないような気がします。

投稿: ふくだ | 2011年11月14日 (月) 23時20分

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