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(23.10.27) タイの洪水と土建国家日本の再生

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 私は長い間日本の土建国家的体質にうんざりし、特に 八ツ場ダムに象徴される無用なダム建設や、不必要と思われるほどの河川改修や、人口も自動車も減っているのになお建設を進める高速道路や、飛行機が飛ばない飛行場に嫌悪感を持っていたが、これはどうやら日本の特殊要因で、タイの水害を目の当たりにして世界にはなお多くのインフラが必要なことが分かった。

 現在タイでは大水害が発生していて、すでに7つの工業団地が冠水し、首都のバンコックに水がひたひたと押し寄せている。
インラック首相は「大規模な冠水から首都の中心部を守れるかどうか分からない」と弱音を吐いているが、このような静かに押し寄せる水害は日本にはない。

 中部アユタヤからバンコックに至る平原はほとんど高低差がなく、チャオプラヤ川がエジプトのナイル川と同じように三角州を造っており、そこに人々が生活している。
かつては洪水のたびに冠水しても肥沃な土壌が運ばれて農業生産が上がっていたのだろうが、タイが農業国家から工業国家に変遷するにつれて、洪水は恵みではなく災害になってきた。

 特に最近は地球温暖化の影響で気候が荒々しくなっており、雨が降れば豪雨となり、降らなければ徹底的な旱魃になってしまう。
今回のタイの洪水は50年に1回あるかなしの水害といわれているが、とても一過性の洪水とは思われず、今後毎年のように襲い来る洪水の序曲に過ぎない。

 本来ならば治水対策をしっかり行うべきであったが、政党内の取引材料に使われ治水は遅々として進んでいない。
チャオプラヤ川やその支流の河川工事は日本人の目から見るとほとんど自然のままの河川に見えてしまう。
少々水が溢れてもそのうちに引くからいいや」と言うレベルだ。
これでは毎年のように、日本企業が進出している工業団地は冠水しサプライチェーンが寸断され、何でタイに工場進出したか分からなくなってしまう。

注)タイには約7000社の日本企業が進出しているが、今回冠水を受けている460社はほとんどが大手企業。
サプライチェーンが寸断されて多くの企業が操業停止に追い込まれており、東日本大震災の後とまったく同じ状況になっている。

 タイの洪水は単にタイ国民の問題のとどまらず、進出している日本の輸出産業全体の問題といえる。
日本は長い間ODA予算を計上し、主として中国インドネシアのインフラ整備に貢献してきたが、中国へのODA戦後賠償の一環とみなされ中国国民からはまったく感謝されていない。
またインドネシアへのODAは一定の成果が上がってはいるが戦略的とはいいがたい。

 日本のODAは日本企業が橋梁や道路やダムの建設計画を作成し、それを現地政府の意向として日本政府に働きかけて実現させているものが多く、一部企業の利益にはなっても日本企業全体の利益とは無関係だ。

注)橋を作りたい企業は橋だけに注目し、道路を作りたい企業は道路だけに注目する。このためODA予算がその国のトータルとしてのインフラ整備になるとは限らない。

 今回のタイの水害のように日本企業のほとんどが被害を蒙るような場合は、日本の直接的な利益の問題としてODA予算を使用したインフラ整備に取り組む必要がある。
かつてタイに対してもODAは供与されていたが、昨今はタイの経済成長により新規ODA予算の供与は行われていない。

 だがしかし今回の洪水でタイに徹底的に不足しているのは公共的なインフラ、特に河川工事であることが明らかになった。
日本では無駄に無駄を加えるようなスーパー堤防の建設が、人がほとんど住んでいない北海道の天塩川の流域で行われているが、本当に必要なのはタイのチャオプラヤ川の堤防工事である。

 土建業界は日本で細々と生きながらえるのではなく、本当に土建業を必要としている場所に戦略的に(日本企業を助けるために)進出されなくてはならない。
タイの治水対策こそが最も緊急の課題であることを今回の洪水が教えてくれた。
土建国家日本の再生は国内の不要な公共工事をすることではなく、タイやカンボジアやベトナムのような日本企業進出地域で現地の人々を守り、さらに日本企業を守ることにあると認識すべきだ。

なおタイに関する記事は「評論 世界経済 タイの政治・経済」にまとめてあります。http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44596275/index.html

 

 

 

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