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(23.10.16) 韓国とアメリカのFTA経済協力の締結 決断力で差がひらく日本と韓国

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 「政治とは決断の技術」と言われるが、今回ほどそれを感じたことはない。
12日、韓国とアメリカのFTA(自由貿易協定)をアメリカ議会が承認し、韓国議会が承認するのも時間の問題となった。これで韓国とアメリカの経済協力が一層強化されることが明確になった。

 5年越しの交渉と言われた両国のFTA交渉急遽締結できるようになったのは、この締結に反対していたアメリカ民主党が賛成することにしたからだ。
いままで反対していたのは韓国からの安い自動車輸入が増えてGMフォードの経営を圧迫することを恐れていたからで、特に民主党の基盤である全米自動車労組の反対が強かった。
しかし現在はGMもフォードも経営は絶好調でその心配がない。

注)アメリカは世界最大のメーカーだったトヨタをいちゃもんをつけてアメリカ市場から引き釣り下ろすことに成功し、GMが再び世界NO1になったので、韓国製の自動車を恐れなくなった。

 オバマ大統領はさっそく「100億ドルの輸出拡大と7万人の雇用創出が可能になった」とアメリカ国民に胸を張ったが、これはアメリカ農産物の輸出拡大が可能になったとの意味だ。
一方韓国のイ・ミョンバク大統領は「韓国輸出産業の一層の拡大が可能になり、世界最大の市場が出現した(アメリカとEUとのFTA締結が実現したと言う意味」と韓国民に発表している。

 どちらもウィン・ウィンの協定と言っているものの、実際は韓国内の反対は厳しかった。日本と同様の農業問題を抱えているからだが、イ・ミョンバク大統領は国家の戦略を「農業より工業」に移すことを決断した。
韓国のりんご農家を取材したNHKの映像では「今後とも農業をやっていけるかどうか不安だ」と農民が述べていたがその通りだろう。
それでもイ・ミョンバク大統領が韓国の戦略として輸出立国を目指すと決断したのは、97年の金融危機と国家破産の経験からそれにかけるより韓国経済の生きる道はないと判断したからだ。

注)輸出によって得た十分な外貨準備がないとヘッジファンドに狙い撃ちをされてしまうと言う意味。

 
アメリカはこのFTA協定の締結を低迷するオバマ大統領の支持率を上げる契機と捕らえており、最大の外交勝利と捕らえている。
それはイ・ミョンバク大統領を国賓として最大限のもてなしたことに現れていた。
イ・ミョンバク大統領に議会での演説を許し(
これは最大の歓迎の意)、韓国料理店で会談し(ホワイトハウスからわざわざ韓国料理店に出向いていった)、GMの工場の視察を両首脳で行うと言うイベントをくみ(これはデトロイトに韓国自動車は脅威ではないとのメッセージ)、のべ10時間あまり両大統領は一緒の友情ある時間を過ごした。

注)昨年4月の核安全サミットで訪米した鳩山元首相は47カ国の首脳の昼食会のときに10分間だけの会談を許されただけだった。10時間と10分の違いは国家元首の決断力と実行力の差に比例している。

 一方日本の実情はとても決断からは程遠く、太平洋諸国のFTA版であるTPP(環太平洋パートナーシップに参加をするか否か、まったく結論を出せずにいる。
アメリカは苛立っているが、日本の政治指導力は極端に低い。

 野田首相は検討を指示したものの、参加するとは一言も言っていない。
これは安い農産物の流入を危惧する農業団体の反対や、株式会社の医院ができることを恐れている医療保険団体の反対や、司法試験も通ることができない弁護士が増加することを恐れている日弁連等の反対等があるからだ。

 しかしイ・ミョンバク大統領の決断と、野田首相の躊躇ほど「政治は決断の技術」と言う言葉の意味が分かる事例はない。
経団連は今でも韓国に押されっぱなしの輸出産業のてこ入れに是非ともTPP参加を実現させたいと考えているが、特に農村地帯に地盤を持つ国会議員(民主党議員が多い)のほとんどがTPP参加に反対している。

 日本の工業品の輸出の27%は自動車で、韓国とアメリカのFTAが締結されると韓国乗用車の2.5%、商業車の25%の関税がなくなり、一方日本はこの関税のハンディを背負って韓国車と競争しなくてはならない。
日本が韓国に負けていいのか」経団連は叫ぶが政治の動きは芋虫の歩みだ。

 実際はトヨタもニッサンもホンダも日本の政治には見切りをつけて、国外生産に傾斜している。
国に頼っていると会社がつぶれる
タイのアユタヤ団地に進出している企業は日本の大企業ばかりで、今回の水害被害で大きな痛手を蒙ったが、私は進出している企業のあまりの多さ(約300社)の方に度肝を抜かれた

 日本からすでに輸出産業は消えようとしており(自動車産業は主としてタイや中国やインドに、中小の部品メーカーは韓国に拠点を移しつつある)そうした意味では野田首相の躊躇も、またTPP交渉の行方もさして影響ないというのが実態のようだ。

 現在の状況は日本は何も決断することができず、TPPに乗り遅れ世界の田舎になると言う道をひた走りに走りつつあるのだが、和の国日本(全員が納得しないと何も決断しない国と言う意味らしい躊躇だ。
日本はかつての江戸幕府の鎖国体制に近づきつつあると言うのが私の見方で、私のような老人はそれでも一向にかまわないが、進取の気質を持った若者には日本を飛び出して韓国のような国で生活することを勧めたい。


注)アユタヤの団地に何らかの形で(連結子会社を含む)進出している企業名。

ホンダ、トヨタ、マツダ、ニコン、パナソニック、日本電産、東芝、味の素、セブン&アイ・ホールディングス、ファミリーマート、ソニー、キャノン、クボタ、加賀電子、パイオニア、ミネビア、HOYA、住友金属工業etc

なお韓国経済についてはカテゴリー「世界経済 韓国経済」にまとめてあります。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44234699/index.html

 

 

 

 

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コメント

>韓国に押されっぱなしの輸出産業
最近ブログを拝見しています。経済問題、とくに金融関連の問題の優れた解説は参考にさせてもらっています。もしかして外国の新聞を購読していらっしゃるのではないかと思います。
今回の記事ですが、おそらく日本の新聞の論調と同じです。要約になっています。
韓国と日本の貿易は、日本の圧倒的な貿易黒字です。韓国は意外に資本財の輸出が多いです。中国向けです。FTA後、日本車が韓国にあふれる可能性がありますが、アメリカ製日本車です。それでいいのです。アメリカの雇用が確実に増えますから。
現在韓国では貯蓄銀行の取り付け騒ぎが常習化しています。サムスン、LG、現代などがウォン安を背景に売り上げを伸ばし、国民が疲弊するといった図式です。日本は内需経済の国です。輸出は必ずしも必要ではありません。経団連は韓国のように輸出産業だけうるおい、他の国民を犠牲にしようとしているとしか思えません。
韓国と日本の違いは、韓国はFTAが必要だが(デフォルトを回避するため)、日本はTPPを必要としていないことだと思います。いまデフレで悩んでいる日本がなぜわざわざデフレギャップを大きくすることをしなければならないのか。輸出産業は日本にとって本当に重要な産業だろうか。雇用問題で悩んでいるアメリカのために、日本の雇用を犠牲にしなければならないのか。
日本の輸出品の多くは資本財です。消費財を輸出している訳ではありません。輸出分だけ消費財を輸入するというのは、個人的には大賛成ですが、日本の内需を犠牲にするとしたら、問題があります。それは、日本の雇用を犠牲にしてアメリカの雇用を増やすことではないのかと思います。
アメリカ政府はTPPについて、隠し立てしていないようです。日本政府は強い報道規制をしているように思います。したがって、TPPを論じるときにはアメリカ政府公表の資料を調べないとわかりません。ネットではこのアメリカ政府公表の文書を必死で「解読」しようとしている動きがあるようです。FTAも同じです。
FTAの場合、「毒素条項」と呼ばれる韓国政府が隠している(発表していない)条項があるようです。アメリカ政府は隠していませんから、アメリカの文書を解読すればよいのです。
ネットで流れている「毒素条項」は真偽がまだよく解らないのでなんとも言えませんが、本当ならひどいものです。もしかしてTPPもこれと同じかと考えるとぞっとする内容です。

(山崎)本件に関しては他に質問もありましたのでもう一度掲載します。

投稿: 縄文人 | 2011年10月17日 (月) 08時21分

韓国のFTAの内容を国会議員がまとめたものがあります。
http://saito-san.sblo.jp/article/48971807.html

投稿: 横田 | 2011年10月18日 (火) 22時14分

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