(23.10.12) 欧州金融危機が一段と進んだ デクシアの倒産
ドイツとフランスがギリシャ救済問題で角をつき合わせている間に、とうとうフランス・ベルギー系金融機関デクシアが倒産してしまった。デクシアはつい3ヶ月前に行われたEUのストレステストで問題なしと判定されていたのだから、ストレステストはあてにならない。
デクシアはギリシャやスペインによくある中小の金融機関ではなく、日本のイメージで言えばメガバンクの次ぐらいの規模の金融機関である。
注)総資産は11年6月末時点で5180億ユーロ(約52兆円)。地方自治体向け融資では世界屈指の金融機関。したがってここが倒産するとフランスやベルギーの地方自治体の資金調達に支障が出てくる。
あわててベルギー政府はベルギー国内の消費者向け金融部門を40億ユーロ(約4000億円)で買収し、当面個人(消費者)には影響が出ない措置を取った。
しかし問題のギリシャ国債等の不良資産は900億ユーロ(約9兆円)残っており、この部分をバッドバンクに切り離し、その不良債権の保証はフランスが37%、ベルギーが60%、ルクセンブルグが3%にすることにした。
この結果ベルギーは540億ユーロ(約5.4兆円)の不良資産を抱えたことになり、さっそく格付会社フィッチは「ベルギーの負担はわずかではない(GDPの15%相当)」としてベルギーの格付を1段階引き下げた。
ギリシャ危機がとうとう現実の問題として目の前に現れてきたわけだ。
フランスとドイツはいままでギリシャ支援について同床異夢だったが、銀行倒産という今そこにある危機を見て「今月末までにはギリシャ支援とユーロ圏銀行への資本増強策について合意する」と発表したので市場は一安心してニューヨーク株式市場は急反発した。
しかし客観的に見るとこのデクシアの倒産は、ユーロ圏の銀行倒産の序曲に過ぎないだろう。理由はインターバンク市場が凍りついているからだ。
一般の人はいくらでもお金のある金融機関が倒産するイメージはわかないだろうが、実際は金融機関は現金をほとんど持っていない。
現金を持っているだけでは何も利益を生まないので、限界ギリギリまで資金を融資や投資に振り向けている。
それでも問題がないのはインターバンク市場と言う無担保無保証の銀行間取引市場があってそこでその日の不足する決済資金を調達できるからだ。
このインターバンク市場はとても便利な市場なのだが、一旦悪い噂が立つとたちまちのうちに凍り付いてしまう。それは昨日まで海であったところが今日は流氷で覆われてしまう知床の海のようだ。
こうなると金融機関は決済資金を自己調達しなければならなくなり、自分の投資資金(新興国の株式やコモディティ市場の資金)を一斉に引き上げる。
こうなると世界中がパニックになって株式市場もコモディティ市場も大崩になって(実際そうなっている)、通常は値上がりする金価格さえ値下がりしてしまう。
注)ディーラーは一定期間の間に利益を出さないと首になる。株式やコモディティで損失が発生すると大きな利益が出ている金の売却を行うことで損益を整える。このため金価格も下落する。
デクシアはとうとう決済資金の調達ができなくなって倒産してしまった。しかしこの倒産はこれからの大手金融機関や中小金融機関倒産の序曲に過ぎない。
ギリシャ国債を保有している金融機関はデクシアだけではないからだ。
ギリシャは国債の返済をまったくする気がないが、イタリアとスペインが同じように返済を諦めたらヨーロッパの金融機関はほとんど全滅する。
そしてその影響は世界中に広がるのは時間の問題だ。
今世界の目はサルコジ大統領とメルケル首相の決意に固唾を飲んで見守っている。
この2国しかユーロを救うことができないからだ。
両首脳は全力をだして欧州危機を乗り切ってくれるだろうか??。
危機を乗り切るとはフランスとドイツの国民の税金を、ギリシャと倒産した金融機関につぎ込むことだが、今回それがうまくいったとしてもいつまでも国民を説得し続けることはできないだろう。
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