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(23.9.8) クローズアップ・現代 超円高に立ち向かえ 海外進出の新戦略 中小企業は韓国になびく

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(マッスルさん撮影 山崎編集

 円高になるたびに輸出企業は悲鳴をあげていたが、いくら悲鳴をあげても仕方がないことを悟り始めたようだ。
最近の円高は76円から77円歴史的円高で、リーマン・ショック以前の120円前後から比較すると約4割も円高が進んでいる。

 この円高に対し政府・日銀は4・5兆円規模円売り・ドル買いの為替介入をして数日間は80円程度の円安になったが、瞬く間のうちに元の円高に戻っている。
政府・日銀はなおも[必要があれば今後とも介入する]といっているが、実際はまったく介入効果がないことにいらだっている。
なんてことだ、いくら為替介入しても焼け石に水だ・・・・・・

 実際今回の円高はヨーロッパ経済とアメリカ経済が失われた10年に突入したために起こっている円高なので、日本がいくらがんばっても効果がない。アメリカとEUが超金融緩和策を推し進めている限り円高は収まらない。

注)アメリカとEUはドル安とユーロ安で輸出産業をバックアップしており、日本の円高は願ってもない状況なので協調介入をする気はさらさらない。

 日本では過去において2回円高にともなう輸出企業の海外進出ラッシュがあった。
一回目1985年プラザ合意直後の数年間で、250円前後だった為替相場が120円近くまで円高が進んだあのジェットコースター並みの円高の時代である。
この時期に海外進出をしたのは日本を代表する輸出産業群で、こうした親会社は海外に出たが1次・2次レベルの下請け会社は国内にとどまり部品の供給を続けていた。

 二回目1995年の前後の超円高水準の時期で一時的にしろ76円の円高になっていた時期である。このとき海外進出したのは1次・2次下請けと言ったそれ自体も大企業の企業群だった。
その結果日本に残ったのは特別なノウハウを持った企業か、孫受けと称される従業員規模が100人以下の中小企業になってしまった。

 そして日本の物造りの基礎を支えていたのはこうした中小企業群で、特に金型製造のような1000分の1ミリの精度を誇る金型などは日本の中小企業のお家芸と言ってよいようなものだった。

 今回の海外進出は3回目の波だが、主役はこの孫受けの中小企業群である。
現在親会社は中国や東南アジアに進出してしまい、海外進出した親会社は日本からだけでなく韓国・中国・台湾の企業から安価で相応の品質の部品供給を受けている。

注)海外進出した企業は日本の部品を使わなければならないと言う制約から解放されており、安価な部品を使用することにより競争力のある製品を造ることができている。

 このため日本の中小企業に対する価格引下げの要請は非常に厳しく、韓国や中国並みの価格を要請されており、3割から4割の引下げ要求になっている。
しかし国内の中小企業にとってそれはまったくできない相談だ。
輸出産業の中小の部品メーカーは今仕事を止めるか、海外に活路を見出す以外に選択の余地がないまでに追い詰められた。

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マッスルさん撮影 山崎編集

 クローズアップ・現代
ではこうした多くの中小企業が今海外に工場を建設してコストダウンを図っている事例を紹介していたが、最も注目された中小企業の戦略は韓国への進出や韓国企業との提携だった。
かつて日本の繊維や雑貨や食品加工のような企業群が韓国に安価な人件費を目指して進出していた時期があったが、今回の進出は日本の輸出産業を支えてきた中小企業の韓国進出である。

 韓国は現在輸出環境としては最高の状況にある。韓国ウォンはドルにペッグしているからやはり4割程度日本円に対してウォン安になっており、このため人件費も電力も水道料金も日本の約半分のイメージだ。

注)韓国政府は表立ってのウォン安政策はとってないが、輸出企業に対し獲得したドルをウォンに変えさせないとか(ドルをウォンに変えるとウォン高になる)さまざまな手段でウォン安を誘導している。
これが可能なのはウォンが円のように国際通貨として機能していないので為替操作に目くじらを立てるのは競争相手の日本だけのため。

 
クローズアップ現代で紹介されたある自動車部品メーカーは韓国に進出し価格を2分の1まで引き下げることに成功していた。今までは国内メーカーだけの取引だったが、現在自動車との取引が行われるようになって2年間で3倍の売上げが増加したと言う。
このメーカーは基幹部品は日本で生産し、それ以外の部品は韓国で調達して組み立てを韓国で行っていた。
基幹技術を日本に止め、かつ売上げを伸ばす唯一の方法は輸出基地である韓国に進出することのようだ。

 日本の輸出産業はこうして基幹技術を日本に残しながら、親会社、一次・2次下請け、孫受けとも海外進出を図るようになり、輸出産業の時代が終わっている
何度も言うが現在の円高は数年規模で続き、その後も更なる円高になる可能性が高い。
日本は輸出基地としては最悪の環境下にあり、基幹部分競争力のある部分)を除き、日本で生産を続けるメリットはまったくなくなってしまっている。

注)円高になると輸出産業は今にも倒産しそうなことを言うが、実際は海外生産のウェイトを増やしたり、海外からの部品調達を増やしたりして対応している。
今本気で政府に泣き言を言っているような企業は倒産するのが当然の企業としかいいようがない。

 なお、円高対応については以下の記事も参照されたい
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/2384.html

 

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評論 日本の経済 為替相場」カテゴリの記事

コメント

企業存続のために、海外に生産拠点を移すと、結局のところ、誰が得をするのでしょう?

企業の売上が増えても、海外の雇用が増えるだけで、日本人への還元は減る一方なのでは、と。

(山崎)企業はそれ自体で生き残りを図ろうとしますし、国籍についても大企業になればなるほど無国籍になります。
したがって国家としてはこうした企業を呼び込むための方策が必要で、今は国家が企業を選んでいるのではなく、企業が国家を選んでいるのです。
もし日本で雇用を確保したいのならば、企業誘致に奔走する必要があり、企業に対してできるだけのメリットを提供することが雇用創出の条件になります。

投稿: ふくだ | 2011年9月 9日 (金) 18時56分

輸出企業の場合、輸出で儲けた部分に税金がかからないと聞いたことがあります。
それが本当なら、輸出企業を日本に誘致しても、それほど日本にとってのメリットが無いように思います。

グローバル企業に肩入れするよりは、地産地消型の企業を支援する方が良いと思うのですが...

(山崎)税金問題は複雑ですが、税金がかからないといわれる部分は消費税のことで法人税ではありません。
消費税は国内で消費する人にかかる税金なので、輸出品にはかからないのです。
問題になったのは輸出戻し税のことで、トヨタが最終的に輸出した自動車について、納入業者に支払った消費税の還付を受けたものです。

詳細は以下のブログを見てください。なお以下のブログではトヨタに還付するのは間違いだと述べていますが、消費税分を含めてトヨタは納入業者に支払いをしていますので、私は税体系上問題ないと思っています。http://sun.ap.teacup.com/souun/1256.html

投稿: ふくだ | 2011年9月10日 (土) 16時45分

すみません、輸出戻し税のこと、理解できていませんでした。
ご指摘の通り、トヨタへの還付で問題ないと思います。

無知で申し訳ないのですが、海外で得た利益に対する法人税は、円建てで納められているのでしょうか?
この場合、円高になるほど、法人税が下がるような気がするのですが。

(山崎)海外で得た所得も円建てにして申請しなくてはなりません。円建てにするときの相場は収入を得たときの相場を採用するのが基本です。
円高になるか円安になるかは事前には分からないので、そのときの相場を採用する以外に方法はないのです。

投稿: ふくだ | 2011年9月11日 (日) 09時53分

輸出で稼いでいる大企業が、為替介入しろと、うるさいですが、円高になると、利益を減らすか、売価を上げるかの二択になって、その企業の利益や売上への影響は大きいことは分かります。

でも、円高になる分、海外から仕入れる材料は安くなるし、支払う消費税も安くなるなら、トータルで見て、本当に大損しているのか、ということが、よく分かりません。

親企業も子企業も、中国などに生産拠点をシフトしてますし、どうも円高で大損しているようには思えないのです。

(山崎)輸出産業が円高是正を訴えるのは一つのジェスチャーです。大企業は基本的に円高対応は終わっており、日本での生産が赤字になると中国や東南アジアでの生産を増やして対応しています。
本当に困るのは出遅れた中小企業ですが、ここも日本政府を見限って韓国等に進出しつつあります。
円安になれば日本での経営が楽ですので、常に円高是正を唱えますが、本音ではそれは無駄だと企業経営者は悟っています。

投稿: ふくだ | 2011年9月11日 (日) 17時01分

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