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(23.9.29) プロジェクトWISDOM 世界の知性が泣いている ドル凋落の危機

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 24日に放送されたプロジェクトWISDOMには笑ってしまった。なんともタイミングが悪いのだ。
ここ数日ギリシャの債務問題でEUがユーロを守れるか否かの瀬戸際に立たされているときに、ユーロとは関係ない「ドル凋落の危機 そして日本は」をテーマに世界の知性を集めたのだから、NHKもやきが回ったのかと思ってしまった。

 確かにアメリカ経済が危機にたたされていることは事実で、イラク・アフガン戦争による戦費の増大とリーマン・ショックによる財政・金融出動でアメリカの財政赤字がGDPの100%に達している(日本は200%だからさらに悪)。

 失業率も9%台に高止まりして、番組では元メリル・リンチの部長が失職して再就職は電気店の販売員になっていた。
株も冷蔵庫も売ることには変わりがない」と本人は言っていたが本音ではないだろう。
世帯所得も2000年の73千ドル約550万円)から2010年は67千ドル約500万)に落ち、消費が低迷して日本で言う100円ショップ99セントショップ)が大繁盛していると言う。

 こうした状況を見てとうとう格付会社のS&Pがアメリカ国債の格付を最上位から1ランク落してしまい、さらに今後の見込みもネガティブと評価している。

 番組ではS&Pの引下げに伴って世界経済に衝撃が走り、世界各国の株価の大暴落が発生したと紹介していたがこれは違う。
株の大暴落はアメリカ国債の評価が下がったからではなく、ギリシャの債務危機が再び顕在化したからだ。
今回の危機はアメリカ発ではなくヨーロッパ発であり、アメリカの財政再建策ではなくEUがギリシャ支援に適切な措置を講じない限り解決しない。

 それは為替の動向を見ても明らかでドルは円以外の通貨に対して上昇しており、ユーロの低下が著しい。
この通貨の動きは市場が資金をユーロや新興国の株式市場やコモディティ市場から逃げ出してアメリカ国債や日本国債に資金を移動させていることの裏返しである。
実際問題としてアメリカ国債は市場から信任されている。

 今回の知性はいつものフランスのジャック・アタリ氏とアメリカからは経済学者のディーン・ベーカー氏、そして日本からは辛口経済学者の浜矩子氏が参加していた。
他にイギリスのパオラ・スバッキ氏、アメリカのアリシア・オガワ氏が参加していたが、残念ながら世界の知性とはいいがたい)。

 さっそく界経済の危機の原因について、ベーカー氏アタリ氏のやりあったが、ベーカー氏「ユーロ危機をEUが抑えることができれば、第二のリーマンショックが起こることはない。アメリカは基軸通貨国だから、金融緩和をおこなうことでドル安を誘導し貿易収支を黒字化することができれば、経済は上向く。
最も成長率は1%程度の低成長になるだろう
」と説明していた。

 一方アタリ氏は「ユーロの問題は大きな問題ではなく、ギリシャ経済はEUのほんの一部の経済でしかない。EU 全体で見ると債務はゼロであり非常に健全でアメリカの10兆ドル(約760兆円)の債務とは大違いだ。
アメリカはインフラ面での整備で問題があり、飛行場や道路が古いままでまた初等教育が崩壊の危機にある。
 
 そして特に問題なのは富の偏在化であって、富めるものと貧しいものとの富の格差の是正が是非とも必要だ。そうしたアメリカの取り組みがなければアメリカ発の危機は免れることができない
」と言っていた。

 ベーカー氏はEUの責任を追及し、アタリ氏はアメリカの責任を追及していたが、現在の危機はユーロ危機であるからベーカー氏の方に分がある。
これに対し浜矩子氏はいつものように口をへの字にまげて「このメルトダウンまじかな時期に、責任問題云々を行っている場合でなく、世界中が協力して対処すべきだ」と言っていたが具体的な処方箋はよく分からなかった。

 浜矩子氏が真骨頂を発揮したのは、司会のアナウンサーが「円高と日本の影響」について話題を転じたときで、「世界の知性を集めているのだから、円高の影響について云々するようなレベルの低い討論はやめて、今後世界各国がどうしたらよいかを考えるべきだ」と言い放った時だ。

 実際私も「円高=日本の経済危機」という図式にはうんざりしていた。
確かに円高になれば輸出産業にとって厳しいのは分かるが、それは同時に輸入産業にとってはわが世の春を迎えることだし、金融業にとってはM&Aを仕掛ける絶好の機会になる。それに海外から労働者を導入すれば外国人労働者は自国に帰れば信じられないような優雅な暮らしができるのだから喜んで働き手になる。
いくらでも対応策が考えられるのに、相も変わらず日本経済の危機論では、知性も話すのが嫌になるだろう。

 それでもベーカー氏が「円高も徐々に進むのであれば問題なく、2008年にもこうした状況があった。いまは円に資金が集中しているが中国が元の自由化を行えば資金は円ではなく元に向かうだろう」と指摘していたが、これは正しい指摘だ。
円に資金が集まって円高になっているのは他に自由に売買できる適切な通貨がないからであって、本来なら元が買われてしかるべき状況だ。

 今回のプロジェクトWISDOMは明らかに失敗だったと思う。
テーマがそのときの経済状況を反映しておらず、世界がユーロ崩壊に注目している時に、アメリカのドルの凋落を話題にしては時期を失しているし、浜矩子氏が言うように「円高の日本経済に対する影響」などは世界の知性が話し合う内容ではない(日本の実務者レベルの話題に過ぎない)。

 円高の影響などはすでに誰でも知っていることで、知性に問うのであればこうした状況下で世界の中の日本としては
いかに対処すべきかと問うべきだ(日本だけが助かると言うような小さなテーマは知性向きでない)。

 NHKが間違ったのは「円高=日本の経済危機」と言う図式から抜け出せず、相もかわらず危機意識をあおることを目的に設問を構成していたからだ。
これでは浜矩子氏ならずとも「NHKはもう少し勉強をして世界経済の現状を把握し、日本経済だけに特化した狭い見方をやめてもらいたい」と思うのは当然だろう

なお、過去のプロジェクトWISDOMの記事は以下参照

http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/nhk_4/index.html
 

 

 

 

 



 

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