(23.9.25) ユーロはルビコン川を渡れるか? ユーロ崩壊か財政統合かの瀬戸際!!
とうとうヨーロッパ経済は瀬戸際まで追いつめられてしまった。
G20(主要20カ国・地域財務省・中央銀行総裁会議)は22日開催され、悲鳴とも言える緊急声明が出されたが実際は何も決められなかった。
今回の会合では① 新興国がEU諸国の国債の買い支えを具体的に行うか、そして② EUが欧州金融安定化基金を拡充して危機に対処できる体制を取れるか焦点だったが、いづれも声明レベルであり、具体的な行動をとろうとしなかったからである。
「こりゃ、駄目だ。ギリシャ危機は深まるばかりで、次はイタリアとスペインだ」
市場はEUを見放しユーロのたたき売りが始まり、対円で102円まで値下がりし、ヨーロッパの株価はどこまで下がるか分からない状況になっている。
当のギリシャ危機対応についても7月に決めた第2次追加支援については加盟国全員の承認が必要で、10月10日までに承認を目指しているものの、ドイツやオランダは国内に反対の動きがある。
それに10月の第一次支援の80億ユーロの資金繰りについても、ギリシャが財政再建の約束を守っていない以上融資もできない。
注)第一次支援の金額は1100億ユーロ(約11兆円)だったが、これでは不足するためさらに第二次として1090億ユーロ(約12兆円)の支援をすることになった。
ギリシャは第一次支援の11年10月分、80億ユーロの支援を受けるため、公務員3万人の一時休職を表明したが、いつものように実施は危ぶまれる。
ギリシャはEUと約束した財政再建策をほとんど守っていないが、実は守れないのだ。
公務員の削減や増税はそれだけで消費活動を冷え込ませてしまい、税収が減少する。
そのため経済は縮小し、緊縮財政を行えば行うほど財政が赤字になるのだからギリシャ政府としてはやりようがない。
「もういい、煮ても焼いても好きにしてくれ」居直ってしまった。
注)ギリシャ政府は国民が緊縮財政策に同意するか、ユーロから離脱をするかの国民投票を行うことも検討している。
実際は財政再建の手段は緊縮財政だけでは無理で、金融政策と連動させなければならない。
たとえばアジア危機で倒産した韓国では為替の切り下げで輸出を増やし、劇的な復活をして今では日本企業をおびやかしている。
通常の国家ではこの為替切り下げが最も有効な手段となるが(日本でも倒産すればこの手段を使う)、ギリシャはこれができない。
ユーロ加盟国の金融政策はECB(欧州中央銀行)が一元的に所管しているから、ギリシャ一国のために金融緩和を行ったり、為替の切り下げをすることができないからだ。
ギリシャのジレンマ(実はイタリアやスペインも同じ)は深い。
金融政策の手段がないため財政政策だけしか使用できず、一方緊縮財政はGDPを傾向的に減少させ、税収の落ち込みにより財政赤字は増大する。
緊縮財政をすればするほど財政再建から遠のいている。
注)ただしギリシャ人はほとんど脱税の天才と言っていいような人たちで、いくら所得税や消費税を上げても実質的な増税はまったくできない。
元々税収を上げることなど不可能なのだ。
結局は欧州単一通貨にした金融政策だけでなく、各国の財政政策も欧州均一にしなければユーロ圏全体としては危機を乗り切ることはできない。
はたして財政政策の統合と言うルビコン川を渡ることができるだろうか。
そうなれば国と言う単位を止めてユーロという拡大した地域連合を作り上げ、今のドイツやフランスがアメリカの州になる。
だがしかしこれは大変な事業だ。
注)たとえば日本と韓国が財政と金融を統合してしまうのと同じだから、税制一つ統一するのだって大変だ。
私の予想は結局は欧州は統合よりも分裂を志向するのではないかと思っている。
「あんな遊び人ばかりで、脱税することばかり考えているギリシャとの統合なんて真っ平だ。統合したらあいつらの失業保険をまかなうために税金を納めることになる」
とりあえずギリシャをユーロから追い出して、財政赤字をGDPの3%以内に維持できる国だけでユーロを守っていこうとするだろう。
1999年のユーロ導入から12年、通貨統合に疲れてしまったEUは、財政統合というルビコン川を目指すことなく分裂する方向に舵を切りそうだ。
なお過去のギリシャ経済に関する記事は以下のカテゴリーの中に入っています。
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44468201/index.html
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