(23.9.18) NHKスペシャル 生活保護3兆円の衝撃 生活保護が食い物にされる
NHKが16日に放送したNHKスペシャル「生活保護3兆円の衝撃」は日本の現在のありようが明らかに曲がり角に来ており、はっきり言えば間違っていることを如実に示していた。
この放送で訴えたかったことは以下の通りである。
① 本来生活保護を必要としない人が生活保護の受給者になり、半永久的にこの立場を維持しようとしている
② 闇社会がこの生活保護制度を利用して資金源にしており、また受給者自身も闇社会と結託している
③ 自治体はこの状況に悲鳴をあげているが、現状は有効な手段がとれていない
現在の生活保護受給者は203万人で、年間の生活保護費は3兆4千億円になっている。
一方日本の一年間の税収は41兆円だから、約8%が生活保護費に消えていることになる。
特にここ2年間で生活保護者は40万人増加しているが、その理由は厚生労働省が「稼動能力があることをもって保護の要件を欠くものでない」との通達を出したためで、それまでは稼動能力のある人は生活保護の対象ではなかった。
厚生労働省がこうした通達を出したのはリーマン・ショックで日本の産業界がそれまで雇っていた派遣労働者の馘首を大々的に行ったため、政府としてセーフティーネットを広げる必要があったからだが、その効果が効き過ぎた。
確かに40万人にのぼる新規の生活保護者がこの恩恵によくしたが、そのうちの約7割が20歳台から50歳台までのいわゆる生産人口で、こうした人たちがこの生活保護の恩恵を受けた後ほとんど働くなってしまったという。
理由はなおも就職事情が厳しいことと、この生活保護費で十分生活ができることに気づいたからだという。1ヶ月の生活保護費は大体12万円前後なのだが、この数字は最低賃金(1時間当たり779円)で1ヶ月働く金額にほぼ等しい。
「1ヶ月働いても、遊んでいても同じなら、働かない方がいいや。それに12万あれば生きていける」
憲法では国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障している。その金額が生活保護費12万前後と言うことになっている。
政府や自治体に有余る資金があり、いくら生活保護者が増えようが問題がないのであれば特に目鯨を立てる必要はないが、実態は火の車だ。
日本全体としても自治体レベルでも財政はほとんど崩壊している。
特に大阪市は日本で最も多い生活保護者16万人を抱えており、予算の17%がこの生活保護費になってしまった。
あまりの増大に困惑した大阪市はケースワーカーを800人から1000人に増員して働ける人には就職斡旋を行っているがほとんど効果がなく、就職斡旋を行った7258人のうち実際に就業したのは164人と、全体の2%に過ぎなかった。
実は大阪市の場合は特に問題が複雑で、新規に生活保護を申請した人のかなりの部分が闇社会、特に山口組系の暴力団と関係していると言う。
暴力団関係者の関わり方は、路上生活者を見つけると支援団体と称する団体が生活保護の申請を行い、用意したアパートに住まわせて住居費等を天引きする方法で、映像に出た男性は「13万円のうち10万円を天引きされて残るのは3万円だ」と証言していた。
この人は「それでも路上生活よりはマシだ」と言っていたが、4畳半程度の部屋に液晶テレビがあったし、冷蔵庫もあったから確かにそうだろうと思われた。
これは闇社会の貧困者を対象にした生活保護費のピンハネビジネスである。
しかし問題はこれだけにとどまらない。
さらに問題なのは生活保護者の医療費は無料なのだが、このことが大阪市の医療費の増大にさらに拍車をかけていた。
これは前にNHKで放映されたので見た人もいると思うが、大阪市には生活保護者を対象とした病院がいくつかあり、ここにかかるとありとあらゆる薬を大量に出してくれる。
「病院は要らない薬でも出せば儲かるからだ」と生活保護者の一人が言っていた。
そしてこのうちの一部(特に睡眠導入剤)は暴力団が購入してくれるし、残った薬は路上で生活保護者が販売をしていた。
この薬を売ることで毎月約2万円程度の収入があるそうだ。
注)放送ではそれ以外にも生活保護者を集めて山口組系暴力団が闇の賭博場を開設して、生活保護費を巻き上げていた。
大阪市では生活保護制度を悪用し、闇社会や一部の病院や生活保護者自身も生活保護制度を食いものにして生きている。
これがどの程度の国や自治体の支出になるかと言うと、30歳から65歳まで生活保護で生活し続けると仮定し、そうでなかった場合に比較して約5000万円がかかるのだと言う。
注)生活保護費 3500万円 + 納めたであろう税金 1500万円 = 5000万円
300万人がこれを受給すると仮定すると150兆円になる。
なんてことはない、生活保護制度のかなりの部分が闇社会を育てるために支出されており、このままではますます闇社会が肥え太っていく構造なのだと言う。
さすがに地方自治体もこのまま放っておくわけにはいかなくなって、政令都市19の市長が集まって共同声明を出した。
① 生活保護者には一定期間ボランティア活動をさせて、その間働く意思の確認を行う
② 働く意思がなく生活保護費で一生暮らそうとしているものや、暴力団関連のものには支給を停止する
実際にボランティアをさせてみると言う方法はなかなかのアイデアだ。私は毎日四季の道の清掃活動やペンキ塗りや落書き消しや植栽の手入れを行っているが、こうした活動を生活保護者にしてもらえば街が瞬く間に美しくなっていく。
私は良いアイデアと思ったが、この提言にも生活保護者を支援する会が反対していた。
私の目から見ると今の日本は崩壊前夜のローマ帝国のように見える。
当時市民権を得たローマ市民はパンとサーカス(食料と娯楽)が帝国から無料で提供されることを約束され、一方市民の義務である軍務はガリアあたりの野蛮人の仕事として逃れていた。
政府はローマ市民をこうして無料で養っていたが(生活保護費を支払っていたが)、帝国の領土が増えなくなり、税収も伸びなかったため軍事費にも事欠くようになってしまった。
前線の戦士は給与がもらえないので自分で生活の糧を求め士気は低下し、そしてゲルマン人の侵攻を誰も食い止めることができなかった。しかしそうした状況下でもローマ市民は政府にパンとサーカスを求め続けていたと言う。
なお暴力団が生活保護者を利用していわゆる向精神薬を入手する手口は以下参照
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/221130-atoz-ed9.html
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コメント
働きたいのに働けない人達もいるのでしょうから、昔みたく国鉄・電電公社のような国営企業を作って働いてもらう、という手もあると思うのですが。
そんなことをするよりは、生活保護費を支払う、というのが国の方針ですよね。
(山崎)国が無用な仕事を作るというのは社会主義国が行った実験でどこでも失敗しています(親方日の丸で遊ぶだけです)。
それよりも新たな産業の育成の環境を整えることが必要ですが、残念ながら日本では成功していません。
結果的に国内に仕事がない労働者は国外に活路を目指して働きにいくより仕方がないのです(どこの国でもそうしています)。
今まで日本人は日本国内にいれば安全で冒険心を失ってきましたがそうした時代が終わったのです。
投稿: ふくだ | 2011年9月18日 (日) 22時36分
「こんなことなら、公共工事でもしてくれた方がまだマシじゃないか!」
これが率直な感想です。
路上で堂々と「ヱビスビール」を飲む人々を見て
「自分は誕生日しかヱビスが飲めないのに、生活保護費で贅沢なんてひどいじゃないか!」と
ギリシャ支援に反対するドイツ国民の気持ちが分かりました。
一方で番組編集に「偏り」を感じざる得ません。
本当に必要な人に役立っている取材も行うべきと思いました。
投稿: 秋月 | 2011年9月19日 (月) 11時20分
政府が、新成長戦略なるものを発表していますが、本気でやる気があるのなら、国営事業としてやるべきだと思います。
国鉄も郵便局も、社会主義だから作ったわけではないでしょう?
新規産業の黎明期は、民間企業が始めるにはリスクが高いので、国がその産業で雇用創出したいのなら、当初は国営で始めて、軌道に乗せられたら民間企業にする、という試みがあって良くないですか?
(山崎)こうした状況下ではあらゆることをためすのが良いと思います。国でしかできないことは当然ありますからそうした取り組みは有効でしょう。
今はこれだなんていわずに試行錯誤を繰り返すのが良いと思います。
投稿: ふくだ | 2011年9月19日 (月) 12時54分
私もこの番組はチラ見していたのですが、社会美化のボランティアの提言に生活保護者を支援する会が反対していたのは意外でした。どういう理由なんでしょうね?格差意識が余計に広がりかねないから?
北欧では強制受講や強制就労もあるそうです。
編集に関しては、学者のコメントが編集にとって都合良く「切り取り」になっていて、出演していた学者がblogでがっくりきた、と述べてました。
http://news.livedoor.com/article/detail/5869951/
(山崎)生活保護者のセグメンテーションの問題だと私は理解しました。自治体は「本来生活保護を必要とする人と、生活保護を食い物にしようとする人をこのボランティアでふるいわけしよう」と言うことですが、場合によっては生活保護を必要とする人まで生活保護を削られると恐れているのだと思います。
投稿: 横田 | 2011年9月23日 (金) 02時30分