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(23.8.4) 円高と日本輸出産業の崩壊 

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マッスルさん 撮影 山崎 編集

 急激な円高はアメリカの債務上限枠問題が解決すれば収まるかと思ったら一向に納まる気配はない。
今日(3日)は77円台で推移しているが、これは国内の輸出産業が想定している平均的円相場の82円より5円も円高だ。

 トヨタなどは1円の円高で年間300億円の営業利益が飛ぶといわれているのだから、これだけでも1500億円の営業利益が失われたことになる。
トヨタはかつてのような2兆円を越す営業利益を確保していた企業ではなく、11年度は5000億円程度の営業利益しか稼げない企業だから、1500億円は痛い。

 しかもこれはトヨタだけでなく日本の輸出産業全体にいえることで、「もはや企業努力の限界を越えた」と政府・日銀に泣きを入れている。
政府・日銀も「現在の円相場は実力より高く評価され過ぎている」と為替介入をちらつかせているが、実際はアメリカやEUと協調した為替介入は不可能になっている。

 今年の3月、東日本大震災の直後は各国と協調して円売り・ドル買いの介入したが、それは原因が日本を襲った未曾有の自然災害だったからで、各国の人道的支援と言う側面が強い。
しかし今回の円高はアメリカの景気が減速していること、さらにオバマ政権は債務上限枠を共和党にようやく認めてもらった見返りに、国庫債務の削減を約束させられており、政府の手足が縛られた取り決め(したがって財政的に景気対策を打てない)になっていることに原因がある。
結局オバマ政権はFRBに金融緩和を依頼する以外に手はなく、そうなればドル安は今後とも続くとの読みだ。

注)金融政策とは簡単に言ってしまえばお札の増刷で、ドルを傾向的に安くする政策といえる。

 一方ヨーロッパも問題山積みで、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドEUIMFが金融支援をしているものの返済の目当てはまったく立っておらず、ギリシャのようにさらに追加の金融支援を要請するありさまで泥沼に陥ってきた。
したがってEUも金融緩和策を継続せざるを得ず、ドルと同じようにユーロも減価していく。

 なぜアメリカとEUの景気が立ち直れないかの根本的な理由は、リーマン・ショックを引き起こしたサブプライムローン債権金融機関にとっては債権になり、評価方法を変えて隠している)の償却ができていないからで、これは日本の失われた10年とまったく同じだ。
なんてことはない、日本はバブル崩壊後10年以上たって竹中平蔵氏の辣腕によってようやく不良債権の処理が済んだが、アメリカもEUもそれをそっと避けてきたのだから、今からが失われた10年だ。

注)日本の不良債権処理を当時のアメリカ政府は「遅すぎて少なすぎる」と非難してきたが、今アメリカとEUがこの「遅すぎて少なすぎる」ジレンマに落ち込んでいる。
これを日本経済シンドロームと言うが、そのうちにアメリカ経済シンドロームとう言葉が必要になるだろう。

 だからいくら政府・日銀が「円高水準は実力以上に評価されている」といっても市場は聞く耳を持たない。
今後とも円は円高に振れ、日本輸出産業は日本での生産で(日本でしかできない特別なものを除けば)まったく利益が上がらなくなってくる。
すでに多くの企業が日本での生産を諦め海外に進出しており、トヨタのように日本での自動車生産300万台死守と言っている企業は奇特な企業になっている。

注)トヨタは日本で生産するとしても今後は部品を海外から調達する計画であり、日本の部品工場も海外進出を余儀なくされている。

 何度も同じことを言って恐縮なのだが、日本の輸出産業が日本で生産する基盤は失われた。それを基本的な認識にしない限りどのような対策を打っても無駄だ。
企業が生き残るには需要がありかつ通貨が安くそこそこインフラが整備された国に生産拠点を移すか、この円高で相対的に安くなった外国企業を買収する以外に生き残る道はない。

 企業そのものは世界企業として脱皮していけば生き残れるが、その分日本国内の職場は失われる。
したがって新大卒や新高卒の職場はますます狭められていくので、多くの新人(有名大学卒で国内産業に就職できる人以外)はこれも世界に出て行く以外に職を求めることは不可能だ。

注)マクドナルドの店員のように自給1000円未満の職場はあるが、学生アルバイト以上の収入を得ることは難しい。

 本来日本に輸出産業に代わる職場(円高であればドル高時代のアメリカのように通常は金融業が隆盛になる)ができれば問題が解決するが、残念ながらそうした職場が確保される見込みはない。
経済と言う面では日本経済はジリ貧(企業としては拡大がありうる)になることは確かで、静かに衰亡していくというのが実態だろう。

注)なぜ日本の金融業が斜陽産業かというと、国債の購入を政府・日銀から強制されており、いわば第二の税金(利息は払うが実際は強制されているので税金と同じ)徴収機関になっているからで、税務署となんら変わらないから


なお、この記事と関連する記事は以下の通り
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-4a0a.html

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評論 日本の経済 為替相場」カテゴリの記事

コメント

日本の金融業が発達しないことに不満をお持ちのようですが、実需のない産業は、バブルなり投機なりサブプライムなり、というように、良いイメージがありません。

健全な金融業の発達とはどういうものか、教えていただけないでしょうか?

(山崎)通貨は国家が販売しているひとつの商品だからです。国家が売っているという意味ではタバコと同じです。この通貨が円高になるということは世界が円を求めているということで、いわばヒット商品のようなものです。
日本の金融業はこの円を大量に持っていますので、しばらく前のトヨタのように販売力抜群ということになります。
通常金融業を自由にしていると通貨を最もたかく購入する人に売りつけますから(利益率が高いところに流れる)、莫大な利益が上がります。
しかし、金融業を規制して最も安い商品である国債を購入させますと利益率はほとんど上がりません。

金融業を虚業という視点で見るのではなく、通貨の販売をしている企業として捕らえるとその実体がわかってきます。

投稿: ふくだ | 2011年8月 4日 (木) 22時11分

回答ありがとうございます。

円という商品を販売して儲ける、とのことですが、それは相場での取引なので、取引手数料しか儲からないような気がします。

円という商品を販売して、そんなに儲かるんでしょうか?

(山崎)本件については又別途ブログに記載します。

投稿: ふくだ | 2011年8月 5日 (金) 18時52分

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