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(23.8.3) ワールド・ウェーブ インドとのEPA(経済連携協定)の発効 日本は韓国に勝てるか

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撮影 マッスルさん 山崎編集

 昨年10月に調印したインドとのEPAがこの8月1日から正式に発効された。
NHKのワールド・ウェーブ・トゥナイトではこれを記念して特集を組んでおり、河野アンカーキャスターと言う言葉でなくアンカーと言う言葉を使っている)がインドに出向いて中継を行っていた。

注)EPAとはFTA(自由貿易協定)より概念が広く、FTA以外に人の交流の促進や、投資環境の整備(互いに投資しやすくする法制度の整備等)を含めた包括的な協定。

 インドは中国の次の経済大国と期待されている巨大市場だが、ここは韓国企業が戦略的に進出しており、サムスン、LG電子といった韓国企業の独壇場になっている。

 インドと日本は政治的には共通の敵中国に追い詰められており、互いに連携して中国を封じ込めないとインドはインド洋を中国の内海にされ、一方日本は尖閣列島から追い出されてしまう。
そのため「日本とインドは互いに手を携えて中国と対抗しよう」と手を握ったものの、こと経済協力となると韓国に大きく水をあけられている
韓国は日本より1年も前にインドとFTA(自由貿易協定)を締結しており、日本が関税に苦しんでいる間にシェアを大幅に伸ばしてきた。

 番組では日本が得意としていたシャベルカーなどの建設機械の分野で日立建機が韓国の現代建機に抜かされそうになっており、現地の責任者が「EPAの発効で関税がなくなればようやく現代建機と戦える」と胸をなぜ下ろしたシーンを紹介していた。

 又家電分野ではここも安さとインド市場では十分な品質で日本製品を圧倒しており、たとえばエアコンの韓国メーカーのシェアは50%に達している。
最も日本メーカーも手をこまねいているだけでなく、パナソニックの現地責任者がインド人好みのクーラーを作るために現地調査を熱心に行い、ヒット商品を作ることに成功していた事例が紹介されていた。

 インドでは日本仕様と異なり、本質的な部分がしっかりしていれば細かなサービスは不要な商品がよく売れるそうで、これを日本の営業マンは「こだわりと割り切り」と称していた。
たとえばクーラーであれば冷やす能力が高く、音が小さく安全であればよく、リモコン操作や風向きを変えるような細かな仕様は必要ないのだそうだ。

 なぜ日本のメーカーがインドに注目するかと言うと、ここは12億人の人口の中で約1億5千万人(日本の人口より多いが中間層と言われる日本人と同じような生活レベルの人々であり、今後この中間層が急拡大するからだ。
ニューデリー郊外のグルガオンと言う町を取材していたが、ちょうど日本の幕張のような町並みになっており、次々の高層住宅が建設されていた。

 そのうちの一つを河野アンカーが紹介していたが、280㎡のマンションが約6000万円だと聞いてびっくりしてしまった。
私が20年前に京王沿線の堀の内と言う場所で手当てしようとしたマンションが93㎡で6800万円だったからである。
そんなに広くて安いのならインドに住もうかしら」思わずそう思ったほどだ。

 最も河野アンカーの紹介の趣旨はこうしたマンションが次々に売られて、すでに70%の契約率になっており、インド中間層の購買力は確実に上がっているという説明のための訪問だった。
インド人の生活レベルは確実に上がっており、一方08年の段階で日本の最大の投資先は中国を抜いてインドになっているのだそうだが、まだまだ韓国企業には水をあけられている。

注)リーマン・ショック後韓国のウォンは対円相場で約40%程度の値下がりをしており、日本製品は韓国製品にまったく太刀打ちできなくなっている。

 しかしインドの中間層は今後ますます増加するし、中国と異なり人口構造は若者が中心なので、韓国に伍して戦えば非常に有望な市場だ。
何回も言って恐縮だが、インドは戦略的には日本のベストパートナーであり、日本に対する親日感はとても強く、フレンドリーだ。

注)日本は第2次世界大戦中、インド独立運動を指導していたチャンドラ・ボースを支援した経緯がある。

 日本製造業が総力を挙げてインド進出を図り、特に鉄道や道路部門のインフラ整備に協力しながら、インド経済の発展に資すれば、政治的にも経済的にもインド市場が日本の最重要拠点になることだけは確かだ。

なおインド経済については以下の記事を参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-998e.html

http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/cat41656754/index.html

 

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評論 世界経済 インド経済」カテゴリの記事

コメント

① このニュースを見て思ったのですが、自由貿易で、インド側にはどのようなメリットがあるのか、思いつきませんでした。
インド側のメリットは、何だと思われますか?

② それと、円高が進んでいますが、投機の為替取引を防ぐために、利益ではなく、取引に税金をかけたらどうか、と思うのですが、このような策は可能だと思われますか?

(山崎)
① インドは長い間国内産業を保護する方針を採ってきて貿易の自由化には消極的でした。したがって今回インドが日本に求めたものも、貿易の自由化を許す代わりに日本からの直接投資を期待したものです。
特に日本の政府開発援助(ODA)の最大の供与先はインドでデリー高速輸送システム、コルカタ東西地下鉄、ハイデラバード外環道路、タミルナドゥ州都市インフラ整備計画、ホゲナカル上水道整備等が行われています。

② 貿易と為替の自由化は戦後日本の経済政策の柱でWTO等で多極的な取り決めがされ、さらに最近ではこのEPAのような2国間協定で決められています。
とくに為替の自由化はアメリカから強く求められ、日本経済の成長に伴って自由化に応じてきたものです。
したがってこの取り決めに違反することは協定違反になり、アメリカからWTOへの提訴や実質的な対抗措置をとられることになります。

さらに言うと日本で為替取引に税金がかけられると、個人も法人も為替取引を日本以外の場所で行おうとします。
たとえばアメリカに旅行する場合は通貨の交換は成田ではなくニューヨークで行うという具合で、自由な市場と不自由な市場が共存している場合は、自由な市場が優先されます。
東京市場が実質的に見捨てられるということです。

投稿: ふくだ | 2011年8月 3日 (水) 21時22分

丁寧な回答ありがとうございました。

ODAは、先進国の押し売りで、投資の利息支払いで、がっぽり取られる、という話を聞いたことがありますけど、どれほどメリットがあるんでしょうかね、実際。

日本は、もう成熟したんだから、外国人投資家の投資に頼る必要もないような気もするし、破綻しそうな国に、いつまで支配されないといけないのか、よく分からないです。

投稿: ふくだ | 2011年8月 4日 (木) 21時10分

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