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(23.8.2) ノルウェーの深い霧  右翼テロ事件

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 ヨーロッパの深部で右翼の台頭が始まっている。
22日、ノルウェーオスロとオスロ郊外の孤島で発生した爆発・銃撃事件80名近くの犠牲者が出たが、犯人は右翼思想の青年だった。

 ブレイビグと言う32歳キリスト教原理主義者を名乗るこの青年は、オスロの首相府の近くで自動車に仕掛けた爆弾を爆発させ、さらにそこから自動車で1時間程度離れた孤島で開催されていた与党労働党(移民政策に寛容な立場をとっている)の青少年キャンプを襲って、1時間あまり銃撃を繰りかえした。

 犯人は自らのブログに犯行をにおわせる書き込みを数年にわたって実施してきており、計画的に爆弾を製造し、拳銃・ライフル・ショットガンは合法的に所持していたという。
日本では銃の保持は禁止されているので、なぜノルウェーのような平和な国でライフルやショットガンが保持できるのか不思議だが、世界的な常識では日本の方が特殊なのかもしれない。

注)なおノルウェー警察はアルカイダ等のイスラム原理主義者はマークしていたが、キリスト教原理主義者のマークはしていなかったので、ブレイビグは自由に爆弾製造ができた。

 ノルウェーは小さな国だが豊かな国だ。国土は日本と同じぐらいの広さで、人口は北海道程度の5百万人弱で、10年度の一人当たりのGDPは世界第4位である。
もっぱら北海の石油とガス、それに漁業が主産業で、リーマン・ショックで経済はマイナスの落ち込んでいたが11年度は3%程度の経済成長が見込まれていた。
失業率は3%前後だから他の西欧諸国の10%前後に比べればはるかに安定しており、日本より失業率は低い。

 オスロでは毎年ノーベル平和賞の授与式が行われており、まったく平和な国家とのイメージだったので、そこにヨーロッパでは最大規模のテロが発生したのだから、驚かないほうがおかしい。
なぜ、スペインやイギリスでなくノルウェーにテロが発生したのが?」国民は茫然自失している。

 犯人のブレイビグはイスラム系移民がノルウェー人の職を奪い、キリスト教文明に挑戦していると主張しており、自らを聖戦の騎士と位置づけている。
キリスト教徒とイスラム教徒の戦いの最前線にいると自らは思っており、イスラム移民によって乗っ取られつつあるヨーロッパを救うためのレコンキスタを実施したつもりだ。

 ストルテンベルグ首相は犠牲者に哀悼の意を表し「ノルウェーは小さな国だが誰も我々を爆弾や銃撃で黙らせることはできない」と述べた。
首相は今後とも移民政策については開かれた立場をとると表明したが、こと移民に関する限りヨーロッパ人は段々と非寛容になってきている。

 際立って移民の多いドイツには主としてトルコからの移民が多く住んでおり全人口の20%程度になっているが、他の国でも多くの移民を受け入れており全人口の10%程度の人口になっている国がおおい。
ノルウェーもほぼ10%程度の移民を受け入れてきており、ヨーロッパは伝統的にアフリカとの関係が深くイスラム圏の移民者が多い。

 最近はどこの国でも移民排斥を声高に叫ぶ右翼政党の躍進がすさまじく、ノルウェーの隣のフィンランドではこの4月の選挙で民族主義政党が議席を6倍に伸ばしている。
イギリスもドイツも国内の右派勢力が台頭し、キャメロン首相もメルケル首相も「多文化主義に失敗した」と公言するようになった。

 リーマン・ショック前まではEUは未曾有の好景気を謳歌していたので、イスラム圏からの移民は西欧人が嫌がるダーティー・ワークをしてくれる便利な労働力だった。
しかしリーマン・ショック後状況が一変してしまった。
ユーロ安で輸出産業が好調なドイツを除けば、ヨーロッパではギリシャ・ポルトガル・スペイン・イタリアといった南の国の経済が破綻している。

 まだ余裕の有るドイツとフランスがこうした国の救済に乗り出しているが、次々に出てくる国家破綻をいつまでも救えない。
ヨーロッパ経済に暗雲が立ち込めると安価な便利な労働力だったイスラム教徒に対する目が厳しくなる。
もともとイスラム教徒との間では十字軍の昔からキリスト教徒は鋭く対立してきたし、非合法で西欧に居座っているイスラム教徒も多い。

 今回の事件はアルカイダのようなイスラム原理主義者の犯行ではなく、キリスト教原理主義者の犯行だったことが今までのテロとはまったく異なる。
テロが新たな段階に突入した感じだ。

 ヨーロッパ経済はリーマンショック以降失われた10年に突入しており、EU全体では経済は停滞し、今後ますますキリスト教原理主義者の移民排斥運動がヨーロッパを覆うことは間違いなさそうだ。
こうしてヨーロッパの窓が今静かに閉じられようとしている。

 
 

 

 

 

 

 

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