(23.7.26) ちはら台走友会の奥穂高岳登山と高山病
今年の恒例のちはら台走友会の登山は奥穂高岳だった。走友会のメンバーにはとても登山好きな人がいて、毎年夏山登山を計画してくれる。
「今年は是非、穂高に登ろう。奥穂は日本で3番目に高い山だ!!!」
走友会ではすでに富士山、南アルプス北岳、槍ヶ岳、剣岳等に登っているため、この奥穂が残された日本の高山という事になっていた。
登山ルートは上高地のカッパ橋から岳沢に入り重太郎新道を登って前穂高とつり尾根の分岐点紀美子平に至り(元気な人は荷物をデポして前穂高をピストンし)、その後はつり尾根を経由して奥穂高岳(3190m)山頂に到達し、穂高岳山荘に一泊するコースだった。
そして翌日は唐沢カールに降り、横尾谷のルートを下って再びカッパ橋にいたる登山だ。
このルートは穂高では最もポピュラーなルートであり、私もかつてこの逆コースで2回登山したことがある。また穂高そのものには過去何回も登っているので若干穂高を軽く見てしまった。
「まあ、前穂コースぐらいは簡単に登れるだろう」
しかし前穂に取り付く重太郎新道を登ってみて、驚いてしまった。ここはカモシカが登っていたのを重太郎氏が見ていてこのコースを開拓したのだが、かつては何気なく下っていたと思われるこのコースがとてもタフなのだ。鎖場やはしごが続き剣岳に登ったときと同じぐらい緊張感を強いられた。
今回走友会で登山に参加したメンバーは20名で、うち走友会に登録していないビジターが3名だった。また走友会でも登山経験が少ない人が数人いた。
私は事前に荷物をできるだけ少なくして、目標は7kg以下にするように勧めたのだがこのことが特に登山暦の少ない人に徹底できなかったことは失敗だった。
初日は特に暑くもなく快適な登山日和だったが、重太郎新道を登る頃から男性のSさんが汗を噴出し歩みが極端に遅くなった。イエティの異名を持つ走友会きっての力持ちKさんがSさんのリックを持って登ることにしたのだが、それでもSさんはとても苦しそうだった。
念のためTさんのリックをチェックしてみたが10kg程度は有りそうで、水と食料が明らかに多すぎた。
「これではTさんには荷物が重すぎるな・・・・・・・」
経験の少ない人はどうしても荷物が重くなる。
(前穂の分岐点に到着した頃からSさんは回復基調にあったので、その後は自分で荷物を持ってもらった。Sさんは軽い高山病にかかっていた)
ところが今度は穂高の釣り尾根に出た頃から女性のTさんが苦しみだした。当初は右足の膝を捻挫し、途中から右足を上げることがほとんどできなくなって手で右足を上げて歩いていた。
そして奥穂高岳の頂上の近くで完全に動けなくなってしまった。
私はメンバーの中で相対的に体力のない人10名程度を率いていたのだが、Tさんもそのうちの一人だった。私がTさんを完全サポートすることにしメンバーの力持ちのモッチャンにTさんの荷物を運んでもらい、他のメンバーは先に行ってもらうことにした。
その後Tさんはますます歩行が困難になり、岩にへばりついて盛んに眠たいといい始めた。
典型的な高山病で頭に酸素が十分回らなくなり非常な眠気に襲われる。
しばらく岩陰で寝てもらうことにしたが正直言って途方にくれた。
「救助ヘリか救助隊の要請をしなければならないだろうか・・・・・このままTさんはますます状況が悪化するのではないだろうか・・・・・・・・」
本当に息をしているかチェックしたほどだ。
15分ぐらいたった時に走友会のメンバーで前穂をピストンして追いついてきたイエティさんと会うことができたので、イエティさんと相談してTさんをイエティさんが背負い、私がイエティさんのリックを持って穂高岳山荘までいくことにした。距離にして1時間ぐらいだ。
しかし幸いにTさんは目を覚まし、簡易型酸素ボンベで酸素を吸入した結果歩けるようになった。それでも歩みはとても遅い。
穂高岳山荘の手前で先に行ったメンバーの急報を聞いた長野県警のパトロール隊の方が来てくださり、急峻な標高差50m程度の山小屋に下る坂をローピングして降ろしてくれたときは心底ほっとしたものだ。
あとでTさんのリックをチェックしてみたが水と食料、それと衣類が多く10kg程度は有りそうだった。
「やはり経験の少ない人は心配になってどうしても荷物を重くしてしまうのだ・・・・・・・・・」
私自身は山小屋が整備されている登山で小屋どまりの時は水を入れても6kg程度の荷物しか持っていかない。荷物が軽ければ楽々と登山ができるので水も食料も少なくて済む。
反対に荷物が重いと汗が吹き出るので多くの水が必要になり、疲労感が重なり高山病になってしまう。
3000m程度の山で高山病にかかるとは信じられない気持ちだったが、その人の体力を越えて過重な荷物を持つと高山病になることを今回経験してしまった。
「単に荷物を少なくしろというだけでは駄目で、経験のない人の荷物は事前にチェックしておく必要があったんだ・・・・・・・」深く反省した。
ちはら台走友会の登山日程は土日をフルに利用するため、かなりハードで金曜日の夜出発して早朝から登山を開始する。車中1泊だがバスの中では眠れない人が多い。
睡眠不足、重い荷物を背負った登山、疲労感の蓄積が進むと高山病になってしまうようだ。
登山そのものは大変楽しく全員奥穂高に登ることができたが、反省点が残った。
来年の登山の時は経験不足の人の荷物は事前チェックをして不要なものはバスにおいていくように指導をする必要がありそうだ。
注)かつて見た映画でプラトーンと言うベトナム戦争を扱った映画があった。その1シーンに本国から初年兵が配属されてくるのだが、実際の密林パトロールをする時にベテランの軍曹が初年兵の装備をチェックして不要なものをどんどん捨てていた。
これはフル装備をすると30kg程度になり、ジャングルの戦場では機敏に動けないため標的にされ瞬く間に戦死をしてしまうからだった。
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コメント
今回の登山で荷物の重量に対して
考えが甘かったです。
深く反省してます。
危うく命を落とすところでしたが
皆さまのお陰で命を拾いしました。
次回は自己管理を厳しく行いたいです。
山崎さん
本当にありがとうございました。
投稿: 孝松@走友会 | 2011年7月26日 (火) 14時03分