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(23.7.22) NHK 向田邦子 阿修羅のごとく

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 かみさんが見ていたテレビを覗いたら、昔放送していた向田邦子さんの「阿修羅のごとく」を再放送していた。
この番組が放送されたのは1979年のことだから今から約30年前のテレビドラマである。
とても懐かしかったが筋はすっかり忘れていた。しかしこの番組で使用されたテーマ曲はトルコ軍楽隊の行進曲メフテルで、そのメロディーは忘れることができない。
オスマントルコが最盛期の頃、この曲を聞いた東ヨーロッパの人々は悪魔が来たと恐れおののいたあの曲である。

注)なお、このメロディーをご存知でない方は以下のURLをクリックして聞いてください。
http://www.youtube.com/watch?v=kpOl4kxgD1c


 向田邦子さんはとても精力的な脚本家でかつ作家だったが、1981年に台湾で飛行機事故のために死去した。享年51歳だったから、生きていればさらに多くの脚本や小説を書いたはずだと思うととても残念だ。

 私は多くの向田作品を見ているわけではないが、今回この「阿修羅のごとく」を見て、向田さんの才能に舌を巻いた。人間、それも女性の心の奥に潜む阿修羅)を描いていたが、表面ではおとなしい貞女のような女性が、実際は心の中では阿修羅なのだと言う。

 この物語は竹沢家の両親と4人の娘、およびその亭主や恋人の物語である。男はどちらかと言うと添え物でもっぱら浮気をばかりしているどうしようもない人間として描かれている。
それに対する女性たちの対応は表面は物静かで、心の中に阿修羅像をそっと見出してみせるのだが、芸達者な役者が上手に演じている。
中でも次女巻子役の八千草薫さんがとてもいい。

 八千草さんは日本女性の中でも飛び切り美人だが、この頃が本当に美しかった時期でまじまじと眺めてしまった。カメラワークも女性たちの表情を克明に追っており、心理のあやが分かるような演出だ。

 物語では父親が浮気している場面を目撃した三女滝子(いしだあゆみ)が姉妹全員を招集して父親を糾弾しようと提案するのだが、他の3人はまったく乗り気でない。
長女綱子(加藤浩子)は夫を亡くしていけばなの師匠をしているのだが、顧客の旅館の亭主と浮気している。
次女巻子(八千草薫)の夫(緒方拳)は会社でかなり高い地位らしいが、こちらも浮気しておりそれを巻子はあえて見てみぬふりをしている。
4女の咲子は売れないボクサーと同居しており、それぞれがすねに傷を持つ身だ。

 3女の滝子(いしだあゆみ)だけは、苔むしたような図書館での学芸員をしており、まったく男を寄せ付けないような生活をしている。
だから滝子が興信所に調べさせた写真をみんなに見せても「母親には絶対に知らすな」と言って、心に傷を持っている他の姉妹は相手にしない。

 しかし実際は母親(大路三千緒)は夫(佐分利信)が浮気をしていることを知っていて表面では何事もないように装おっている。
しかし一人になると思わず手に持っているものを障子に向かって投げつけるほど心が病んでいる。

 物語は長女綱子の浮気相手の奥さんが押しかけてきたり、次女のだんなが浮気相手に電話しようとして、間違って妻に「今日時間が取れたので今からあいに行く」と電話したり、父親が浮気相手から別れ話を持ち出されたりして、怖いエピソードが続くので見ていて飽きない。

 女性は表面ではもの静かだが、裏に回ると阿修羅のごとく嫉妬心に燃えているのだ、と言うのが向田邦子さんの脚本だ。
また男は本質的に浮気をするものだという向田さんの認識には思わず笑ってしまった。

 向田邦子さんのこのテレビドラマを見て、すっかり私は向田さんのファンになった。テーマ曲のメフテルも実に効果的だし、八千草薫さんの美しさも堪能できたし、浮気ばかりする男もなかなか愉快だ。

注)なお阿修羅像とは仏教では帝釈天にはむかった悪鬼神と言うことになっている。

 


 

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