(23.7.13) ヨーロッパ経済は火の車 イタリアが火を噴いた
ヨーロッパ経済は火の車だ。とうとうユーロ圏第3位の経済規模を持つイタリアに火の手が上がった。
今まではギリシャ支援で手一杯だったのに、さらにイタリアまでがEUやECB(ヨーロッパ中央銀行)の支援を受けるようではEUもユーロも持たない。
注)EU27カ国の中でユーロには17カ国が加入している。イタリアのユーロ圏でのGDP ウェイトは約17%。GDPに対する債務割合は120%。
特に最大の支援国になるドイツが頭にきておりレスラー財務相は言い放った。
「欧州の高債務国に対する追加支援策は不要だし、イタリアは自ら財政赤字抑制策を実施すると確信している」
もう、ギリシャにもイタリアにも金は出さないという意味だが、それではユーロは立ち行かない。
ドイツは妥協して民間金融機関が保有しているギリシャ国債の期限延長に応じるなら支援しても良いと言い出した。
これに対しフランスはこのギリシャ支援の枠組みの中に、ギリシャ国債を持っている金融機関を含めるよう再提案した。そうしないと金融機関が期限延長に同意しないと思っているからだ。
理由はギリシャ国債を一番持っている金融機関とはフランスの大手金融機関だからだ。
「ここは何とかドイツをなだめてお金持ちに資金を出してもらおう」フランスもせこい。
注)すでにギリシャへは1100億ユーロ(約12兆円)の支援を決めているが、さらに1200億ユーロ(約13兆円)の支援が必要とされている。現在この追加の支援をどのような形で行うかドイツとフランスがもめている。
ギリシャ支援の枠組みが一向に決まらないのを見て、市場は次はイタリアだとターゲットを定めた。イタリアはギリシャの次に国家債務が大きい。
「ギリシャでさえ救えないのなら、イタリアは絶対に駄目だ・・・・」
イタリア国債の利回りはこのところ急上昇して5.71%(10年債)になり、ドイツ国債とのスプレッド(ドイツ国債から何%離れているかの値)は3%も広がってしまった。
またCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)はこれも3%で、かつてのギリシャ国債と同じようなトレンドを歩み始めた。
注)イタリア国債保有者が保険のためにCDSを購入すると実際の利回りは5.71%-3%=2.71%程度になるのでドイツ国債並みになる。これならドイツ国債を購入したほうが安全と言う判断になる。
「このままでは、ユーロは崩壊する。EUの救済基金を倍増して1兆5000億ユーロ(約165兆円)規模まで膨らませる必要があるのではないか・・・・」EUの担当者が言い出した。
実はユーロ圏の問題がここまで先鋭化した背景にアメリカの格付会社の態度表明がある。
「ギリシャ支援で民間金融機関が期限延長に応じれば、選択的デフォルトとみなす」
これにはドイツもフランスも頭にきた。デフォルトを避けようとしているのにデフォルトだなんて認定されては支援の意味がない。
「ヨーロッパがアメリカの格付会社の格付で金融政策を左右されるのは適切でない。ヨーロッパは独自の格付会社を設立すべきだ」
EUの担当者がほえたが、しかし犬の遠吠えになりそうだ。
なぜこうまでヨーロッパの財政危機が深刻かと言うと、リーマンショックに伴う金融危機を各国の財政支援でとりあえず抑えてきたが、状況は何も変わっていないからだ。
サブプライムローン問題も、不動産融資問題も不良資産を金融機関から各国の財政に移し変えただけで、こんどはその不良資産が国の財政を圧迫している。
注)通常金融政策においては防波堤理論と言うものがある。
中小企業の資金繰りが苦しくなると親会社を中心とする大手企業が資金繰りを助け、大手企業が苦しくなった場合は金融機関が助ける。ここでとどまっていれば問題は民間部門で方がつくが、金融機関で持ちこたえられなくなると、最後は国家が資金繰りをつける。
そして国家が破産すると後はIMFのような国際機関の出番になる。
そしてリーマン・ショックから3年たって、財政状況の弱い国から国家破綻が顕在化しており、アイスランド、アイルランド、ギリシャ、ポルトガル、そしてとうとうイタリアとスペインの国家財政に波及してきた。
こうした国々は日本と異なり国債消化を市場を通じて行っているので、悪い噂が出れば誰も国債の購入をしなくなりたちどころに資金繰りに窮する。
仕方なしにEUやIMFが支援することになるのだが、見返りは緊縮財政だからこんどは国民が黙っていない。
ギリシャがそうであるようにストライキで大騒ぎになってしまう。
今思えばリーマン・ショックまではヨーロッパにとって夢のような時代だった。GDPは毎年確実に上昇し、EUは拡大し、ユーロ圏も拡大して貿易は毎年のように伸びていた。
個人は競って住宅投資や有価証券投資に邁進して、毎年金持ちになっていた。
しかしリーマン・ショックで車輪が逆転して今は毎年のように(ドイツを除けば)経済状況は悪化している。
日本が不動産バブルが崩壊した1990年以降まったく成長が止まったように、今ヨーロッパ全体としてはリーマン・ショック後(日本の後を追って)成長の止まった社会になりつつある。
なおギリシャ経済については以下の記事を参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat44468201/index.html
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