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(23.7.1) BS世界のドキュメンタリー 豊かな国の医療危機 アメリカの医療保険制度

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 BS世界のドキュメンタリーで昨年放送され評判になった番組の再放送をしていた。
今回はアメリカの医療保険制度の問題点をえぐり出したものだが、思わず目を疑ってしまった。とても信じられないような内容だったからだ。

 この番組では3人のアメリカ人の実例が紹介されていた。

 一人は62歳の修士号を持っている男性の無保険者で、2年まえにリストラされる前は不動産専門学校の教員をしており、年収は800万円だったという。
さらにその前は大学の出版局の部長をしており年収は1000万円だったそうだ。

 リストラ前は会社保険に入っておりまったく医療で悩むことはなく、かつ老後に備え4軒の別荘9000万円の借入をして建設し、貸し別荘業を営む予定だった。
ところがリーマン・ショックで住宅価格が暴落し、借入金の返済ができず2軒の別荘を銀行に差し押さえられてしまった。
同時にリストラされて職場と会社保険を失い、自身は白内障を悪化させたが病院には行けず、現在の収入はバイトで行っている郵便局の郵便物のディリバリー作業だけで時給は720円だという。
「(貸し別荘業は閑古鳥が鳴いているしこれで食事とガソリン代をまかなっているんだ。とても保険料は支払えないよ」とこの人は言っていた。

注)アメリカの保険制度は民間会社が経営している保険に加入している人が約60%、公的保険(低所得者と高齢者が対象)に加入している人が約25%、そして無保険者が約15%となっている。

 私は驚いてしまった。この男性の人生と私の人生はほとんど同じようなものだ。学歴(私は大卒)も同じようなものだし、同じようなサラリーマン生活を経験して年収(私の年収は正確に言うと恥ずかしいので言わないが)も同じようなものだ。
違いといえばこの人は別荘を4軒たてて老後に備えたが、私は年金生活だけで暮らそうとしたところが違う。

 そして決定的に違うところはアメリカでは会社保険がなくなると個人保険に入るか無保険になり、日本では国民健康保険に入るか以前の会社が福利厚生の一環として退職者に提供している退職者医療保険現役の職員が払う健康保険料と国民健康保険料のちょうど真ん中程度の保険料で国民健康保険料より安い)に入ることになる。

 日本では無保険になることはないが、アメリカでは無保険になる人が多く6人に一人は無保険だという。
この男性の場合は過去に肩の関節の大手術をしたことがあり、個人保険の料率が高すぎてとても入ることができないのだそうだ。

 この男性は医者にかかれないため、ボランティアの医療団体が定期的に行っている無料診察を受けていたが、医者から「手術をしないと白内障で1ヶ月以内に失明する」といわれていた。しかしこの人は無料の手術でなければうけられないのだという。
世界で最も豊かな国アメリカでこんなことがあっていいのだろうか」この人の述懐である。

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 もう一つの例は61歳の女性で、6年前に乳がんの手術を受け、その後定期的に検診と薬の投与を行っている人だった。
この人は民間の保険に入ってはいたが収入の関係で最低保障の保険に入っていた。
月118ドルで手術と入院の費用は保険対象だが、その後の定期検査や医薬品の投与は保険対象外だという。

 この人の医療費は6年間で1200万円かかり、そのうち保険でまかなえたのは400万、残りは自己負担となって、クレジット会社からの借入で薬代をまかなっていると言っていた。
私が驚いたのはこの人の過去の経歴で、かつてはベストセラーの本を書いており、かつとても裕福な家庭に育ったインテリで「人生(過去に)いい時期があって本当に良かった」と述懐していた。

 日本では手術後の医療も当然保険対象で私の場合も3割負担でどこの病院でも見てもらえるが、アメリカでは入っている保険の内容によって相違があり、安い保険に入っていると保険対象にならず、術後の対応に苦労することになるという。

 最後の事例はアメリカの典型的な低所得者層で、夫が失業中で失業保険10万円で生活している黒人の4人家族の例だった。
子供が病気がちなのだが保険がないため医者に行けず,カリフォルニア州が提供している公的保険低所得者向け保険)の申請をしており、これに入れるかどうかが子供の医療ができるか否かにかかっていた。

 この女性の子供は運よく公的保険の対象になり、子供だけは無料で医者にかかれることになり、2日間熱が下がらなかった幼児は中耳炎と診断されていた。
私は「良かったじゃないか」と胸をなぜ下ろしたが、アメリカではこの公的保険の拡大に大反対が沸き起こっているのだという。

 オバマ大統領の公約の一つである国民皆保険制度は当初は日本と同様に公的保険にアメリカ国民全員を入れようというものだった。しかしティー・パーティーを中心とする草の根の反対運動が起こり、この公的保険による皆保険制度が骨抜きになってしまった。
実際建前上は2014年以降皆保険にはなるのだが、民間保険が中心であり公的保険の拡充は相成らぬという形で修正されている。

 アメリカ人の約半数は、「公的保険の拡充は怠惰な貧乏人のために、働いている人の負担で医療費をまかなうので自助の精神に反するし、民間保険で払える範囲内で医療を受けろ」と主張している。

 私のように日本に住んでいて医療費は3割負担でどのような病院(東大病院にも行ける)でも自由に受けられるものから見ると信じられないような医療制度に見える。
アメリカの医療改革は骨抜きにつぐ骨抜きで最終的にどのようなものになるのかさっぱり分からない。

 私は医療制度に関する限りは日本人で幸せだったと思っているが、その分地方自治体の財政がこの医療費負担で火の車になっているのはアメリカよりもひどそうだ。
医療保険制度はどこの先進国にとっても対応が難しい問題だということをこのドキュメンタリーを見てしみじみと感じてしまった。

なお日本の国民健康保険については以下の記事を参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/23623-8e6b.html

 

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