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(23.6.25) シンガポールの快進撃  NHK ワールド・ウェーブ

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 「お見事!!!!

昨日(23日)のNHKワールド・ウェーブシンガポール特集を見て思わず声が出た。シンガポールの10年度の経済成長率が14.7%と中国やインドを凌駕したという。
シンガポール経済はリーマン・ショックの影響を強く受け、08年、09年と低迷していたので10年度がこのような高成長になるとは思ってもいなかった。

 私はシンガポールには何回も行ったことがあるし、街中を走ったり(朝と夕方は走れる)郊外の住宅地を歩き回ったりしたので親しみのある街だ。
なんとも美しい街並だが、警察権力に常時見張られているようなところがあり、高層ビルの踊り場で外の景色の写真を撮っていたら警備員に捕まって詰め所で尋問されてしまった。
また麻薬を保持していたオーストラリア人が死刑になってしまい、余りの厳しさにオーストラリア政府が抗議していたりしていた。

 シンガポールはとても豊かな国だ。ここ数年日本とシンガポールの一人当たりGDPの推移はどっこいどっこいだったが、2010年シンガポールが明確に日本を凌駕しこの先どこまで離されるか分からなくなっている。

注)2010年の一人当たりGDP。シンガポール48、960ドル、日本45,659ドル

 通常豊かになった国の成長率は落ちるものだが、シンガポールに関してはますます豊かになりそうだ。
それは徹底した経済成長政策をとっているからで、育成産業は観光、金融、石油化学、バイオ、ITでそうした産業の企業誘致に実に熱心であり、パイオニア企業と認定されると法人税が5年から10年間は免除される。

 この誘致策が効を奏して最近はホテル業の進出が著しく、番組では新たに建設されたホテルと、その屋上にある地上200mの展望プールを照会していた。
このプールは世界最高だね」と泳いでいたオーストラリア人が言っていたが、プールも世界最高になれば観光資源になる。
またこのホテルにはカジノも併設されており、中国や東南アジアのお金持ちの社交場になっていた。

注)シンガポール政府は2005年以降カジノを許可している。売上げは現在世界第3位だが、近いうちにラスベガスを抜いてマカオについで2位になると言う。

 私がシンガポールをしばしば訪問したのはここに私が勤めていた金融機関の支店があり監査に出向いたからだが、ここは金融市場としては世界でも屈指の自由な市場と言える。
金融業が発達するためには政府の過干渉がないことが一番で、これはなぜ日本が世界の金融センターになれないかの理由と一致する。

 日本では財務省や金融庁が金融機関の手足をしばって、預貯金のほとんどを国債消化に当てさせており、特に郵貯や簡保は国債消化以外の選択肢がない。
日本の国債利回りは1%台で、これでも確かに鞘は抜けるのだが、世界市場での金融機関の目標利回りはほぼ10%程度で、ヘッジファンドなどは20%を目指している。

 シンガポール市場に集まる資金はこうした10~20%のリターンを求めて集まってきており、金融機関もそれに答えるべく金融技術を駆使して努力している。
一方日本の東京市場は1%台で、これに満足しているのは日本国民だけだから海外から資金が入ってくることはない。
あまりの低収益性のため東京市場は世界のローカル市場になってしまい、日本の金融機関でさえ日本を諦めてシンガポール等で勝負をしているのが実態だ。

注)映像でも日本のある金融機関が1兆5千億円の資金をここで運用していると紹介されていた。

 シンガポールは海外から優秀な人材をあつめ投資を促しており、その象徴が個人所得税が20%固定でかつ相続税がないことで、世界の金持ちをシンガポールに引き付ける原動力になっている。
シンガポールの永住権は日本円で13億円程度の資産があれば永住権が与えられるため、日本人でもお金のある人はシンガポールに永住権を持っていて、所得税をシンガポール政府に支払っている。

注)税務対策として収入をすべてシンガポールで得たようにして、日本の高額な所得税を払わないようにするのが金持ちの節税対策になっている。
また相続税対策としてシンガポールに資産を移すことがしばしば行われている。

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 シンガポールはまさにわが世の春だが、シンガポールにも悩みがないわけではない。
人口500万で山手線の内側程度の面積のこの島は住宅問題が最大のネックとなっている。
ほんの10年前まで300万人だった人口がここ10年で500万人になった理由は、外国人が永住権を取得したり、また外国企業の駐在員が増加したからで、5人に2人程度は外国人と言うことになる。

 シンガポール政府はシンガポールの住民に安価で高級な住宅を提供するのを国是としてきており、住宅公社の建設したマンションは90㎡で1800万円と言うから格安な値段だ。
市場価格はこの5倍と言うから市民が抽選であたるのも大変で、「なかなか当選しないよとぼやいていたが、これはバブル期の日本の住宅公団の抽選とまったく同じ状況だった。

注)抽選であたった住宅を転売すれば投資金額の4倍の利益が得られるので、市民のもっとも確実な投資になる。なお永住権を得た外国人は新築住宅を入手できず、購入できるのは中古住宅のみ。

 もう一つのシンガポールの悩みは水問題で、この島の住民に対して水を確保するために隣のマレーシアから水を購入しているが、マレーシアとの関係は必ずしも良好でない。
1998年にはこじれてマレーシアは水の供給を止めると宣言したほどで、以来シンガポール政府は日本の技術を導入して汚染水の再利用に取り組んでいる。

  このように住宅問題や水問題はあるものの、経済は絶好調で失業率も2%台と完全雇用の状況に有る。
今回の報道番組を見て私がつくづく感心したのは、豊かな国がさらに豊かになるヒントがあるからだ。

 成長産業の投資を促すためには法人税を免除したり、優秀な人材(特に金融業)を得る目的のためには所得税を20%に抑えたり、金持ちを集めるために相続税をゼロにしている。
そして何より企業に対する過干渉はせず、もっぱら社会インフラの整備に全力をあげて、かつ犯罪に対しては徹底的に厳罰でのぞんでいる。

 実にすばらしいノウハウだが、はたして日本はこのシンガポールのノウハウを学べるだろうか。大阪府の橋下知事のような進取の気質が有る知事が、有る特定の地域を特別区に指定して金融でシンガポール並みの規制緩和を行えばまったく無理と言うことはなさそうだ。

 ただし日本政府にそうした特区を許す度量があるかと言うとかなり怪しく、とても無理と言うのが一般的な評価だろう。
日本は豊かさをさらに豊かにする社会ではなく、静かに衰亡していく社会だと思ったほうがよさそうだ。
私は個人的にはそうした静かな社会が好きだが、より豊かな生活を求める人たちは日本を去ってシンガポールのような社会で暮らすことになるのだろう。

 

 

 
 

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