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(23.6.1) 東電の賠償責任とその可能性 最後に払うのは誰か?

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 福島第一原発の事故にかかる賠償を誰がするかで迷走している。
菅総理は「賠償責任は第一義的には東電にあるが、政府も原発行政を進めてきた責任がある」と発言し政府支援を行うことを明確にした。

 しかしその具体的なスキームとなるとなんともよく分からない。
政府がまとめた案は直接東電が賠償するのではなく賠償機構を設立し、この機構を通して賠償を行うと言うものだ。

 そして賠償機構には電力会社10社を強制加入させて出資金を提供させ、この出資金で賠償を行うのだが、もし資金が不足した場合は政府が交付する交付国債を資金化して賠償資金に当てると言うスキームだと言う。

 何か分かったようでわからないスキームだ。一番の問題は賠償額に上限を設けないとしていることで、これでは出資金をいくらにし、交付国債をいくらにするのか確定できない。
無限に出資金をだせ、そして交付国債も無限だ」と言っているに等しい。

 このため東京電力以外の電力会社が出資金の支出に躊躇している。
自分のとこで事故を起こしたわけでもないのに、無限に出資金を出して経営を破綻させる訳に行きません。第一株主に対して説明できません

 もっともこのスキームでは賠償金は一旦機構から出すのだが、支払った出資金の穴埋めは事故を起こした東電がすることになっている。
現状では賠償金がいくらになるかわからないので東電の経営を考慮して毎年の利益の範囲内で穴埋めを行うと言うスキームだ。
大丈夫だ、東電が生きている限りいつかは返済されるだろう

 だが、本当にこのスキームはうまく行くだろうか
一生負債を背負って生きろ」と言われて「はいそうですか」と東電は社長以下職員全員が給与を返上しながらがんばるだろうか。
馬鹿馬鹿しくなって東電が自己破産でもしたらどうなるのだろうか。

 やはりこの問題はどこかで線引きが必要だ。ある程度賠償額が見えたところで東電の負担と政府の負担を明確にし賠償額を確定しなれば東電は資金計画も建てられないし、政府は予算編成もできない。

 それでなくても東電は市場から見放されている。
東電の社債は原発事故が発生する前は日本で最も信頼できる社債とみなされていて、国債よりわずか0.1%高いだけの金利で取引されていた。
それが今では国債とのスプレッドは約3%になってしまい、この先どこまで拡大するかわからない。

 しかも格付会社S&Pは東電の長期債務格付を投資不適格にしてしまったので、もはや債券市場からの調達が不可能になっている。
原発事故が発生する前までは東電は内部留保が厚い会社だったので、新規投資(毎年大体6000億円程度)を自己資金でまかないさらに社債や長期借入金を返済していた超優良会社だった。

注)以下の東電の資金調達の推移参照。http://www.tepco.co.jp/ir/keiri/plan-j.html

 ところが原発事故後は一転して社債市場から締め出され、あわてて金融機関から2兆円の資金を調達したものの、今後どの程度借入を増やせばよいかわからない状況だ。
なにしろ11年3期だけで特別損失が1兆円を越したがこれはまだほんの序の口に過ぎない。

 東電の毎年の内部留保は1兆円弱だから、特別損失(毎年の賠償額)が1兆円規模であれば賠償はできそうだが、一方毎年6000億円程度の設備投資資金が出てこない
誰かが金を貸してくれなければメンテナンスもまともにできない会社になってしまう」東電の悲鳴が聞こえる。

 本来は金融機関に頼み込んで資金調達をしなければならないのだが、枝野官房長官は金融機関に債権の棒引きを要請した。
借金は棒引きだ、金を貸せ
これで金融機関が融資に応じたらお笑いものだ。

 社債市場から締め出され、金融機関から相手にされなければ東電の運命はJALと同様の国有化しかない。
国有化とは国の資金で賠償や設備投資を行うことだが、一体いくらになるのだろうか。

 現状ではまったく暗中模索としか言えない。毎年の賠償額が1兆円規模で収まるならば、内部留保の範囲内だから、後は設備投資資金6000億程度を政府系金融機関が毎年融資すればよいと言う計算になる。

 こうして世紀の原発事故はその収拾のフレームワークがまったく見えないまま、東電を国有化する以外に対応策はないと言う状況に追い込まれている

注)日本経済研究センターが内閣府原子力委員会に提示した試算では、向こう10年間で20兆円の資金が必要とされている。それによると廃炉費用が約15兆円、賠償費用が約5兆円と試算された。
東電の毎年の内部留保は約1兆円だから、半分は税金の投入が必要になる。なおこの試算に毎年のメンテナンス費用が含まれているかどうかは分からない。


東電の経営問題については以下の記事を参照
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/cat43519325/index.html


今日の動画はマッスルさんが撮った飯豊山の写真を再掲します。
http://www.youtube.com/user/yamazakijirou#p/a/u/0/eZimS1L0mck

 

 


  
 



 

 

 

 

 

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コメント

マッスルさん撮影の花の豊かな飯豊山を拝見しました。素敵な映像ですね。早起きして良かった!朝から気分が良いです。

(山崎)マッスルさんはとても写真が上手なのです。

投稿: かぐや姫 | 2011年6月 1日 (水) 05時37分

参考:
「東電は法的処理が望ましい」「政治のリーダーシップが必要」
東電賠償問題で斉藤惇東証社長が提言
http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/articles/2011053100009.html

>>記者会見での断片的な言葉をとらえられて報道された。

投稿: 横田 | 2011年6月 5日 (日) 11時54分

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