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(23.5.8) 東日本大震災 復興資金を赤字国債の日銀引受でまかなうことの考察

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 私は元銀行員で好んで経済記事を書くが、経済学者でも研究者でもなく市井の経済好事家に過ぎないと逃げをうちたくなった。
私の書いた記事に鋭い質問をしてこられる方がおられたからだ。

 福田さんと言う方がそれで、私が23.4.8に記載した「東日本大震災 復興財源はいかに調達するか それをやっちゃおしめいよ 国債の日銀引受」と言う記事に対し、以下のようなコメントをくださった。

http://www.ipe.tsukuba.ac.jp/~s0630079/takahashi.html
には、高橋是清がハイパーインフレを生じさせずに、国債引き受けでデフレ解消した、と記載されているのですが、これは誤りなのでしょうか?」

 日本においては(日銀の資料によると)昭和7年から国債の日銀引受が始まっており、これによって高橋是清が日本経済の建て直しに成功したとの評価がおこなわれているとの指摘である。

 私はとりあえず「昭和初期の成長期の経済と現在の老衰期の経済の差です。
たとえば若者に学問をさせるために親が借金してでも大学にいかすのは効果があります。一方私のような老人に奨学金を出して大学で学ばせても無駄です
」と回答したが、さらに福田さんは以下のような質問をしてこられた。


ご指摘の通り、供給サイドの一方的な財政出動はこれまでと同様に、経済効果は期待できないのでしょうが、震災復旧のための資金や、赤字財政の改善のために、一時的かつ限定的な国債引き受けが、即、ハイパーインフレにつながるものなのでしょうか

インフレターゲットによって、デフレを解消すれば、経済成長できるという主張は、行き過ぎとは思うものの、マネーサプライ自体、民間銀行の信用創造で膨張されたものならば、限度を設けた国債引き受けなら、弊害がないのでは、と思ったもので。

また、高橋是清の国債引き受けは、暗殺後も継続されたから、ハイパーインフレになった、という説が、正しい歴史認識のように感じます
と言ってこられた。

 実に鋭い質問だ。こうなると私も腰を入れて答えなくてはならなくなった。

 高橋財政では赤字国債の日銀引受も一時的な措置として採用している。なぜそれが分かるかと言うと日銀が引き受けた国債をできるだけ金融機関に売却しているからで、本来は市中消化をしたかったがそれができるまでは日銀が引き受けるとの立場だった。そして実際に高橋財政が機能している間は経済は回復していた。

 しかしその後戦争経済が進み、税金による調達だけでは戦費が調達できないためこの便利な日銀引受を拡大して行った。また日銀が引き受けた国債が膨大になるになるにつれて市中消化ができなくなり、日銀に国債がたまった分通貨の膨張が続いた。

 一方戦時中は政府が物価統制をしていたので表面的には物価は安定していた(ただし闇での物価高騰が始まっていた)。
戦後、政府の統制がなくなると一気に物価は上昇しハイパーインフレーションに突入した。

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 上記の歴史的な教訓は以下の通りだと思う。

 当初は一時的な政策として国債の日銀引受を行い、特にデフレギャップがあるときは一定の効果が発揮できる(高橋財政)。

 しかしそれは当初だけで、その後もこの方式を繰り返し続けると、本来返済が不可能な国債を日銀が持ちつづけることになり、その分は通貨の膨張につながる(戦時経済)。

 政府が強権で物価統制を行っている間は物価はおさえられているが、強権発動が終わると一気に物価は上昇し、ハイパーインフレーションになる(戦後経済

 
 さて、この教訓を今回の東日本大震災に当てはめてみるとどうなるだろうか(ただし歴史的位置が違うので単純には当てはまらない)。

① 震災復興によって整備されたインフラを使用して、東北3県で従来以上のGDPが拡大することはない。今回の震災を受けた場所の主要産業が業であり、多くの漁船が流され、漁業者が死亡しているので最大でも震災前のGDPに復帰するのがせいぜい。

② 公共工事を行う企業体の震災特需収入は日本経済に対し大きな乗数効果を発揮しない。後えば収入の50%を労賃、40%を企業所得、10%を株主配当と仮定して考察して見ると、

・労働者は生活必需品を購入するが、そうした商品需要が商品供給者に新たな投資を誘発することなく、余裕の設備で生産される(デフレギャップがあるため)。

・企業は収入を日本での公共工事用設備投資に回すことなく、海外進出の投資に回す(復興特需は一時的なものだから日本で設備投資をおこなうと無駄になる

・株主は海外に多くの投資機会を持っているので、国内投資にまわすことはない。

③ その結果政府が発注する金額を越えて、企業体による新たな設備投資が日本国内に発生することはほとんどなく、乗数効果はほぼ1にとどまる。

注)この乗数効果ほぼ1と言うのは論理的考察と言うより、過去20年間の日本経済の実情からの推察。政府が公共工事を拡大して何度景気回復策を行っても名目のGDPは20年間まったく一定だった。

④ 一方日銀引受の赤字国債については経済の拡大がないので税収入での償還ができなく、戦前と同じように日銀引受を繰り返すことになり、日銀の国債残高は急拡大する。

⑤ 市場がこの状態を危険と見た段階で、円は急落し輸入インフレが始まる。ここで政府が緊縮財政に入れば輸入インフレどまりで収まるが、更なる国債発行(日銀引受)をすれば、発行分だけ物価は上昇する
この状態はエリツィン時代のロシアと同じ)。

 繰り返しになりますが、一時的かつ限定的な日銀引受のつもりが、元々償還財源がないのだから恒常的な対応になり、その結果紙幣が国内にばら撒かれて結果的にはハイパーインフレーションになると言うのが私の見方です。

 

 


 

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評論 日本の経済 財政金融政策」カテゴリの記事

コメント

結論 全く 同感 しました。 後は、信頼 信用 でしょうね。

平成23年度 国債特例法案を、 国民信頼度 70%以上。 大幅かつ改善して、少なくとも、民主・自民・公明。  全会一致で、 力強く 決める。

そして、平成24年度 予算・経済方針も 今国会で力強く きめる。

そすれば、日本の 信頼・信用・格付け 回復 期待できると 考えます。

出来ない人は、私財 投げ打つ。 借家・年金暮らし あるのみではないですか
                                                宜しく

投稿: 千原 三男 | 2011年5月 8日 (日) 09時53分

素朴な疑問に対して、時間を割いていただいて、ありがとうございました。

一時的な国債引き受けなら、ただちにハイパーインフレにつながるものではないが、それが常習してしまうことを懸念されているのですね。

限度額と市中への売却の時期まで定めた時限立法ならば、ハイパーインフレにならないような気がするのですが、政府を信頼できないから、現実的には実現不可能と理解しました。

国債引き受けだけでなく、政府紙幣の発行についても、議論されるようになればいいな、と思っています。

投稿: 福田 | 2011年5月 8日 (日) 15時40分

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