(28.8.26) 病気療養中のため二日に1回の割で過去のシナリオを掲載しています。 「シナリオ 忠助」

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(トシムネさん撮影)

忠助 シナリオその1

 病気療養中のため過去の作品を掲載しております。

 今日から4日間はシナリオ週間です。シナリオは私の個人的な趣味で、時々作成しています。私の趣味につき合わせてしまってまことに申し訳ないのですが、書いている本人も息抜きをして楽しまないと、とても毎日ブログがかけません。

 今回は時代劇に挑戦しました

1 岩見の国、津和野、三本松城、本丸。 
 
  音響 登城を知らせる太鼓の音
茶坊主 「橋本周(あまね)様、おなーり」

  音響 城内の朝の喧騒
語り 「岩見の国、津和野。城主、坂崎出羽守が守る三本松城の本丸に、重臣の橋本周が登城してきた」
            
茶坊主 「ささ、おお殿様がお待ち兼ねです。橋本様、お急ぎくだされ」

  音響 襖の開く音。畳のすり足の音
出羽守 「おう、周か、まっていたぞ。さっ、ちこうよれ」
 「はっ」
出羽守 「これ、周、はよう、ちこうよれ。おりいっての頼みがあるのじゃ」(せかせる)

  音響 すりよる音
 「殿よりの直々の頼みとは、して、いかなることでございましょうか」(怪訝な感じ
出羽守 「うむ、周は当家の重臣ゆえ、十分承知のこととは思うが、当坂崎家は毎年、祖 先の霊をうやまい、当家の繁栄を祈念して、伯耄大山で荒業を執り行っておる。そのこと、存じておろうな」

 「当家、最大のイベントとこころえております。その業の厳しさは、ヨーロッパの西においては、並ぶものなき荒業と聖フランシスコ・ザビエルが申しておりました」
出羽守 「うむ、そこでじゃ、周。本来なら、古式にのっとり余が当家の頭領として、伯耄大山の荒行に出立すべきであるが、あいにく今年は三勤交代で江戸表にまいらねばならぬ。まことに残念な事態とわねばなるまい。ものは相談じゃが、周、余にかわって伯耄大山にいってくれぬか」(周の顔を覗き込む)

  
音響  激しい心臓の鼓動
 「(息を整えながら)殿よりの直々のお言葉なれば、喜んでお引受けすべきところ、あいにく、拙者、右足に脚気がでており、大事なお役目なればこそ、お引受け致し兼ねます」
出羽守 「すでに20余名のものに依頼したが、いずれも明日おもしれぬ病気もちばかり。周、そちが最後の頼みじゃ(哀願)」

 「右足だけでなく、左足も脚気がでておりますれば、ひらにごようしゃを」
出羽守 「昨日は奥女中のあやめと楽しげにテニスをしていたではないか、見ておったぞ!(皮肉っぽく)」

 「その後、急に脚気がでてまいり(冷や汗を拭く)」
出羽守 「しからば、これではどうじゃ。伯耄大山の荒行をみごとなし遂げたあかつきには、100石、加増いたそう。どうじゃ、周、脚気はなおったか?」

 「いつのまにか、全快しておりまする」
出羽守 「そうであろう、そうであろう。周、吉報をまっておるぞ」

2 橋本周の屋敷

  音響 小鳥のさえずり、竹藪にふくそよ風
語り 「ここは、橋本周の屋敷。おりしも周が妻、菊にことの次第を説明している」

 「すると、あなた様はこの大役をお引受けしたのですか(軽蔑をこめて)」
 「100石、加増と聞けば、ひきうけない訳にはいくまい。なにせ、来年は子供の高校受験もあるし、そちの訪問着も新調せねばなるまいし」

 「殿は、伯耄大山の荒行がどのようなものか御存知ないから、そんな呑気なことを言えるのです。よいですか、昨年、服部十蔵様がお引受けになり、いさんで大山縦走をしていかなることになったか」

3 大山縦走(1年前)

  音響 暴風雨
語り 「一年前、大山縦走中の服部十蔵」

十蔵 「(叫ぶ余は十蔵じゃぞ、風がなんじゃ、雨がなんじゃ、断崖絶壁がなんじゃ、大山縦走ぐらいでひるんで、岩見の荒武者といえるか、こわくないぞ、こわくないぞ(段々声が弱くなる)なむさん、神よ、もしあらば、この十蔵を助けたまえ。さ、あらざれば、我に罰をあたえたまえ」

  音響 急に激しくなる風雨。雷
十蔵 「なんだ、なんだ、なんだ、わいをおちょくってんか。こんなにたのんでるのに、こんな強い風、ふかせよって、あほんだら。雷様に臍、とられるやないけ」

  音響 突風。崖崩れの音 
十蔵 「あっ、落ちる、落ちるやないか。足の下、なにもないやないか。助けて、お願い、手、しびれる(岩に片手をかけて悲鳴をあげる)」

  音響 熊の雄叫び。飛んでくる熊の足音
十蔵 「(騒ぐ)なんだ、なんだ。なぜ熊が出てくるんだ。手かんでどうするの、あっ、ひっぱりあげてくれるの。痛いやないか、骨がちぎれるやないか。あぁーーーー」
  音響 骨が折れる音

4 服部十蔵の館(1年前)

  音楽 荘重な葬送曲
  音響 白装束のすれる音

語り 「服部十蔵の館。切腹をするため白装束になっている十蔵」

十蔵 「返す返すも残念なのは、熊に助けら れるとの醜態を演じたこと。あのまま谷に落ちていれば、かかるいきはじを晒さずにすんだものを。しかし、この失態、大殿に知られた以上、見事腹きってはてるより仕方ない。許せ、梅」

  音響 泣く十蔵の妻、梅
十蔵 「これが辞世の句じゃ。(熊であれば襲いくるものとおもいしを 伯耄の熊は人こゆる熊)」
  音響 さらに強く泣く梅

5 橋本周の屋敷(ふたたび現在)」

  音響 小鳥の囀り。竹藪にふくそよ風
 「その後、服部家はお家、断絶。梅殿はモスクワに移り、熊のミーシャと再婚し、熊女を出産。おお、いやじゃ、いやじゃ、わらわは熊の嫁などになりとうございませぬ。こたびの件、お断り下され(わめく)」
周 「しかし、一度引き受けると言った以上、断る訳にもいくまい(ぼそぼそと)」

 「ふん、子供の高校受験のためとは聞いて呆れる。おおかた江戸表で近頃出没する異国のダンサーとねんごろになるための費用であろうに」
周 「いや、けして、そのようなことは、断じてない(慌てる)」

 「分かりました。ことここに到っては、お断りすることもなりますまい。お引受けなさい。ただし、影武者をたてるのです」
 「なんと、影武者!(声が高く)」

 「お分かりになりませぬか。殿の体力で、伯耄大山の荒行、とても勤まりますまい。ここは下男の忠助を影武者にたて、みごと目的を達するのです」
 「あの体力だけが取り柄の忠助か?あれは、わしのような品格がないではないか」

菊 「いま必要なのは品格ではなく、体力です。すぐに忠助をおよびくだされ」

(以下 その2に続く)

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(28.8.25) 海外出張は千葉県会議員の役得 出張報告書の怪

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 24日の毎日新聞の朝刊を読んで笑ってしまったが、本当は笑って済ませてはいけないことなのだ。
記事によると私の住んでいる千葉県の県議会議員が海外出張をしたのだが、その報告レポートが全員同じだったという話である。
3グループ延べ29人が、台湾やドイツやイギリスに出張したのだが提出されたレポートはグループごとに同じだった。

 事務局の説明では同じ場所に行ったのだから同じ報告書でもいいといいうことのようだが、問題は出張報告書は個人ごとに提出しなければならずグループ報告でないのでこの説明は苦しい。
 
 現在千葉県議員の報酬は月額約90万円だが、それと同規模の研修費等の特別手当が出る。いわゆる政治活動費だがこの特別手当は目的が決まっていてその目的を逸脱する使用はできない。もしあまったら返還しなければならないが、そのような奇特な人はまれでほぼ全員がこの特別手当をきっちり使用する。
その時に目的に合った使用の証明にこのレポートが必要になる。

 今回問題になったの海外出張費はこの政治活動費から充当されていた。
議員には海外研修が必要なのだ。研修はほめられこそすれ何が悪い。レポートは全員一致で書いたものだ」と抗弁しているが実態はまるで違う。
もともと県会議員が台湾やドイツやイギリスに行って学ばなければならないようなことは現在ではほとんどない。
本当に情報が必要であったとしても今ではインターネットを検索すれば研修程度の知識は山のように集めることができる。

 だから実態は研修レポートを事前に事務局の若手に作成させておいて、議員は出張後それをコピーして提出しているだけなのだ。
研修が必要だから海外出張をしているのではなくて、政治活動費を使用するために海外出張をしているのだ
議員はしょちゅう海外であれ国内であれ出張するのはこの費用の使用をするためで、研修などははなからするつもりはない。
議員は一度やったらやめられん。政治活動費で観光旅行よ・・・・・」

 このことを明確に教えてくれたのが舛添前東京都知事で舛添氏は5000万円の費用をかけてロンドンやパリの美術館巡りの海外出張をしていた。
知事の資質として文化的教養を深める必要がある」との理由だったが、随行20名とともに美術館巡りばっかりしていてはその説明も苦しい。知事の教養と随行員の教養は違うからだが、知事の趣味を随行員に強要するのは褒められたものでない。

 はっきりしているのは議員の研修旅行というものの大半は観光旅行で、政治活動費がたっぷりあるから遊びに行っているだけだ。
もちろんアリバイつくりのために研修目的の場所の訪問はするが、相手の説明などまず聞いていない。
今夜はミュージカルで明日はルーブル美術館だ。オペラ座のオペラも見なければならないし、できれば男の下半身が活躍する場所がいいな・・・・」などと計画しているのが普通で研修など上の空だし、第一夕方からが本番だからまともに研修レポートなど作成するはずがない。

 こうして帰国後のレポートは事務員が事前に作成していたレポートをコピーして提出することになる。
いやはやパリのあすこはよかったですな・・・・・」
極楽とはあのような場所を言うのですな・・・・・」なんて会話は弾むが研修目的を覚えている人は誰一人としていないというのが実態だ。
だからほとんどの政治活動費は本来の目的を逸脱されて使用されており、今回の事例のように研修と称した海外旅行に使用されたり、実質的な生活費として使用されている。
もっとも議員からすれば「毎日新聞のやつ、額面の報酬を90万円程度に抑えて実際の報酬を180万円にしていたトリックを暴きやがって、ふてい野郎だ」ということになる。

 この問題の本質は表面的には必ずしも高額でない議員報酬が実際は相当高額でそのトリックがうその出張報告書ということだが、千葉県のように財政がひっ迫している自治体でこのような猫ババがいつまでも続くのは問題であろう。

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(28.8.24) 病気療養中のため二日に1回の割で過去のシナリオを掲載しています。 「シナリオ ぼくが生きた時 その6」

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本日(14日)から6日間はシナリオシリーズです。このシナリオは私がシナリオライターになろうとして努力していたころの作品で、半分以上は自叙伝です。
なお病気療養中のため過去の作品を掲載しております。


ぼくが生きた時 その6(最終回)

(シナリオシリーズのその6です。その1からの続きですので、その1、その2、その3、その4、その5を読まれていない方は「その1」、「その2」、「その3」「その4」、「その5」 リンクが張ってあります>からお読みください


○ 校庭(数日後,昼休み)


 鉄棒。一人でけあがりの練習している哲雄。そこに次郎がちかずいてくる。とおくで様子をうかがっているアキオと子供達。アキオは棒をもっている。次郎を見て戸惑う哲雄。

次郎「哲雄ちゃん,今日,学校終わったら魚取りにいかないか」
哲雄「(とまどいながら)あの,ぼく,都合がわるいんだ」
次郎「なんで,この間,池で魚とろうと約束したじゃんか」

哲雄「でも,駄目なんだ」
次郎「身体が悪いのか?」
哲雄「(当惑して)ううん」

次郎「網,なくしたんか?」
哲雄「ううん」
次郎「じゃ,なぜなんだ?」

  二人をうかがっているアキオ達の存在に気付く哲雄。

哲雄「(強く)ぼく,だめなんだ。本当にだめなんだ。もう誘うの止めてくれよ」

  アキオ達が二人にちかづいてくる。アキオは手に持っている棒をわざと振り回している。

アキオ「おい,次郎。哲雄がこんなにいやがってんのに,なに無理やりさそってんだよ。哲雄はお前と遊ぶのいやだっていってるだろ」
次郎「哲雄ちゃん,本当か?」

哲雄「・・・・・・」
アキオ「いやだってはっきりいってやれよ。不良とは付き合いたくねえってよ」
哲雄「・・・・・・」
次郎「本当か?」

アキオ「ばかやろう。嫌だっていってるだろ」

 手に持っていた棒で急に次郎をぶとうとするアキオ。一瞬ひるむ次郎。その隙をついて子供達全員が次郎に襲いかかる。次郎の服がやぶける。鼻血を出している次郎。執拗に次郎をあしげりする子供達。蒼白になっている哲雄。哲雄が職員室に助をもとめに走る

○職員室(続き)

  真っ青になって,職員室に飛び込んでくる哲雄。教師がびっくりして哲雄の顔を見る。立川先生のところに駆け寄る哲

哲雄「せ,先生,来て。大変です。 みんな,喧嘩してます」
立川先生「だれが喧嘩してるんだ」
哲雄「次郎ちゃんです」

  
立川先生「(うんざりした表情で)また,あいつか。誰がやられてるんだ」
哲雄「あの,次郎ちゃんです」
立川先生「誰に」
哲雄「アキオちゃん達が次郎ちゃんをなぐってます」

  間
立川先生「哲雄,それならかまわん,ほっておけ。次郎にはいい薬だ」
哲雄「だって次郎ちゃんが」
立川先生「いいんだほっておけ」

  悄然と職員室をでていく哲雄。あしげりされている次郎。

○ 教室(翌日の昼)

  昼休み。アキオが藁半紙を持っている。周りに集まっている子供達。次郎はいない。

アキオ「次郎のやつ,やけにいばってねえか弱いくせによ。このあいだもタコをパンチして生意気だ。タコはなんにもしねえのになぐられてんだぞ。タコがかわいそうだ」
子供A「ソウダよ、タコがかわいそうだ」

タコ「ぼく,いつも次郎にいじめられるんだ(泣き出す)」
アキオ「次郎は不良だってかあちゃんがいってたぜ」
子供A「あいつは完全に不良さ」

アキオ「あいつなんか、いなきゃいいんだ。そうだろう?」
子供A「そうだよ。抹殺すりゃいいんだ」
子供B「先生も次郎はどうしょうもないヤツだっていってたよ」

アキオ「次郎の葬式ごっこをする。次郎の葬式をするのに反対のやつはいるか(じろっとあたりをみまわす)」
子供A「反対するもんなんかイネイヨ」

  笑う子供達。

アキオ「よし,決まった。みんなで次郎の葬式ゴッコをする」
  はやす子供達。

アキオ「次郎の葬式ごっこするぞ、葬式ごっこするものこの指とまれ」

  いっせいにアキオの指に集まる子供達。アキオの周りに集まって藁半紙に書き込みをする

アキオ「(読む)次郎、お前が死んで、おれはうれしいぜ」
  はやす子供達。

子供A「(読む)地獄にいけ、次郎」
  笑う子供達。

子供B「(読む)死ね、悪魔の子」
  笑う子供達。

子供C「(読む)死をもって償え」
子供A「(まわりを見回しながら)なんだよ。 女の連中はかかねえのかよ」
アキオ「おい、康子、かけよ(おどす)」
  いやいや書く康子

アキオ「康子も書いたぞ。全員で書くんだ」
  女生徒全員が書き込みをする。

アキオ「まだ,書いてないものいねいだろうな(念を押す)」
子供A「哲雄がまだ書いてねえ」

 全員で藤沢哲雄の顔をみる。下をむいている哲雄。

アキオ「なんだ,哲雄,お前,なぜ書かないんだ。また仲間外れになりたいのか!」
哲雄「・・・・・・・・・・」
アキオ「みんな書いたぞ。鞄やぶくぞ」

  哲雄の鞄を取り上げるアキオ。

哲雄「やめてくれよ(弱く)」
 アキオが哲雄の胸をつかむ。

アキオ「じゃ,書くんだ。哲雄,お前は先頭にかけ」
哲雄「(泣き声)なんて書いていいか分からないよ」
アキオ「『次郎,死ね!この日を待ってた哲雄』と書け」

哲雄「ぼ,ぼく,書けない」
アキオ「タコ,ヒロ,鞄をやぶけ」

  タコとヒロが哲雄の鞄を両方から思いっきり引っ張る。無残に裂ける鞄。

哲雄「や,止めてくれ」
アキオ「なまいきいうんじゃねえ。みんな,哲雄をやっちゃえ」

  全員で哲雄にとびかかる。鼻血をだしながらたたかれている哲雄。

アキオ「(かたで息をしながら)もう,いいこんなやつほっておけ。おい、タコ、先生にも書いてもらってこい。葬式ごっこだからなんでもいいから書いてくれって言うんだ。先頭に書かせろ」
タコ「誰の葬式だって言われたら、どうする」

アキオ「まだ、決まってねいって言え。次郎のだなんて絶対にいうなよ」
タコ「うん」

  教室を飛び出していくタコ。

○ 教室(1時)

  藁半紙をじっと見つめている次郎。息をひそめて次郎の様子をうかがっている子供達。一番最初に立川先生の文字。

次郎「(心のなかで)『君が死んだことを聞き、先生はほっとしました。おめでとう。立川』」

  立川先生が教室にはいってくる。教師の顔を見る次郎。急に藁半紙を破り捨て、教室から飛び出す。あっけにとられる立川先生。一斉に喝采をあげる子供達。哲雄がかなしそうに次郎の後姿を目でおっている。

○ ローカル線の沿線(1時間後)

  高架のローカル線のはしをとぼとぼと歩いている次郎。線路に耳をあて列車がちかずいているかどうか調べている。近かづく列車の音。線路から耳を離さない次郎。列車のちかづく音が大きくなり、警報の汽笛が鳴る。ようやく線路から離れる次郎。次郎の前を通り過ぎる列車。再びあてどもなく線路の上を歩いている。


  ふたたび、線路に耳をあてる。列車のちかづく音。だんだん大きくなる。警報の汽笛。どかない次郎。

 回想『イネのさいごの言葉』

イネ「次郎、人間は生きるために喧嘩しなくちゃ、いけない時あるの。ばあちゃん、山口に行ったら、もう、次郎を助けてあげられない(嗚咽)。だから次郎、お前は一人で強く生きるの。学校のガキ大将とも母さんともたたかって、負けちゃいけないの」
次郎「ばあちゃん、ぼく、約束する。絶対負けない」

  次郎を強くだきしめるイネ
 回想 終わり

  はっとして、線路から離れようとする次郎。あわてたので枕木に足をとられ、動けない。警笛の響き。懸命に足を枕木からはずそうとする次郎。近づく列車。運転手の慌てた表情。警笛。目をつぶる次 郎。急に横から哲雄が線路に飛び出し,次郎のからだにおもいっきりぶつかる。列車が通過する寸前に二人の身体が高架から転げ落ちる。側の鉄柱に頭をうちつける次郎。爆音を轟かして通り過ぎる列車。機関士のバカヤローというどなりごえが消えていく意識の合間に聞こえる 

○ 線路下(2時間後)

語り「僕はしばらく意識を失っていた」

  意識がもどる次郎。しばらく自分の置かている立場が分からない。頭をかるく振る。側に哲雄が座っている。顔から血がででいる。不思議そうに哲雄の顔を見つめる次郎。

次郎「哲雄ちゃん,どうしたの?」
哲雄「へへ,ふたりで落ちたんだ」
次郎「どこから?」

哲雄「あすこ(線路を指さす)」
次郎「どうして?」
哲雄「おれが,次郎ちゃんにぶつかったんだ。だって,次郎ちゃん,列車にひかれそうだったんだもん。死んじゃうのかと思った」

  
次郎「ここにいるの、どうしてわかった?」
哲雄「心配だからあとからついてきたんだ。そしたら次郎ちゃん,線路のうえからはなれないんだもん。おれ,驚いちゃった」

  間
次郎「哲雄ちゃん,おれとあそぶのいやなのんじゃないか?」
哲雄「ううん(首をふる)」
次郎「じゃ,このあいだ魚とりいくのなぜいやがったんだ」
哲雄「次郎ちゃんと遊ぶと,アキオに鞄破くっていわれたんだ」

  
哲雄「でも,おれ,葬式ごっこ嫌だといったんで鞄破かれちゃったからもういいんだ」

  (顔をじっと見つめあう)
次郎「じゃ、これから魚とりにいこうか?」
哲雄「うん」

○ 小川(続き)

  幅2メ-トル程度の小川。両方をせきとめ,中の水をせきとめて鮒をてずかみでとっている次郎と哲雄

次郎「哲雄ちゃん,そっちに逃げた。捕まえろ」

  二人で泥まみれになって魚をとっている。 つかれて,土手に腰をかける二人。

哲雄「次郎ちゃん,明日,学校にいくの?」
次郎「(強く)行く」

  
哲雄「また,アキオが意地悪するよ」
次郎「逃げれば,また苛められる。ぼくは絶対に逃げない」
哲雄「鞄,破かれるかもしれないよ」

次郎「哲雄ちゃん,心配しないでいい。あす一番にアキオの鞄を破ってやる」
哲雄「先生が怒るよ」

  
次郎「それでもいい。だってばあちゃんと約束したんだ。男の子は戦うんだって」

  (笑う二人)
次郎「魚取り,続きをしようぜ」
哲雄「(元気よく)うん」

  流れる雲。せせらぎ。桑畑。肩を組んで桑畑を帰る二人。
                                       
                                        終わり

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(28.8.23) 実に楽しめたオリンピックが終わった。日本選手の活躍にびっくりだ!!

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  ずいぶん楽しませてくれたオリンピックが終わった。私は昔からのスポーツ好きだからこの間はテレビにくぎ付けになる。しかも完全退職者だからいつまで見ててもいいのだが、さすがに日本選手が活躍しない種目は見る気がしない。
今回は日本選手の活躍が目覚ましく私は手に汗握ってテレビを見つめていた。

 当初は体操内村選手が鉄棒から落下したり、柔道はいつまでたっても銅メダルばかりだったので、「これは今回目標の金メダル14個はとても無理でせいぜい7個程度か・・・・」と悲嘆に暮れていたが、女子レスリングが快調に4個の金メダルを量産してくれたので最終的には12個の金メダルになった。
銀・銅を含めたすべてのメダル数は41個でこれは過去最高だという。
よかった、どうにか目標圏内に入った……すべて女子レスラーのおかげだ・・・」満足した。

 今回私がもっとも興奮してみていたのは卓球で、いつもならこうした地味なスポーツを見ることは少ないのだが、女子の福原愛選手や石川佳純選手や男子の水谷隼選手が大活躍していたので熱烈応援をしてしまった。
もともと卓球は中国が抜きんでて強くそのあとを日本とドイツがほぼ同一水準で追っている構図だが、今回の試合を見ていて中国との差がもう一歩まで縮まってきたのを感じた。
よっしゃ、これなら東京オリンピックでは中国を打倒できるかもしれない…・」期待が持てる。
最終的には男子団体で2位、女子団体で3位、個人では水谷選手が銅メダルを獲得したが、内容的にはそれ以上のものがあった。

 特に福原愛選手が勝って喜びに泣き負けて悔し涙で泣いていたのが印象的で、福原選手が泣くと私も一緒になって泣いてしまった。
この人は本当に懸命に努力している。持てる力の100%以上を出してがんばっている。がんばれあいちゃん、頑張るんだ!!」年を忘れて大興奮してしまった。

 オリンピックでは100%程度の努力ではメダルが取れない。それは相手選手も100%超える力を出しているからで、このときは鬼神に化身して人間を超える必要がある。
かつてマラソンの有森裕子選手は「自分をほめてあげたい」ほどの力走をしてメダルを獲得したが、走っているときの自分は自分であって自分でない存在だったはずだ。

 オリンピックでは0.01秒を競うが0.01秒は水泳ならば1㎝、陸上ならば10cm程度の距離だ。この0.01秒の相違で順位が決まるが、その差はほとんど精神力で決まる。だから勝とうとする意欲が強いものが最終的にメダリストになるのだ。
あいちゃんのように鬼神にならなければ決してメダリストになれない。    

 それにしても今回のオリンピックで私が最も驚いたのは男子400mリレーが銀メダルに輝いたことだ。これはほとんど考えられない快挙だ。柔道や体操や水泳ならば金メダルを取っても驚かないが、陸上400mリレーには心底驚いた。ここはかつても今も黒人ランナーの独壇場で白人系や黄色系のランナーが短距離で決勝に進出することはほとんどない。
実際今回もリレーランナーは誰一人として100m決勝に残らなかったが、バトンタッチの技術が世界最高だったためジャマイカのボルト選手さえ驚愕するような走りだった。
第4走者のボルト選手が走りながら並走する日本のケンブリッジ選手の横顔を見て「なんなんだ、こいつは!!」という顔をしていたのが実に印象的だった。
日本人は体力に劣っても技術力でカバーする典型例がこの400mリレーだったが、日本の将来を暗示させる好適例だと言っていいだろう。

 何しろこんなに楽しませてくれたのだからオリンピックはいいものだと心から思う。


 

 

 

 

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(28.8.22) 病気療養中のため二日に1回の割で過去のシナリオを掲載しています。 「シナリオ ぼくが生きた時 その5」

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  本日(14日)から6日間はシナリオシリーズです。このシナリオは私がシナリオライターになろうとして努力していたころの作品で、半分以上は自叙伝です。
なお病気療養中のため過去の作品を掲載しております。


(ぼくが生きた時 その5

(シナリオシリーズのその5です。その1からの続きですので、その1、その2、その3、その4を読まれていない方は「その1」、「その2」その3」、「その4」リンクが張ってあります>からお読みください


○ 自宅(夜)

  布団をひく次郎。夕御飯をたべずにねようとする。破れた上着を隠している。和子が不信に思い声をかける。

和子「次郎、どうしたの。ご飯たべないの? 風邪でもひいたの?」
次郎「今日、食べたく無い。寝る」

  布団の中で

次郎「ばあちゃん、ぼく、今日、アキオと闘った。ばあちゃんに言われた通り、ぼく、闘った。上着破られたげど、ぼく、負けなかった。アキオが泣いた。ぼく始めて泣かなかった」

○ 学校(昼休み)

語り「僕はいつかクラスで一番身体が大きくなっていた。そして喧嘩してみて、始めて自分が必ずしも弱くないことを知った」

  杉の木の鬼。雄叫びをあげながら次郎に迫ってくる子供達。最初にやって来たタコをおもいっきりなぐりつける次郎。泣くタコ。猛然と次郎に飛びかかるアキオ。とっくみあいの喧嘩。アキオをなぐる次郎。おさえつけられるアキオ。アキオに加勢する子供。辺りかまわずちかづく子供の腹を蹴飛ばす次郎。だれも次郎にかなわない。泣く子供。肩で息をする次郎

○ 教室(放課後)

  担任の立川先生が喧嘩の原因を聞いている。

立川先生「えぇー、どうしたんだ。どうしてこうなったんだ。言いなさい」

  黙っている子供達

立川先生「次郎、なんでみんなの腹をけったんだ、えぇー、あぶないじゃないか」

  唇を噛みしめてなにも言わない次郎。顔に擦り傷がある。

立川先生「最初に手をだしたのは誰だ(大きな声で)」
アキオ「次郎だよ、次郎がタコの腹を蹴っ飛ばしたんだ。だから、オレ、止めようとしたら、次郎がオレにパンチしたんだ。だから、喧嘩になったんだ。ナアー、みんな、そうだよなー」
子供達「(はやす)そうだ、次郎だ、次郎だ」

  黙って唇をかむ次郎。藤沢哲雄が手をあげようとする。

哲雄「あの・・・・」
立川先生「なんだ哲雄」
アキオ「哲雄,本当のこといえよ(睨みつけるアキオ)」

哲雄「いえ、なんでもない(口籠もる)」
立川先生「次郎,お前が最初にやったのか?」

  黙って答えない

  
アキオ「みんなみてたんだ、なあ。次郎が先にやったんだよな」

  そうだ,そうだとはやす子供達

立川先生「よし、分かった。他の者は帰っていい。次郎、お前は先生がいいと言うまでそこでたってなさい(決心したように)」
子供達「(はやす)ヤーイ、ヤーイ」

  天井をキッと睨んでいる次郎。

○ 教室(夕暮れ)

  暗くなる教室。ひとりたたずむ次郎。

次郎「(独白)ばあちゃん、ぼくばあちゃんとの約束まもってる。だってぼく、泣くといじめられる。だから闘うんだ」

  立川先生が教室に入ってくる。先生が優しく語りかける。

立川先生「次郎、どうしたんだ。お前、まえはこんな事、しなかったろう。喧嘩して、いつも泣いてた次郎が、どうしてパンチなんかするようになったんだ」

  
立川先生「先生、怒らないから、いってごらん」

  唇をかみしめたままの次郎。

立川先生「次郎、次郎にはおばあちゃんがいたな」

  びっくりして先生の顔をみる次郎。

立川先生「おばあちゃん、国に帰る前に先生のところにきた。おばあちゃん、次郎を助けてくれといってきた。家の話みんな聞いた」

次郎「(はじけるように)ぼく、ぼく、いつも泣いてた。だからぼくいつもいじめられた。だから、ぼく、もう泣かない。ばあちゃん、男の子は強くなれって言った。だから、だから、パンチしたんだ」

  
次郎「ぼく、そうしないと、いつも鬼だからだから、ぼく・・・・」

  じっと次郎をみつめる立川先生。

立川先生「次郎、分かったから、もう帰っいい。(間)ただパンチはよくないな」
次郎「うん」

○  映像

  アキオとの喧嘩。殴りつける次郎。互いの服が破れる。おびえる子供たち。次郎の後ろに回って次郎の足を蹴飛ばそうとするタコ。次郎が先に気付きタコの頬をおもいっきり引っぱたく。大声で泣き叫ぶタコ。

○ 父兄会(数日後,午前中)

  アキオの母親、下村まさ(33才)が立川先生につめよっている。同調する他の母親

まさ「先生は御存知ないかもしれませんが、この頃斉藤君の暴力には、ほとほと手をやいてるんですよ。先だっても、アキオの服がボロボロに破かれているんで、聞いたら斉藤君にやぶかれたっていうじゃありませんか。服、破かれてるの、アキオだけじゃありませんよ。他の生徒だってみんなそうです。それにタコちゃんなんか、いつもなんの理由もないのに斉藤君にたたかれてるんですよ。ねえ、みなさん(同意をもとめる)」

  うなずく他の母親。

母親A「斉藤さん、ちかごろ父兄会にいらっしゃらないけど、ちゃんと出てきて実情を把握してもらいたいものですわ」

  うなずく他の母親。

立川先生「はあ、お怒りはもっともですが、これには何か訳があると思います。よく調べてから次郎に注意しますから、すこし時間をください」

まさ「なにも訳なんかありません。斉藤君は不良なんじゃないですか。このままでは安心して子供,任せられません。きちっとしてください。いいですか、先生(強い調子で)」
立川先生「はあ,お約束します」

まさ「(皮肉っぽく)先生は斉藤君のおばあちゃんに何かいれ知恵をされているってもっぱらの評判ですよ。えこひいきしているって言う人もいますし」

立川先生「(あわてて)あっ,いえ,そんなことは決してありません。次郎には私から厳しく言っておきます」
まさ「どうしても駄目なら,校長先生にもご相談しなければと皆さんと話し合っていますのよ(十分な皮肉をこめて)」

  同調する母親。額の汗を拭う立川先生。

○ 職員室(昼休み,続き)

  立川先生の前に立っている次郎。イライラしている立川先生。他の先生がきき耳をたてている。

立川先生「次郎、先生は次郎にまえ、言ったろう。暴力はいかんと。なんでパンチするんだ。もうすぐ中学生になるっていうのにいつまでガキなんだ」
次郎「・・・・・」
立川先生「次郎、だまっていちゃわからんだろう(声を強める)」

次郎「・・・・(唇をかみしめたまま何もいわない)」
立川先生「アキオとタコのお母さんが、理由もなくお前がなぐるといってきたぞ。お前はいつからそんな悪い子になったんだ、えー(興奮する)」
次郎「・・・・」

  思わず,立川先生が次郎の胸ぐらをつかむ。

立川先生「次郎、いってみろ。だまってちゃ分からんだろうが」
次郎「(昂然と)ぼくは悪くない」
立川先生「なにをいうんだ。馬鹿(頬をたたく)お前は先生のいうことが分からんのか。そんなことじゃ,中学になったら不良になるぞ」

次郎「(弾けるように)ぼくはタコにいつも服,破られたんだ。そのときぼく、先生にいいつけなかった。いつもぼく、鬼だったんだ。でも、だれもかくれんぼ、やめようって言わなかった。アキオとタコなんかなぐっていいんだ」

立川先生「そ,そんな,古い話をきいてるんじゃない。いまのことをいってるんだ」
次郎「お母さんはいつもたたく。先生もそうだ。だからぼくだってたたいていいんだ」
立川先生「ばかやろう。この不良が!(ふたたび頬をたたく)」

  右頬をおさえ職員室を飛び出す次郎。茫然と見送る立川先生。

○ 校庭(同昼休み,続き)

  杉の木の下に子供が集まっている。アキオとタコが藤沢哲雄を詰問している。

タコ「哲雄,お前,やけに次郎となかいいじゃねいか。いつから子分になったんだよ」
アキオ「(すごむ)次郎と遊ぶと俺たちの仲間にいれないといっただろう」
タコ「仲間外れになってもいいのかよう。学校にこらせねえぞ」

  タコが哲雄の肩をこずく。

哲雄「・・・・・・・・・」
アキオ「いいか,哲雄,次郎にもうおまえとは遊ばないと言え。仲間外れになりたくなかったら次郎に言うんだ(強く)」
哲雄「やだ」
アキオ「お前,いい鞄もってるじゃないか。こうなってもいいのか?」

  アキオが哲雄の肩かけ鞄をとりあげ足でふみつける。他の子供も鞄を踏みつける。泣き出す哲雄。

哲雄「なにするんだよう。かあちゃんにおこられるよう。止めてくれよ」
タコ「金もないくせにいい鞄買うんじゃねい」
アキオ「弱いくせに強がるからいけないんだ鞄,破け」

  鞄を破こうとする子供達。教科書が地面にこぼれ落ちる。

哲雄「(泣き声)やめてくれよ,かあちゃんが働いて買ってくれたんだ」
アキオ「じゃ,次郎と遊ばないというか?」
哲雄「(不承不承)うん,いう」
アキオ「おい,鞄をかえしてやれ」

  ようやく哲雄にかえされた鞄。教科書が泥でよごれている。

アキオ「いいな,次郎と遊ぶとまたこうなるらな(脅す)」

  肩をいからせながら去っていく子供達。茫然とたたずむ哲雄。

(明日に続く)

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(28.8.21) なぜデフレが発生し、しかもどの国にも同じように起こるのか?

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 長い歴史を見ていると歴史は繰り返すものだとしみじみ思ってしまう。日本経済がバブル崩壊後ほぼ25年間にわたってデフレに苦しんでいるが、歴史を見るとこれは何も日本だけの経済現象ではなくどこの国にも起こる一般現象だということが分かる。

 最初にデフレの病にかかったのはイギリスだが19世紀の後半の約50年間イギリスはデフレに悩まされた。毎年のように物価は下落し最終的には約半分の価格になってしまったが、イギリス経済が生産過剰に陥ったことによる。
ドイツとアメリカの追い上げがあってイギリスの生産能力が需要量を超えてしまったためだが、この調整が済むまでイギリスのデフレは終息しなかった。

 次にデフレに襲われたのはアメリカだが。1929年の世界大恐慌とは本質的にはアメリカを襲ったデフレの嵐である。 第一次世界大戦で世界の工場に躍り出たアメリカだが、有り余る生産力がこのころになると過剰になってしまった。ヨーロッパ経済が復興するにしたがってアメリカの輸出が伸びなくなり過剰生産に陥ったからである。
アメリカでは製造業の投資機会が失われたため、有り余っていた資金は不動産へと向かいマンハッタン等の不動産価格を急上昇させたが、不動産バブルは度を越せば調整局面に入る。
その後アメリカは第二次世界大戦が起こるまではチャップリンが描くモダン・タイムスの世界になり巷に失業者があふれあらゆる価格がここも約半分になってしまった。
アメリカがこのデフレから立ち直ったのは究極の公共投資と呼ばれる戦争が始まったからで第二次世界大戦で息を吹き返した。

 20世紀の後半は日本の時代だったが中国と韓国の追い上げで日本も過剰生産に陥り1980年代後半には余剰資金が設備投資ではなくほとんど不動産と株式に投下された。当時の経営者で不動産投資をしない経営者は無能と呼ばれ馬鹿扱いだった。
当時の不動産価格の上昇は半端でなく通常の経営をするのがばかばかしくなるほどだったが、これが不動産バブルというものだ。
日銀が資金供給を絞ったため、1990年を境にバブルが崩壊すると日本はその後約25年間に及ぶデフレの脅威に悩むことになる。
日銀の黒田総裁がインフレ目標2%と叫んでいくら資金を市中に投下してもインフレにならないが、不動産価格の調整が済むまでこのデフレは進むからだ。

注)なお日本に限って言えば人口減少が激しく不動産価格が上昇する要因がない。大都市の一部で値上がりしているのは中国人が資産の逃避を図っているため。

 
なぜ高度成長をして世界の先端に躍り出た国にデフレが襲い掛かるかというと、いづれも高度成長期に設備投資を行いすぎて製品が売れなくなり、一方でそれまでの自己資金の蓄積や金融機関の過剰融資に誘発されて、「本業がだめなら不動産と株式だと一攫千金を狙うからだ。
だが不動産投資は必ずどこかでバブルがはじける。不動産は使ってなんぼのものだが、それ以上の不動産は不必要だからだ。

 現在このデフレの圧力が襲い掛かっているのが中国で1990年ごろから続いた高度成長が過剰生産を引き起こして、デフレ局面に入ったからである。中国経済は2014年にピークを打ってその後は長期低迷期に陥っている。
すべての生産力が過剰で鉄鋼などは必要な生産規模の約2倍程度の生産力があるためどうにもならない。
本来は競争力のない企業が淘汰されて調整は終わるのだが、中国の場合は鉄鋼、石炭、アルミ、電力といった基幹産業がすべて国有企業のため、倒産させるわけにいかない。
掛け声だけで生産調整は一向に進まず過剰生産が続いて特に工業製品物価は急下降している。
経営者は投資機会を失い、ここでも余ったは資金は不動産に向かっており不動産バブルは農村部では崩壊しているが、相も変わらず大都市の不動産ブームはつづいている。

 最後は不動産に資金が集中しそれがはじけてこのバブルは終息するがこのパターンはイギリス、アメリカ、日本、中国ともみな同じだ。
経済などというものはすることが同じであれば結果もみな同じなのだ。
今中国は統計数字をごまかすことでこの事実を隠蔽しようとしているが、中国がどこの国にもあった長期デフレ局面に入り高度成長が終わったことは確実だ。

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(28.8.20) 病気療養中のため二日に1回の割で過去のシナリオを掲載しています。 「シナリオ ぼくが生きた時 その4」

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  本日(14日)から6日間はシナリオシリーズです。このシナリオは私がシナリオライターになろうとして努力していたころの作品で、半分以上は自叙伝です。

なお病気療養中のため過去の作品を掲載しております。

ぼくが生きた時 その4

(シナリオシリーズのその4です。その1からの続きですので、その1、その2、その3を読まれていない方は「その1」、「その2」その3」リンクが張ってあります>からお読みください

○ 自宅(数日後の真夜中)

語り「そして、ある夜」
和子「次郎、きなさい、起きなさい、すぐに起きるの(興奮した声)」

  灯りがついており、令子と則夫が隅で泣いている。興奮している父母。諦めきった顔のイネ。

和子「次郎、父さんはね、あたしにでていけっていうんだよ」
一郎「出ていけなんていってない。あなたがこんな貧乏所帯にいるのがいやなら、出ていってもいいといったんだ」
和子「なによ、でていくさき、ないの分かってて、そういうこと言う」

一郎「や、山口に、いったらいい(つっかえながら)」
和子「じゃ、子供はどうするの、次郎は!令子は! 則夫は!(ヒステリックに)」
一郎「出ていくものがそんな心配しなくていい!(強く)」

  大声で泣き出す令子と則夫。下を向く次郎。

和子「なら、子供に聞いてみる。次郎、おまえ、どうする? 母さんといく? 父さんといる?(超興奮状態で)」

  下を向き、答えない次郎。次郎の胸をつ かみ、揺する和子。

和子「答えなさい、次郎!」
イネ「やめなさい。和子!(強くたしなめる)子供にそんなこと言って、答えられる訳ないでしょ!」

  (長い沈黙)
イネ「(決心したように)山口には、おばあちゃんがいきます。一人でも、減れば、少しは助かるでしょ。だから、和子、そんなこと子供にいうのはおやめ!」

  (父母が驚いて、イネの顔をみる)
次郎「ばあちゃん、山口にいっちゃうの?ぼく、ぼく,ヤダ(涙ごえ)」

  
イネ「次郎、大人の世界では、どうしょうもないこと、あるんだよ。お前も、大人になったら分かるから、だから、おばあちゃんが山口にいっても我慢するの(言い含めるように)」
次郎「ヤダ(目に涙をためる)」

  次郎の頭を静かにさするイネ。沈黙。破れた障子。割れた硝子窓。

○ 台所(1カ月後)

  イネと次郎。イネが次郎の肩にてをかけ諭すように話かけている
      
語り
「しかし、すぐに祖母は、山口に行かなかった。おそらく、大人の社会には難しい手続きがあり、それに数カ月要したのだろうと思う。山口に行く前日、祖母は僕に言った」

イネ「次郎、今日は、おばあちゃんのいうこと、よく聞くの。そして、絶対にわすれちゃ、だめだよ」
次郎「うん」

イネ「母さん、今、死のうとしている。次郎をつれて、死のうとしている。だから、次郎、母さんがどっかにいこうと言っても、絶対についていっちゃいけないよ。それになにか、へんなもの食べろといっても、絶対にたべちゃいけない。食べたふりして、吐き出すんだよ」

次郎「うん、ばあちゃん、そうする」
イネ「次郎、お前はほんとうにいいこだ。ばあちゃん嬉しい。(大きく息をして)でも次郎、本当は、ばあちゃん、次郎にとってもわるいことしたと、思ってる」

  (じっとイネの言葉に耳を傾けている次郎)

イネ「和子がこんな我慢なしに育ったの、みんなばあちゃんの責任だ。地主の子だといって甘やかしほうだい、甘やかしたから・・・ばあちゃん、昔、農地開放でたんぼ取られたとき、本当に悲しかった。でも、それよりもっと悲しかったのは、次郎、お前が和子に叩かれて、泣いているときだった
 ・・・・・・・」

  
次郎「ばあちゃん、ぼく、もう泣かないからだから、だいじょうぶだよ」

  次郎を強くだきしめるイネ。次郎の顔を見つめながら。 
          
イネ「よくお聞き、次郎。ばあちゃん、ず-っと次郎のこと見てきた。次郎はとっても心の優しい子だ。だけどね、次郎。男の子は心が優しいだけじゃ生きていけないよ」

  うなずく次郎。

イネ「次郎は小さい頃、いつも近所の子に仲間外れにされて、泣いていた。学校でも、ガキ大将にいつも泣かされてるだろ。運動会のとき、ステテコはいてって、次郎、泣いてたじゃないか。ばあちゃん見てたんだ」

次郎「ぼく、泣きむしだから・・・・」
イネ「次郎、いいかい、泣く子はいつも泣かされるんだよ。だから、男の子はけっして泣いちゃいけない」
次郎「ぼく、喧嘩強くないから・・・」

イネ「次郎、人間は生きるために喧嘩しなくちゃ、いけない時,あるの。ばあちゃん山口に行ったら、もう、次郎を助けてあげられない(嗚咽)。だから次郎、お前は一人で強く生きるの。学校のガキ大将とも母さんともたたかって、負けちゃいけないの」

  

次郎「ばあちゃん、ぼく、約束する。絶対負けない」

  ふたたび次郎を強くだきしめるイネ

語り「それが祖母の最後の言葉になった。祖母は山口に帰ると体調を崩し、そのまま帰らぬ人となったという。しかしあとで、僕は祖母が自殺したのだと聞いた」

○ モンタージュの連続

  食事時、ご飯茶碗を一郎に投げつける和子。体にくっついたご飯粒を黙ってとる一郎

  6畳間。令子の髪の毛をもって、引きずり回す和子。泣き叫んでいる令子。茫然と見ている次郎と則夫

  包丁を持って次郎を刺そうとする和子。座蒲団で防いでいる次郎。和子の足を思いっきり蹴飛ばす次郎。もんどりうって倒れる和子

○ 校庭(放課後)

  がき大将のアキオのまわりに集まっている子供達。いつものかくれんぼをするところ
               
アキオ「おい、次郎、オメイ、また鬼だ。ヤレヨ」
次郎「(ちから強く)ヤダ、しない」
アキオ「(胸をつかんで)ナンダよ、次郎、オメイ、そんなこと言えるのかよ。昨日の最後の鬼だろ」

次郎「(手を払いのけて)鬼はしないときめたんだ」
アキオ「(もう一度胸をつかんで)泣きをみていのかよ」

  タコが後ろから次郎にちかずき、次郎の足を蹴飛ばす。振り返りざまタコの横顔を張り倒す次郎。張り倒された頬をおさえ、びっくりして泣き出すタコ。アキオの顔色が変わり、猛然と次郎に飛びかかる。次郎とアキオのとっくみあい。次郎の上着が破ける。周りであっけにとられて見ている子供達。次郎がアキオを引き倒す。下でもがくアキオ。

アキオ
「(もがきながら)タコ、ヒロ 次郎にかかれ」

次郎に襲いかかるタコとヒロ。タコをあしげりにする次郎。飛ぶタコ。もうだれも二人にちかづかない。ついに泣き出すアキオ。唖然として見ている子供達。



明日に続く)

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(28.8.19) ブログを記載して10年 21世紀の社会が見えてきた

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 私がブログを書き始めてほぼ10年になる。毎日記載しているから3500程度の記事数になっているのだろう。最近は過去に記載した旅行記等を再掲しているからネットではどの程度になるかわからないが相当の数であることは確かだ。
当初私のような市井の老人の書いた記事が多くの人に読まれるとは思っていなかったが、意外にも好評でついに500万アクセスを超えたときは自分でも驚いた。

 何しろ内容が経済や政治の評論が主で金儲けを意図したブログではないし、私自身が有名人でもないのでこの500万アクセスという数字は驚異だ。
いやはや大したものだ

 実際ブログを書くには相応のエネルギーが必要で、資料集めから始まって記載したブログの校正まで含めると3時間から4時間程度の時間が必要になる。それを毎日欠かさず行うとなると生半可なエネルギーでは済まない。
現在は病気療養中のためブログの記載は二日に一回にしているが、おかげでずいぶん精神が休まっている。
まあ特に金をもらって記載しているわけでないから気楽に行くのが一番だ」割り切ることにした。
しかし考えてみれば市井の一老人が新聞社や出版社に伍して自由な情報発信ができる時代というのは驚くべき時代といえる。

 かつては民間人の情報発信などは新聞社や出版社と契約を結んだ一部の知識人の独占物だったが、今は全く自由に低価格でだれでも世界中に情報発信ができる。
インターネットが発達し、無料のブログ掲載ができるからだがこのような時代が来るとは思いもしなかった。
長らく生きていると何が起こるかわからないからそれだけでも生きている価値はあるというものだ。

 今は世界史の転換点でアメリカが世界を支配した時代が終わろうとしており、その間隙をついて中国が世界国家に躍り出ようと画策してきたが、中国経済の崩壊でその野望はついえた。
しかし中国の野望がついえたとしてもアメリカ一国支配の時代がどのような形で収束するかはまだ不明だ。

 21世紀は日本の時代だと主張する人もいるが、私はどこの国も支配国家にはなれない団栗の背比べのような世界で、しかも互いに干渉をしない無関心の時代になるのだろうと思っている。
すでに世界経済は収縮し始めて貿易量は激減しており、GDPも停滞局面に入っている。
世界経済を拡大する仕組みだったTPPはアメリカが拒否して崩壊し、中国が作ったAIIBは完全に開店休業になるだろう。
国連の安全保障理事会は完全に機能不全に陥って久しいし、ユネスコや国連人権委員会は中国に乗っ取られて日本バッシングしかしないから、日本が国連分担金の支出をやめるのも視野に入ってきた。
そうなると国連はアメリカと日本が分担金を支出しないから実質的に空中分解する。
IMFも中国以外が分担金の増額に応じないから資金不足に陥る。
もう世界のことなど考えるのはやめて自分たちの生活だけを考えよう」他国に対して無関心になる時代だ。

 すでにイギリスはEUから脱退しEUの拡大路線は空中分解した。アメリカはトランプ氏が大統領になればモンロー主義の世界に入る。中国はいまだに植民地の拡大に余念がない19世紀的国家だが、経済が足元で崩壊しているから威勢のいい軍部ははしごを外されるだろう。
21世紀は覇権国家のない団栗の背比べのような状況になって、だれもが互いに無関心になる時代になる。
まあ勝手にやりなさい。その代りこちらに干渉するのはやめてくれ
この21世紀の状況を「新しい中世」と呼ぶ。

 

 

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(28.8.18) 病気療養中のため二日に1回の割で過去のシナリオを掲載しています。 「シナリオ ぼくが生きた時 その3」

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 本日(14日)から6日間はシナリオシリーズです。このシナリオは私がシナリオライターになろうとして努力していたころの作品で、半分以上は自叙伝です。

なお病気療養中のため過去の作品を掲載しております。

(20.8.7) ぼくが生きた時 その3

(シナリオシリーズのその3です。その1からの続きですので、その1、その2を読まれていない方は「その1」、「その2」リンクが張ってあります>からお読みください


○ 運動会(100メートル競争)


 破れて泥のついたステテコで走る次郎。父兄席で次郎を指差し、小声で囁きあっている母親たち。

○ 校庭の杉の木(運動会終了後)

  杉の木の下にアキオと次郎、クラスの子供達が集まっている。

アキオ「次郎は嘘ついたから、この木でセミになれ。罰だ!」
次郎「嘘なんかついてない」
アキオ「嘘、ついたろう。ステテコを白ズボンなんて言ってよ-」

次郎「白ズボンだ」
アキオ「なんだよ-、先生だってステテコだって言ってたじゃねえか。じゃ-先生が嘘ついたっていうんか(勝ちほこったように)」
子供達「(はやす)言ってやろ!言ってやろ!先生のこと嘘つきだって、次郎がいってたって言ってやろ!」

  黙って下をむく次郎

アキオ「蝉になれ、命令だ!」

  杉の木に登り、蝉の真似をする次郎。アカトンボの飛翔。

○ 自宅(冬、朝)

語り
「家計はまったく好転しなかった。むしろジリジリと悪化していった」
  ちゃぶ台には、朝の支度がしていない。不信そうにちゃぶ台をみている兄弟3人。何もいわない父とイネ。母が財布から20円玉をとりだす。

和子「今日はご飯がないから、次郎、これでコッペパンかっといで」
令子「何で、ご飯ないの、ヤダ」

  口をとがらす令子、下を向く次郎。

令子「ヤダ、絶対ヤダ(拗ねる)」

  困惑する父母、イネ。

次郎「いいよ、令子、パン買いにいこう」 

  不満げな令子、ほっとした大人達。

次郎「令子、行くぞ(大きな声で)」
令子「うん(不承不承)」

○ パン屋(同日)

  20円でコッペパンを買う次郎。白い息。霜焼けの手。後ろで、肩を落とし、石を蹴っている令子。

令子「にいちゃん、どうしてご飯じゃないの?」
次郎「令子、コッペパン、きらいなのか?」
令子「そうじゃないけど」

  
令子「ジャムもつけないの?」      
  間

○ 自宅(同日)

  まないたの上にコッペパンを置き、包丁で3等分する次郎。のぞきこむ令子と則夫。少し大きさが揃わない。

令子「にいちゃん、そっちのほうがおおきいよ」

  あわてて、大きさをそろえる次郎。大事そうにコッペパンをたべる子供たち。見てみぬふりをする一郎と和子。後ろでなみだぐんでいるイネ。


○ 藤沢家玄関口(12月、土曜日、午前)

  藤沢家の安手の玄関口。靴がとびちらかしてある。和子が藤沢家に借金にきている。藤沢秀夫(44才)と藤沢テル(42才)が応対にでている。

語り「この頃母は返すあてのない借金の依頼にかけづりまわっていた」

和子「こんなこと、言うのは大変申し訳ありませんが、子供の給食費もまだだしてないんです。藤沢さんもごぞんじのとおり、元はといえば、藤沢さんの依頼もあり、B織物に主人が裏書をしたのが始まりですので500万の一部でもいいですから、返してほしいのです」

秀夫「奥さん、何か勘違いしていませんか。確かにB織物は私の親類です。だけど私が依頼したから裏書したんじゃない。あんたのご主人が欲に目がくらんだからじゃないですか。金を貸して欲しいと素直にいうなら、こっちもまんざら無関係じゃないから、考えんこともない。それがどうですあんた、返してといいましたね。冗談じゃない。借りてもないのに何故、かえさにゃならんのですか。お断りです」

  和子、怒りで目がつり上がる。テルは下を向いている。

和子「藤沢さん、あなた、よくもそんなこといえますね。(つまりながら)私、ききましたよ。B織物と一緒になって、主人に酒のまして、いざとなったら、親類縁者で責任持つといったっちゅじゃないですか。あんた、親戚でしょ、責任とってください( ヒステリックに)」

秀夫「な、なにをいいだすんだ。互いに酒の席じゃないか。あんたの主人が欲張りだからこうなったんだ。いいがかりだ。証拠を見せろ、証拠を! なにもないじゃないか(興奮して)」

和子「しらじらしい。世間にいいふらしてやる。みんな、言ってやる。藤沢は嘘つきで人のいき血を飲む極悪人非人だといいふらしてやる(叫ぶ)」

秀夫「何だ、何だ、人がだまってきいていたら、いいきになって。貧乏が頭にきて気が触れたんじゃないか。帰れ!帰れ!二度とくるな!(大声で)」
和子「だれがくるか! 人非人、人でなし!(ヒステリックに)」

  ドアーを思いっきり強く閉めて出ていく和子。藤沢秀夫は横の壁をあしげりする。テルは下をむいたまま。

○ 和子の回想

 (映像)
  正月。庄屋の屋敷に小作が50名ほど集まっている。床の間を背にした和子の父母。そして女学生の和子。盛大な料理。卑屈に年賀をのべる小作。鷹揚な態度の和子の父,房太郎。昂然ととりすました和子。着物が美しい。

  (映像)
  藤沢家の玄関。借金の申込みをしている和子。断る藤沢秀夫の顔。ドアーをしめて、天を仰ぐ和子

和子「イヤー、イヤー、もうイヤー。死んでやる。死んで化けてやる」

○ 藤沢家玄関口(夕方)

  藤沢哲雄(12)と次郎が遊びながら帰ってき、玄関をあける。

語り「当時、私は藤沢家の長男哲雄とクラスが同じであり、もっとも仲のよい友達だった」

哲雄「今日、次郎ちゃん、オレんちでご飯たべろよ」
次郎「うん、そうする」
哲雄「かあちゃん、今日次郎ちゃん、オレんちで、ご飯たべるって(元気よく)」

  二人が家の中に入ってくる。玄関、食堂 六畳一間の小さな家。安手の家具が置いてある。奥まった6畳間に炬燵。藤沢秀夫が座っている。テルは台所。次郎の顔を見て、藤沢秀夫とテルが顔をみあわせ  る。藤沢秀夫はバツがわるそうに目をそらせ、新聞を見るふりをしながら次郎に背をむける。テルは涙ぐむ。

テル「あっ、次郎ちゃん。よくきたね。今日おばちゃん、美味しいもの、いっぱい作ってあげる。次郎ちゃんの好きな卵焼きにしょうか? おばちゃん、つくってあげる」
秀夫「そう、そうしなさい。それがいい(つまりながら)」

○ 藤沢家(夕食)

  秀夫、テル、哲雄、和夫(哲雄の弟、9才)、そして次郎。そまつなテーブルに それぞれの卵焼き。次郎のが一番大きい。

和夫「ずるいよ。次郎ちゃんのが一番大きいよ」
テル「次郎ちゃんは、身体が一番大きいからこれでいいの」
和夫「だって、次郎ちゃん、家の子じゃないのに・・・」
秀夫「和夫、だまって食べなさい。これでいいんだ(強く)」

  嬉しそうに卵焼きをほうばる次郎。外は星がきらめいている。

○ 自宅(同日,続き)

  次郎が元気よく帰ってくる。家では和子が泣きはらした目をしている。

次郎「ただいまー。かあちゃん、おれ、今日ご飯いらないよ(大声で)」

  和子がききとがめる。

和子「どうして?」
次郎「おれ、今日、哲雄ちゃんちでいっぱいたべたんだ。こんな大きな卵焼きだよ。おばちゃんが特大の卵焼き作ってくれたんだ」

  次郎、手で大きさをしめす。和子は怒りで身体が震える。

和子「次郎、もうあんな家、いっちゃダメ(怒りをおしころして)」
次郎「なんで(怪訝そうに)」
和子「かあさんがダメといったら、ダメなの(ヒステリックに)」

  (次郎、茫然としている)
次郎「だってー、おばちゃんやさしいし、おじちゃんだってやさしかったよ」
和子「馬鹿(右手で次郎の頬をおもいっきりたたく)」

  左頬を押さえ唖然としている次郎。次郎の胸ぐらをつかみゆする和子。

和子「おまえに、かあさんの気持ち、わかってたまるか。かあさん、藤沢で馬鹿にされたんだよ。悔しいよー。もとはと言えば、小作じゃないか。かあさん、もう我慢できない。死んでやる。死んで化けてやる。次郎、おまえも一緒に死にな(泣き叫ぶ)」

次郎「ヤダヨ(和子を強く押し戻す)」

  和子の身体がとび、仰向けにたおれる。興奮する和子。

和子「次郎、おまえ、かあさんに手かけたね。 親に手かけたね。親に手かける子は少年院にいれてやる。こうしてやる(次郎を押し倒おす)」

  下からあしげりする次郎。ふたたび和子の身体がとび、襖に身体をぶつける。台 所に飛んでいく和子。逃げようとする次郎。玄関のガラス戸が閉まっており、すぐに開かない。包丁をもって次郎を追い かける和子。部屋の中で、座蒲団をたてに包丁を避ける次郎。

和子「死んでやる。おまえを殺して、死んでやる(ヒステリックに)」

  イネがハラハラしながらみている。令子と則夫は脅えて隅で震えている。

イネ「和子、馬鹿なことはやめなさい。包丁振り回すのやめなさい」

  イネの存在にきずく和子。イネのほうに向かって包丁を振りかざしながら。

和子「死んでやる、みんな殺して死んでやる(ヒステリックに)」

  和子がイネの方をむいたすきをついて、後ろから和子をはがい締めする次郎。思わず包丁を畳に落とす和子。その包丁を拾って一目散に外に飛び出す次郎。泣き叫びながら、食器をあたりかまわず投げる和子。泣く令子と則夫。二人をかばうイネ。

○ 建てかけの家(同日、真夜中)

  建てかけの一軒家。屋根と床が張られており、壁は一部つくりかけている。夜空が見える。北風。寒さに震えながら、壁に寄り添っている次郎。右手に包丁。自動車のライトが一軒家を照らす。脅えるように壁に身体を押しつける次郎。遠くから次郎を呼ぶ一郎のこえ。だんだんちかづいて来る。

一郎「次郎 、次郎 、いたら答えなさい。次郎 、次郎 」

  一軒家から、おずおずと出てくる次郎、右手に包丁を持っている。

次郎「とうちゃん、ここにいるよ」

  
一郎「次郎、とうちゃんとかえろう」
次郎「ヤダヨ、だって、かあちゃん、また包丁持っておいかけてくるもん」
一郎「なにしたんだ?」
次郎「知らない。哲雄ちゃんちで卵焼き食べたっていったら、急にぶつんだ」

  
一郎「そうか・・・・・」

  
一郎「母さん、いま、心がいたんでいるんだ。だから、次郎、母さんにごめんなさいといいなさい」
次郎「(強く)ヤダ、だって、ぼく、わるくないもん」
一郎「次郎、母さんはいま病気なんだ。ごめんなさいと言ってあげなさい。(間)それに、明日、次郎、映画につれてってあげるから・・映画すきだろ?」

次郎「うん」
一郎「その包丁かしなさい」
次郎「うん」

  包丁を手わたす次郎。次郎の肩に手をかけ促す一郎。月の光がまばゆい。

明日に続く)

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(28.8.17) 定年退職後10年 ボランティアが自己再生の道

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 人生の中でいつが一番幸せだったかと聞かれれば「定年退職後の10年間だ」といえる。
私は60歳である金融機関を定年退職したが、その後はサラリーマンをきっぱりと辞めた。
私の多くの同僚は第二の人生として子会社や関連会社に就職し、だいたい65歳前後まで働くのが普通だったが、私は第二の職場に移ることを拒絶した。
定年までここにいます。第二の人生の職場のあっせんは必要ありません

 私はサラリーマン生活にうんざりしており、二度とサラリーマンはしたくなかったので60歳になったらさっさと引退するつもりだった。
私が全くサラリーマン向きでなかったのは明らかで、私は人を管理することも管理されることも全くしたくなかった。
だがこうした性格であることを正しく認識できたのはサラリーマンになってからで、それ以前に自身の性格を正しく認識することは普通の人間には不可能だ。

 さすがにサラリーマンになって数年たてばサラリーマンとしては不適格だと分かったが、わかってもすでに手遅れだ。その後36年間一つの職場におり、最後には私が最年長の職員で私以上の年配者は頭取以外はいなくなってしまった。
さすがにそうなるとシーラカンスを見るような目で私は見られていたが、他の人から見ると何と判断したらいいかわからないといった風情だった。稀種だったともいえる。
山崎さんはどうして追い出されることもなく職場にとどまれたのですか?」などと聞かれたがどこに行ってもサラリーマン生活は嫌だったし、それなら慣れている職場にいるほうがいいと思ったからだ。

 退職後はすっかりボランティア活動にはまった。それも団体でするとサラリーマン生活の延長みたいになるので、もっぱら一人で行うこととした。
すべて自分の意志だけで行うところがボランティア活動のいいところだ。

 まず私の住んでいるおゆみ野にある一周約6kmの遊歩道の清掃を毎日することにした。当初は本当に雨が降ろうが雪が降ろうが台風がこようがやっていたが、さすがにこれでは体がもたないことを知った。今は雨や天候が悪い時は行っていないが、天候に問題がなければ毎日行っている。
次に着手したのは公園や遊歩道に設置されているベンチに防腐剤を塗ることだった。この街は開発されてから約30年近く経過していてベンチが至る所で腐っていたからである、

 その後四季の道の芝刈りに精を出すようになったのは市役所が行う芝刈りは年に3回程度で途中の期間は草が伸び放題になっていたからだ。
しかしこの芝刈りは夏場に行うと、あまりの暑さのため熱射病にならないのが不思議なくらいの作業だった。
業者の場合は10名程度がグループを組んで行うのだが、私は一人だからどんなに努力しても業者のようなわけにはいかない。
昨年までこの草刈りを続けていたが、今は眼病が悪化し薬の副作用で持久力が極度に低下しているためこの作業はやめている。

 現在最も力を入れているのはベンチの補修作業でベンチにいくら防腐剤を塗布しても限界があるためベンチの板をすべて取り換えている
幸いこの作業にはカーペンター・オクさんといううってつけの同僚がいるため、毎年20基前後のベンチの補修を行うことができる。

 その他のボランティアとしては小学生にマラソンを教えているが、ここ四季の道を使用した駅伝大会があるからで、小学校でマラソン教室を毎年開いてきた。しかしこれも自身が全く走れなくなってきたので今年でおしまいにするつもりだ。
マラソンおじさんも体力には勝てない。

 最後まで残こりそうなボランティア活動としては中学生と高校生に勉強を教えている。当初は全く無料で教えていたが教材費やその他の教育資材が必要なため今は実費程度を負担してもらっている。
教える以上はそれなりの実力が必要なのでこのために多くの教材を購入したし、毎日勉学にいそしまなくてはならなくなった。おかげで受験生並みの生活になっている。

 中学生には5教科数、国、英、理、社)のすべてを教えているが公立高校の試験は5教科で配点がすべて100点だからだ。
当初は数学と英語だけのつもりだったが、入学させるためにはそんなことを言っていられないのですべて面倒見ることにした。
中学の勉強で一番難しいのが理科で、私が教わった50年前とは様変わりになっておりこのための特訓にはずいぶん時間を割いたものだ。

 高校生には数学と英語を教えているが、高校数学のレベルはとても高いため毎日自身の特訓が欠かせない。毎日3時間程度は数学の特訓に充てており、「これなら私が受験したほうがいいのではなかろうか」と思えるほどだ。
当初は数学と英語以外は見るつもりはなかったが、学校での成績向上のためには化学や生物なども指導する必要があり何かまた中学のように全科目を見るようになってきた。
これじゃオールラウンドプレーヤーの内村選手みたいになってしまうじゃないか・・・・・

 こうして私のボランティア生活が続いているが、自分が好きなことだけをしているのでサラリーマンであった時に比べると圧倒的に楽しい。
人生60歳を過ぎてから本当の自分を見つけたようなものだが、それまで36年間も耐え忍んだ成果ともいえる。
36年間の働きで今の生活を維持しているのだから金融機関での生活が無駄だったとは言えないが、はっきり言ってつまらない人生だったと思っている。
しかしこうしてようやくではあっても自分の目指してきた生き方ができているだけでも幸せというものだろう。
今後ともこうした生活ができるか否かは体力との勝負だが可能である限りは続けるつもりだ。

 

 

 

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